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世界を滅ぼし再生する兵器

「聞こえますか?」

……。

「あなたにお願いがあります。」

……。

「こちらへ、来てください。長旅になっても、こちらへ来てください。」

……。




「……あぁ。」

目をゆっくりとこすりながら、周りを見る。

ここは…ビルか。ガラスが全て割れ、室内の風通しが良すぎる部屋にいた。

開放感のある窓からは赤い夕焼けが室内へと差し込み、残骸だらけの静かな冷たい世界に僅かな温かみを差し込んでいた。

「こっちです。」

不意に聞き覚えのある声が聞こえ、そちらへとリボルバーを抜きながら振り向いた。

「誰だ。出てこい。」

「東へ真っ直ぐに来てください。」

「誰だ。まずは名乗れ。お前に従うどおりはない。」

「私は、世界を滅ぼし、再生する兵器。システムに従い、会話のできる人類最後のあなたへと話しかけています。詳しい話はこちらへと来てください。」

「お前が今ここで話せば良い話だろう。」

「それは、システムが許しません。では、東の地で待ちます。」

「おい!」

最後の言葉を最後に、あちらからの応答は途絶えた。

一体なんだってんだ。世界を滅ぼし再生する兵器?滅びと再生は対極の存在と言えるだろ。

声の存在を確かめるべく、リボルバーを構えながらさっき声がした方向へと歩いた。

「動くな!」

部屋のドアを蹴り開け、一歩後ろへと下がり、そう叫んだ。

ドアの正面にいないことを確認し、ドアによって隠されていない方の通路を確認するため、ゆっくりと壁へと移動する。

…こっちにも人影はない。

一歩前へと踏み出し、ドアによって隠された方の通路を素早く確認する。

「いない。」

どういうことだ。

どこかへと逃げたか。足の早い奴め。

相手がこちらを殺す気ならドアの裏なんかにいてとっくに銃撃戦になっているだろう。

明確に相手がこちらを殺す気はないだろう。そう信じよう。

またも通路を警戒しながら部屋へ戻り、ドアを締めた。

「ふぅ。」

さて、今日も今日とて行動開始だ。

寝袋をたたみ、部屋にあるバックパックとライフルを背負う。

寝袋とバックパックを愛車の四輪駆動安定走行バイクとか言うバイクの後部へと積み込み、縛り、この部屋を出た。

外はまだ夕日が出ているがだいぶ暗くなってきた。このくらい暗くなれば無人兵器の太陽光発電もだいぶ弱まるだろう。

電気のないアイツラなんてただの人形の鉄くずだ。

バイクに乗り込み、ゴーグルとヘルメットをつけ、北へと街道を走り抜ける。

小さなエンジン音が心地よい小さな振動と一緒に体へと通り抜ける。

こんな世界の夜の街道は暗く、静かなもので、その静けさが終わってしまったんだなと言う実感とともに目を背けていた誰もいないということを直視させる。

だが、そんな暗い気持ちも前から吹き抜け、後ろで収束する夜風によってある程度は紛らわされていた。

夜風を全身に浴びながら、誰もいなくなった沈黙の街道を走っていると、少しだけ風が変わった。

「潮風か。」

バイクに乗っているときに感じる普通の風とは違い、少しだけ粘り気がある、潮風がこちらへと吹いていた。

海がこの先あるのだろう。この大陸の北部は被害が少なかったと聞く。だからこそ北へ向かっているのだが、そろそろ海に生物か何かいないだろうか。

海というのはすべての生命の源だ。人間の体を構成する物質も海と似ていると聞いたことがある。

そんないつぶりだろうかと思う希望を胸にバイクを走らせた。



「こりゃすげぇ。」

防波堤を登ると、そこには海があった。青というよりかは暗い深緑の色をしている、底の見えない海だった。

今いる防波堤の近くには巨大な造船所と見られるものと港があることから、ここは軍港だったんじゃなかろうか。

だから途中から窓のない無茶苦茶に高いビルがあったのか。

そんな軍港に軍艦の姿はなかった。全艦出撃して未だ海中に沈んでいるか海の上に浮いている状態だろうか。それとも、軍港の底に沈んじまったのかね。

爆撃のあととも感じ取れるものがあるようにも見えるから案外、潜れば見つかるかもな。

だが、魚はいないようだ。そんな簡単に見つかるものでもないとは思うが、小魚一匹、ぴちゃぴちゃという水音ぐらいは聞こえないだろうか。いるのはフナムシだけだ。

「さて、これからどうやってこの海を渡ろうか。」

対岸は双眼鏡で見えはするレベルだが、まぁ遠い。橋ぐらいはないだろうかと思い、空母一隻の横幅はそうとう余裕を持って超えているだろうと思えるぐらいの幅の入江を左右見るが、橋はない。

あるのはおそらく橋だったであろうものだ。

爆撃で破壊されたか。それともわざと落としたのか。どちらにしてもそいつを今すぐにもぶん殴りたい。

この入江に沿って走るしかないか。急造の橋ぐらいはあるかもだしな。

そう諦めをつけ、バイクに乗り込もうとした。

「東へ、来てください。」

バイクから手を離し、そのかわりにリボルバーに手をかけた。

「朝のときのやつか。なぜ、お前に従わなければならない。」

「あなたに伝えなければならないからです。この世界について。」

「はっ。この世界について?そんなものを知ったところでどうなる。こんな、何もない世界で。」

「こんな何もない世界だからこそ、伝えなければならないのです。そう、私を創った人々がシステムを組みました。こちらへ来て、話を聞いてください。」

「そんな話を聞くために必死に生きている俺の時間をさけと。」

「はい。ですが、そのような話ではありません。どうか、こちらへと来てください。」

「知らねぇよ。じゃぁな。」

そう言い捨て、リボルバーを引き抜き、後ろへと振り向いた。

「またか。」

周りを見るが、人の姿は見えない。話しているときも時折吹く風が耳をかすめるだけだった。

不思議なやつだ。

世界を滅ぼし、再生する兵器だと?そんなやつが俺に話しかけているだと?システムが判断しただと?

「はっ。馬鹿らしい。」

そんなものを今更知ったところで何だ。こんな世界でそれを知って何になる。

リボルバーをホルスターへと直し、バイクに乗り込んだ。

エンジンの始動音が静かな世界で小さくなり、徐々に一定のリズムを刻みだした。

電気で動くエンジンは安定動作になると、音がものすごく小さくなるものだ。だからこそ昔は街ゆく人々の喧騒や小さく鳴らしていた音楽の音がよく聞こえたのだが、今じゃ聞こえない。

結局はいつか終わりが来てしまうのだろう。最も大切なものは失ってから気づく。そんなことを一番最初に言い出したのは一体誰だったのだろうか。

あの頃は、気づいているつもりだったが、本当に何もかも失ってから初めて本当に気付かされたかもしれない。

そんなことを考えながら走っていると、静かな世界を徐々に意識し始める。

だが、そんな意識を阻害するように、エンジン音が少しだけ大きくなった。それは、過去の日常の喧騒には遠く及ばないが、とても、とても懐かしく、暖かく感じた。

読んでくださりありがとうございます。評価等お願いします。

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