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異世界闇金 ~元ヤクザ幹部、剣と魔法の世界で闇金始めました。~  作者: と゚わん


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鬼神終焉、そして鉱山の慟哭

「玄武の爺さん、てめえが鬼神なら、俺は、地獄の閻魔様ってところだ。罪人の魂、きっちり裁いてやるぜ!」


俺は、最後の気力を振り絞り、炎を纏った戦斧を構え、鬼神の玄武に再び突進した。

狙うは、奴の胸に刻まれた、禍々しい蛇の紋章。ミリアが言っていた、奴の力の源泉だ。

ヤクザの喧嘩は、相手の一番痛いところを、一番効果的なタイミングで叩くのが鉄則だ。


「小僧が……! その程度の炎で、このワシを焼き尽くせると思うなよ!」

玄武は、俺の捨て身の突進を、その巨大な戦斧で迎え撃ってきた。

だが、その動きには、先程までの圧倒的な余裕が消え、わずかな焦りが見て取れた。

俺の狙いが、奴の弱点であることに気づいたのかもしれねえ。


炎の斧と、鉱石の斧が、凄まじい音を立てて激突する。

衝撃で、俺の腕の骨が軋むのが分かった。だが、構うもんか。

俺は、体重の全てを乗せ、渾身の力で押し込む。

懐のオフクロのお守りが、再び熱を帯び、俺の体に、最後の力を注ぎ込んでくれるような気がした。


「うおおおおおおっ!」

「ぬううううううん!」


互いの力が拮抗し、火花と黒煙が舞い上がる。

その時、俺の戦斧の炎が、一際強く燃え上がり、玄武の胸の紋章に直接触れた。

ジュッ、という肉の焼ける音と共に、玄武の顔が、初めて明確な苦痛に歪んだ。


「こ、この紋章は……『蛇神様』の……!」

玄武は、胸を押さえ、よろめいた。その巨体から、先程までの圧倒的な闘気が、急速に萎んでいくのが分かる。

刺青の輝きも、まるで命の灯火が消えるように、くすんでいく。


「……やはり、そこがてめえの弱点だったか」

俺は、好機を逃さなかった。

弱った獣に、慈悲は無用だ。

俺は、最後の力を振り絞り、玄武のがら空きになった首筋めがけて、戦斧を叩き込んだ。


ゴリッ、という鈍い感触。

鬼神の玄武の巨体が、まるで大木が倒れるように、ゆっくりと、そして轟音と共に、その場に崩れ落ちた。

その目は、信じられないといった表情で、俺を見つめたまま、二度と動くことはなかった。

神嶺組最強の武闘派、鬼神の玄武、その終焉だった。


「……はぁ……はぁ……やった、のか……?」

俺は、その場に戦斧を突き立て、荒い息を繰り返した。

全身の傷口から、止めどなく血が流れ落ちていく。立っているのが、やっとだった。


その時、鉱山全体が、まるで生き物の断末魔みてえに、激しく揺れ始めた。

「組長! こっちです!」

「鉱山が崩れる! 急いで!」

ミリアとベイルが、俺の元へ駆け寄ってくる。

そして、坑道の奥からは、ゴードンとバルガン、そして解放されたドワーフたちが、土煙を上げながらこちらへ向かってくるのが見えた。


「……てめえら、無事だったか……」

「へい! 旦那の指示通り、主要な坑道は、ドワーフの爺さんたちの知恵で、見事にぶっ壊してきやした! もう、この鉱山も長くは持ちやせんぜ!」

ゴードンの顔は、煤と埃で真っ黒だったが、その目には達成感が満ち溢れていた。


「玄武様が……玄武様がお倒れになった……!」

「鉱山が……崩れる……!」

生き残っていた神嶺組の「鬼瓦」どもや、「黄昏の蛇」の術者の残党たちは、この世の終わりみてえな光景に、完全に戦意を喪失し、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っている。

だが、もう遅い。


「全員、脱出するぞ! この地獄から、生きて帰るんだ!」

俺の号令で、柳瀬組と、解放されたドワーフたちは、崩れ落ちる岩石や、噴き出す土砂を避けながら、出口へと向かって走り出した。

ミリアが魔法で通路を確保し、ベイルが時折、小型の爆弾で邪魔な岩を吹き飛ばす。ゴードンとバルガンは、殿を務め、逃げ遅れたドワーフたちを助けながら進んでいく。


俺は、ミリアに肩を借り、必死に足を動かした。

意識が朦朧とする中、玄武が最後に何かを言おうとしていたのを、ふと思い出した。

『……氷川の小僧……奴は……蛇に……魂を……喰われて……』

聞き取れたのは、それだけだった。

氷川は、「黄昏の蛇」に魂を喰われている? どういうことだ?


やがて、俺たちの目の前に、三日月が照らす、外の光が見えてきた。

鉱山の入り口だ。

俺たちが外へ転がり出たとほぼ同時に、背後で、山全体が轟音と共に崩れ落ち、巨大な土煙が天高く舞い上がった。

ドワーフ・マウンテンの、神嶺組と「黄昏の蛇」による支配は、文字通り、崩壊したのだ。


俺たちは、その場にへたり込み、ただ、目の前の光景を呆然と見つめていた。

多くの犠牲が出た。俺も、仲間たちも、満身創痍だ。

だが、俺たちは勝った。

ドワーフたちを解放し、鬼神の玄武を倒し、神嶺組の計画に、大きな楔を打ち込んでやった。


「……組長……やりましたな……」

ゴードンが、涙声で言った。

ミリアも、ベイルも、そして生き残ったドワーフたちも、互いの無事を確かめ合い、静かに勝利の喜びを噛み締めているようだった。


だが、俺たちの戦いは、まだ終わったわけじゃねえ。

氷川は、まだ生きている。

そして、「黄昏の蛇」という、さらに大きな闇が、この世界の背後に潜んでいる。

玄武の最後の言葉の意味も、まだ分からねえ。


俺は、夜明け前の、東の空を見つめた。

そこには、神嶺組の本拠地があるはずの方向だ。

「……待ってろよ、氷川。次はお前の番だ」


俺たち柳瀬組の、異世界での本当の「落とし前」は、まだ始まったばかりだ。

だが、今は、この束の間の勝利と、仲間たちとの絆を、しっかりと胸に刻み込んでおこうと思った。

この地獄のような戦いを生き抜いた俺たちは、間違いなく、昨日よりも強くなっているはずだからな。

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