第33話 ギルドの噂話
ワサビ栽培のシステムが完成するまで時々エウレカに通いたいとノーラさんからお願いされた。
商売目的ではなく、純粋に挑戦をしてみたいらしい。
ワサビか……まさかこの異世界でワサビが神野菜と呼ばれているなんて思わなかったよ。
そしてノーラさんは神肥料を置いて帰っていった。
「ノーラさんって、
大人って感じで
色っぽくて綺麗な人だね。
香水のいい匂いがしたし」
「まあ綺麗かもしれないけど、
色々と変わってる人だけどね……」
「それにしても
神野菜ってどんな味なのかあ?
神って付くくらいだから
信じられないくらい甘いのかなあ?」
きっと驚くと思う。色々な意味で。
明日の朝はギルドに行って、また簡単なクエストをもらう予定だったが、アリーアが一緒についていきたいと言ってきた。
「自分の魔導師スキルが
どのくらい上がったのか
レベルを調べてみたいの」
「ああ、なるほど。
わかった、じゃあ明日一緒に行こう」
そして翌日、早めの朝食をとった俺たちはエウレカを出て王都へ向かった。
歩きながら、なんだか今日のアリーアはいつもと少し違う感じがするな……なんでだろうと考えていた。
「なあアリーアさ……あっ!
ちょっとだけお化粧してる?
あと……くんくん、
なんかイイ匂いしない?」
「はぁ……ロレス
やっと気づいた。
おっそぉ……」
「なんでギルドにいくのに
お化粧とかしてるの?」
「別に……。
そういう日だってあるもん」
エウレカを出発して1時間半、城下町の冒険者ギルドに到着した。
まず先に裏口に回ってギルドマスターを呼び出してもらい今日のクエストを確認したけれどあまり良いものがなかった……まあ、こういう日もある。
俺とアリーアは正面の入り口からギルドに入った。
それなりの人が中にいた事にアリーアは驚いていた。
「私ギルドってはじめてだけど。
こんな朝なのに結構混んでるのね」
「朝は新しいクエストが張り出されるからね。
あとは混むのは夕方以降かな。
帰ってきた冒険者がお酒飲んでるんだ」
王都内だけでも複数ある冒険者ギルドはどこも酒場が併設されている……というか酒場がギルドをやっているという方が正しい。
元々は冒険者がよく集まる酒場に様々な依頼が持ち込まれて、手数料をとるかわりにその依頼を管理するようになったのが冒険者ギルドのはじまりだと聞いた。
ギルドとは言っても、商品価格や質の安定の為の組合である商人ギルドとは違い、冒険者ギルドは情報交換の場だった。
「ちょっと怖い雰囲気があるね。
って、あれ?
なんでロレス、フード被ってるの?」
「俺の顔知ってる人もいるからさ、
勇者だってバレると面倒なんだよ……」
「ロレスも色々と
大変なんだね」
俺とアリーアはギルドの隅っこにある台の前に来た。
台の上には水晶玉が置かれていて、この水晶玉に手をかざせば自分のスキルレベルが判定できるはずだけど、手をかざしても何も反応しなかった。
どうやら台にあるスリットに硬貨を投入しないといけないみたいだ……有料なのね。
アリーアが硬貨を投入すると水晶玉が光りはじめたのでアリーアは手をかざした。
そしてしばらくすると、水晶玉に文字が表示された。
【魔導師スキルレベル:8】
これが現在のアリーアの魂に刻まれているスキルレベルだ。
王都学舎では魔法や剣の基礎を学び、才覚の儀で職業の天啓を受けてレベル1からスタートする。
レベルは大雑把にいえば、レベル10から中級、レベル20から上級となる。
アリーアはまだレベル8なので、初歩的な魔法しか解放はされていないらしい。
「そっかー。
もうちょっと頑張らないと
新しい魔法は使えないんだね」
「やっぱり実践じゃないから
限界はあるんだと思うよ。
……でも、これでもかなり
レベル上昇が早い気がするけど」
「ロレスは測定しないの?」
「どうしようかなぁ……。
たぶんアリーアと同じようなもんだしなあ。
……この測定料金ちょっと高いし」
「うん、高い。
正直ぼったくりだよね」
これにお金払うなら、どこかで美味しいランチでも食べようかなんて事を話していると。併設されている酒場で朝から飲んでいる2人の冒険者の声が聞こえた。
「……ひでぇ話だよ。
行ってみたら割に合わねぇのよ。
結局、そいつ以外全員
クエストを諦めて帰ってきちまった」
「そのガイナスってボウズ、
そりゃあ、たぶん死ぬな」
……えっ? ガイナス?
「すいません。
そのガイナスって人の話
詳しく聞かせていただけませんか?
俺の……知人かもしれないので」
「あン……誰だ、てめえは?
ここはギルドだ。
人に聞きたい事があんなら
先に名前と職業を名乗れってんだ」
すると、通りかかったギルドマスターが冒険者に耳打ちした。
「ゆっ、勇者ロレス様ぁ!?」
「シーッ! 声大きいです!
あまり周りには
知られたくないんです……」
「は……はい!
ガイナスってのは俺のパーティーに入れた
王都学舎を卒業したばかりの戦士です」
「……ロレス」
「ああ、アリーア。
間違いない。
あのガイナスだ」
「そのパーティーで
ガナールって村を毎晩襲ってくる
魔獣討伐のクエストを受けたんですが、
毎晩毎晩襲ってきてキリがなくて……」
「それで、パーティーの中で
ガイナスだけが
そのガナール村に
残ったんですね」
「はい……あの野郎、
ここで困ってる人を
見捨てて帰るようだったら
“アイツには絶対に勝てない”って
訳わかなんない事言って……」
……ガイナス。
次回『第34話 ガイナスとの再会』
お読みいただきありがとうございます!
次回は「魔獣と戦う為にしばらく村に滞在したり、村から大事なものがなくなっているのに気がついて、さてどうしよう」というお話です。
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