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第47話 最後のパーティーメンバー

剣を持った女性像は2メートルくらいの大きさで全部で5体だ。

動き自体はトロいけど数ではこちらが負けている。


地下室内には侯爵の不快な高笑いが響いていた。


俺とガイナスは女性像の攻撃を避けながら剣で切りつけた。


「ロレス、ダメだっ!

 剣がまったく効かない!」


「ねえロレス!

 私の魔法だとどうかな!?」


「アリーア!

 もしこの像に

 魔法反射の効果とかあったら

 跳ね返りまくって

 ヤバいことになるから待って!」


この地下の部屋から逃げるには、螺旋階段を登るしかない。

けれど1体の像が螺旋階段の前に移動し、逃げられなくなっていた。


「どうだね?

 私が作らせた魔導兵装人形(アームド・ドール)

 実に素晴らしいだろう。

 貴様らはこの美しき我がしもべに

 殺されるのだ」


その時……小さな声が聞こえた。


さっき女神像の結界で体が痺れた魔族の女性だ。

他の魔族の女性達は檻の中に避難できてたけど、彼女だけまだだった。

1体の像が剣を振りかぶっている。あきらかに彼女を狙っていた。


この像は……侯爵以外の人間を無差別に攻撃するのか?

 

アリーアが魔族の女性の方に向かって走った。


「アリーア!

 危ないぞ!」


「大丈夫!

 測定はしてないけど

 たぶん、もう使える……はず!」


そう言うとアリーアは手のひらを像に向かって広げた。

バギィン! 剣がなにかに当たった金属音のようなものが響く。


アリーアは手のひらから円形の魔法陣を空中に出して、女性像の剣の攻撃を防いでいる。


魔導師スキルレベル15で習得できる封護障壁(マジックバリア)だ。

アリーアはガナール村での魔獣退治で中級以上の魔導師となっていた。

……それにしても、無茶するな。


アリーアはその後も像の攻撃から魔族女性達を守り続けている。

封護障壁(マジックバリア)は空中に発生させる盾だから剣の衝撃は使用者の肉体には伝わらない。


「ロレス!

 俺とアリーアが像は引きつける。

 お前は侯爵に像を止めさせろ!」


「わかった!」


俺は短剣を握りしめ、侯爵に突っ込んだ。

侯爵は幅広の剣を持って玉座から立ち上がった。


この装備、この体格差……全部不利なのはわかってる。

でも引く理由は、ひとつもない。


「平民が、この私に刃を向けるか!」


侯爵の剣が振るわれた。

重い。早い。しかも無駄がない。

……本物の剣士だ。

まるで壁みたいな圧で、一太刀ごとに押し返される。


でも、俺は前に出る。


「あんたみたいな腐った権力を

 絶対に許さない!」


自分には似合わないセリフだ……でも本当に許せなかった。


剣先が頬をかすめた。血がにじむ。

視界が揺れる。でも、退かない。

足を踏み込み、刃をぶつけるたび、俺の腕は悲鳴をあげた。


「下らん理想を語るな!

 小僧がぁッ!」


侯爵の剣が横一文字にくる。

とっさにかがんで避けて、床を転がった。


俺は立ち上がった。

息が切れてる。足が震えてる。


でも、俺には守りたいものがある。

俺の向こうにはアリーアが、ガイナスが、魔族の女性たちがいる。

だったら、戦うしかないだろ。


「うおおおおおっ!」


叫びながら踏み込んだ。

剣を頭上に構える侯爵。その懐に、俺は無理やり飛び込んだ。


全力で、短剣を振るった。


金属がぶつかる音が響いた――そして、侯爵の手から剣がはじけ飛んだ。


カラン、と床に転がる音。


侯爵にはもう武器はない。

俺は侯爵に剣を突きつけた。


「まずは像を止めろ」


侯爵はしばらく沈黙した後、舌打ちした。


「我が名において命ずる。

 沈黙せよ……魔導兵装人形(アームド・ドール)よ」


その瞬間、女性像たちの目が淡く光ってから、静かに動きを止めた。


戦いの音が、止んだ。


重たい沈黙の中で、俺は剣を構えたまま侯爵を見据えた。


「勝負ありだ。

 女神像は奪われた村に返すから

 持っていく!

 魔族の女性達も解放しろ!」


それだけじゃ、すまされない。

許されちゃいけない。


「……そして

 これまでの罪を償うんだ」


「女神像は持っていけ。

 女たちも連れていけ。

 ……だが私は王の懐刀と呼ばれた男。

 貴様がどんな証言をしようとも

 罪からは逃れられる。

 罪には問えない……残念だったな」


侯爵は剣を突きつけられながらも不敵な笑みを浮かべている。


「……いいえ、問えます!」


気高さと美しさを兼ね備えた声が、螺旋階段の方向から聞こえてきた。




──ファリィ姫だ。


ファリィ姫は螺旋階段をゆっくりと降りてきた。

侯爵は呆然とした顔で姫を見ている。


「ファ……ファリィ様。

 なぜここに……。

 姫は夜は城からは

 出られないはず……。

 それに……そのお姿は?」


姫はいつもの華麗なドレスではなかった。 

軽やかな白のチュニックに、膝丈のブーツ、腰には細身の剣。動きやすさを重視した旅装姿だった。

髪も王宮での結い上げではなく、ゆるく後ろでまとめられている。。


姫は俺や侯爵がいる玉座の方に向かってくる。  


「勇者様にお願いされて

 私は勇者パーティーに

 加わったんです」


「ファリィ様が……勇者パーティーに……?」


「勇者特典の

 【3人までなら誰でも冒険の仲間にできる権利】

 これを使うと

 “誰であっても”パーティーに加えられます。

 ……当然ですが、それが王家の人間であってもです。

 そしてパーティーメンバーであれば

 勇者様と行動を共にしなければならないですよね。

 もちろん、夜であってもです」


「……っ!」


そして侯爵のすぐ前に姫は来た。

その威風堂々とした立ち姿と表情は、国を統べる王の子としての威厳があった。


「ハーライト王国王女

 ファリィ・ドゥ・ハーライトは

 すべて聞いていました。

 私が見た真実とあなたの虚偽の証言、

 どちらが信用されると思いますか?」


「あ……あ……あ……」


侯爵は両手で頭を抱えながら膝から崩れ落ちた。

これから全てを失う男の、みじめな嗚咽だけが部屋の中に響く。


姫は俺の方を見て、優しげに微笑んだ。


俺は今日の昼間に【各国の王族貴族への面会の権利】でファリィ姫に会い、侯爵の疑惑のことを話して勇者パーティーに入ってもらった。


王は動かせない……けれどファリィ姫なら、自分の意志で来てくれると信じていた。



俺はアリーアとガイナスの顔を見た。

2人は疲れ切ってはいるけど、ほっとした顔をしている。きっと俺の顔も同じだろう。



──終わった。俺たちの勝利だ。



次回『第48話 活気を取り戻した旧街道』

お読みいただきありがとうございます!

次回は「しばらく時が経過して、その間にどういう事があったのか」というお話です。

この物語は全50話で完結しますので、のこり3話となります。

もし少しでも面白いと感じましたら、ブクマや評価で応援して頂けると嬉しいです!

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