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第44話 勇者パーティー

ギミリットは侯爵から頼まれて、胡散臭い商人が持ってきた小箱を、愛人が住む別宅まで何度も運んだ事があると言った。

運ぶ際に小箱の蓋がずれて、中にあった女神像を見ると(俺がもらった勇者バッチのマークと同じ)紋章が刻まれていたそうだ。


「勇者殿、

 あれはただの女神像では

 ないのですか?」


「うん。

 勇者が作った女神像には

 魔を抑え込む力があるんだ。

 だから盗まれた村には

 魔獣が出現したりしてる。

 ……侯爵は女神像の力の事は

 ご存じだったみたいだけどね」

 

「そうですか……。

 ならば父上は民が被害を受けていても

 気にもしていないという事ですね」


ギュッという音が小さく響いた。ギミリットが手袋をしている拳を強く握り締めた音だ。


「勇者殿や私が訴え出ても

 すぐに父上に知られて

 女神像は隠されてしまうでしょう」


「じゃあ取り戻すには

 愛人宅に乗り込むしかないのか……」


「女神像を取り戻すだけじゃなく、

 守るべき民をないがしろにしている父上に

 ……私は罪を償わせたいです」


「でもさ、

 もし侯爵が罪に問われたら

 君のこれからの人生も

 大変なんじゃないの?」


「構いません。

 父上が別宅に行く日は

 特に決まってはいませんが

 ……満月の夜は

 必ず行っています」


ギミリットはそう言うと、俺に背中を向けて屋敷の方向へと帰っていった。

あれだけ父親の権威にすがっていたのに……ギミリットの変化に俺は驚いた。

 

宿に戻ると、緊張がほぐれてふわっと力が抜けた。

アリーアの声が耳に飛び込んできたとたん、いつもの日常に戻されたような気がした。


「あっ、ロレスー。

 大ニュースだよ!

 ガイナスのことが好きだった

 女の子いたでしょ?

 それでガイナスったらね……」


「やめろ、アリーア!

 おい、ロレス!

 こいつの質問攻めは何なんだ?

 いつもこうなのか?」 

 

ああ、なんて緊張感のなさだろう。

でもアリーアのこの感じには何度も助けられたかもしれない。


俺は侯爵との会話、そしてギミリットとの会話を2人に伝えた。


「侯爵の野郎には

 何かでかい悪巧みが

 あるんじゃないのか?」


……陰謀論とも言い切れない、ありえなくもない話だ。


「う〜ん。

 愛人さんへの

 プレゼントとか?」


……案外そんなくだらない話かもしれない。


「ロレスがまた女神像を作って

 盗まれた村に届けるのはどう?

 ロレスの女神像にも

 魔を封じる力、あったし」


「それは最終手段かなぁ。

 やっぱ、元々あったものを

 取り戻してあげるのが一番だよ」


ガイナスは立ち上がり、壁のカレンダーを見てから戻ってきた。

カレンダーには月の満ち欠けも書かれている。侯爵が別宅に行く満月の夜は、明日だそうだ。


「……ロレス。

 俺もギミリットに賛成だ。

 ガナール村の人たちが

 あれだけ苦しんでいたのを

 お前も覚えてるだろ?

 侯爵がお咎めなしは許せない」


「そりゃあ俺も

 どんな理由で集めたにしろ

 侯爵は許したくない……だけど……」


勇者特典の【住宅の探索権(但し犯罪捜査時)】を使えば、侯爵の愛人宅を調査して女神像を回収する事はできる。

特典担当のミズリムさんも、捜査する時の理由は『どうとでもなる』って言ってたしね。


だけど女神像は盗まれた村に戻せるかもしれないけど、侯爵に罪を償わせるのは難しい。


侯爵はシラを切るか、誰かに罪をなすりつけるはずだ。それは間違いない。

勇者と侯爵……どちらの言い分が裁判で信用されるんだろう……たぶん侯爵なんだろうな。


満月の夜に別宅に現れた侯爵に、女神像の前で白状させるのがベスト。

そしてその場に侯爵よりも偉い人間がいれば侯爵は逃げきれない。


侯爵よりも立場が上の人間は……王家しかない。

だけど王に報告して動いてもらおうとすれば、侯爵に察知されて女神像を隠されてしまうだろう。


ファリィ姫は……夜は城から出られないし……う〜ん。


うんうんと悩んでいる俺を見ながらガイナスは笑った。


「勇者パーティーは

 勇者に従うのが一番いい。

 良い作戦を考えてくれよ」 


「わかった、ガイナス。

 明日の満月の夜を逃すと、

 次は随分先になっちゃうかもだから。

 ……なんとか、したいね」


そして俺とアリーアはガイナスと別れてエウレカに向かった。


「もしかしたらさ、

 新街道を作った貴族って

 ラインゼイル侯爵かもしれないと

 思ってるんだ」


「そうなの?」


「郊外に愛人がいる貴族は多そうだし、

 違うかもしれないけどね。

 新街道を使えっていう

 商人への圧力をやめさせられたら、

 アリーアの宿屋にも

 お客が戻ってくるんだけどなぁ」


「…………そうだね」


エウレカに到着して夕飯を食べ、風呂に入り、俺たちは寝るために2階にあるお互いの部屋に入った。


俺はベッドに仰向けになって、明日の夜の事を考えていた。

 

しばらくすると部屋をノックする音がした。

誰だろう……とはならない。


「ロレス……」


薄い生地の寝巻き姿のアリーアが部屋に入ってきた。


「どうしたんだ?」

 

「…………うん」


猫ようなアリーアの目は、何かを言いたげだ。



次回『夢』

お読みいただきありがとうございます!

次回は「女神様とかなり久しぶりに再会する」というお話です。


もし少しでも面白いと感じましたら、ブクマや評価で応援して頂けると嬉しいです!

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