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第41話 レーザー砲台     (2584)

 そして数年が過ぎた。カナクの南の山岳地帯ではサラル討伐隊が(おとり)作戦を使わずとも、サラルの群れが槍攻撃を仕掛けてくる様になり、サラルとの厳しい戦いが続いていた。ノード政府は、サラル討伐隊の奮闘にも拘らず増え続け攻撃性を高めるサラルを問題視していた。このまま山岳地帯のサラルの数が増え続ける事は、将来カナクばかりでなくノードにとっても深刻な脅威となる。増殖したサラルが攻撃性を高め、カナクやノードに襲いかかるという悪夢が迫っている。

 ノード政府はこれ迄もサラルを討伐するための対策を取って来た。しかし、攻撃用ドローンや新型ジープは夜間に来襲するサラルの攻撃を防げなかった。正確な射撃で効果のある警備ロボットは山岳地帯では使用できず、ユニコーン型ロボットは山岳地帯で奮闘を続けているものの大きな成果を上げられないという現状はノード政府を憂慮させていた。


 そんな時NASF政府からノードにレーザー砲台を設置するという提案があった。NASFの技術者によれば、広い範囲でサラルの侵入を防ぐ手段としてレーザー砲台の設置が有効との事だった。通常の砲台から発射される砲弾は射程が短く、着弾の際にドームや発電施設に損傷を与える可能性がある。しかしレーザー砲台から発射されるビームは射程が長く、ドームや発電施設に損傷を与えることなく数キロ先のサラルだけを殺傷する事が出来る。NASFの核シェルター施設の周囲にはレーザー砲台が設置されており、数百年の間外部からの敵の侵入を防いできた。このレーザー砲は人類最盛期に開発され世界中に実戦配備されていたもので、現存するのはNASF政府の所有する6台のみとなっていた。

 ノード政府とNASF政府の交渉で、そのうち3台がノードに移譲される事になった。ノード政府の指示で、東海岸の港湾都市となったニューヨークの港から三隻の船が大西洋に乗り出し、NASFに向かった。


 2ヵ月後、三隻の船は3台のレーザー砲と様々な部品・工具・設計図とNASFの技術者を乗せ、ニューヨークの港に戻って来た。それらは厳重な警戒の中、直ちに輸送用モービルでノードへと移送された。ノードではNASFの技術者の援助を受け、ドラ山の頂上にノード全体を射程にするレーザー砲台を建設する事になった。5か月後コンクリート製の回転砲台がドラ山の頂上付近に完成し、赤外線スコープつきのレーザー砲が取り付けられた。レーザー砲は自動照準で最大出力120kW、強度はレベル1(black out)レベル2(kill)レベル3(destroy)レベル4(maximum)迄となっており、レベル1のビームで2kmの距離の約10mの範囲のサラルを仮死状態にさせる強度があった。目がくらみ動けなくなったサラルが数十メートルの高さから落下するだけで十分な殺傷能力が認められる。レーザー砲のビームを横方向に連続発射する事により数十数百のサラルの群れを一網打尽にできる。レーザー砲台の電源はドラ山の水力発電所から提供されることになる。

 ドラ山のレーザー砲台1号機の完成の後、続いてレーザー砲台2号機がノードの巨大ドーム群の東2kmのマーネ山に設置される事になった。完成した2か所のレーザー砲台はノードの7つの巨大ドームとその周囲数キロ四方をカバーしており、ノードの人々は何処にいてもその東西2つの砲台の雄姿を見上げる事が出来た。


 5年前サラルとの戦いで負傷しノードに帰還していたカーソンは技術者の一員としてレーザー砲台の設置作業に参加していた。ノードに2か所のレーザー砲台が設置された後、カーソンは、カナクにもレーザー砲台を一台設置する事をノード政府に提言した。「レーザー砲台でサラルを撃退できるのか、砲台がサラルの攻撃で損傷する事はないのかを、カナクで検証する必要がある」

 ノード政府はカーソンの提言を承認し、カナクにもレーザー砲台を設置する事を決定した。カーソンを主任とする総勢80人の技術者・建設作業員がカナクに派遣される事になり、多くの資材と共に2艘の船に乗り込みノードの港を出港した。


 1週間後に2艘の船はカナクの港に入港した。5年ぶりにカナクに戻って来たカーソン主任は、カナクの南十数キロの山岳地帯に駐留するサラル討伐隊のアルビン隊長と無線でレーザー砲台の設置について協議をした。

「こういう事でカナクに再び来る事になった。討伐隊をアルビン隊長にお任せする事になって、誠に申し訳なかった」

「サラル討伐隊の任の大切さは承知している。隊員の安全を確保したうえで出来る限りの任務を果たしたい」

「ユニコーン型ロボを投入してもサラル討伐がたやすいものではない事を十分承知している。今回のレーザー砲台は広範囲でカナクを守る事が出来ると確信する。ぜひ協力を願いたい」

 カーソン主任はアルビン隊長以下のカナク警備隊と協議した結果、レーザー砲台をカナクのドーム群から東に5百m離れたローグ山の上に設置することになった。ローグ山の頂上からはカナクのドーム群が見渡せ、北に青く広がる北極海、南にサラル討伐隊が奮戦する山岳地帯の山々が望まれた。


 3か月後ローグ山の頂上にレーザー砲台が完成し、その日からカナク周辺数キロの範囲に出没するサラルに対してレーザー砲の発射が開始された。いつもの様にカナク周辺の上空を悠々と飛んでいたサラルの群れに対してレベル1(black out)のレーザー光線が発射された。たちまち十数匹のサラルの動きが止まり落下し地面に激突して絶命し、残りのサラルは逃げ去った。サラルにとっては見えない何かによって仲間が次々と撃ち落とされる現象に恐怖を感じたらしく、それ以降カナク周辺では昼間にサラルの姿を見る事は無くなった。夜間に少数のサラルが飛来する現象は続いていたが、これに対してはレーザー砲ではなく警備ロボットが正確な射撃で撃退した。夜間にレーザー砲を発射すると、空中の霧や粉塵でレーザー光線の軌道がサラルに気付かれ、発射地点の砲台が攻撃を受ける可能性があり、レーザー砲のビーム発射は明るい日中に限定するという指令が出ていた。


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