第81話 耐え方を身につけた
「きみたち、奴隷狩はやめたんじゃなかったのか…… 今度は、死霊使いたちと合流して船を乗っ取るつもりだったのか?」
「違う」
俺が質問すると、ジャンは苦々しい表情になった。
その隣でギルが、憤然と叫ぶ。
「やつらは、裏切り者なんだぞ!」
「裏切り者……? どういうことだ?」
「「…………」」
ジャンとギルは、網で身動きできないまま、お互いをうかがっている。言っていいか迷ってる、ってとこだな。
やがて、ジャンがためいきをひとつ、ついた。
「……やつらは、ボスから離反し、ォロティア義勇軍を抜けた連中だ……」
「いや、離反って…… 魔族を奴隷にして売ろうってのが、見え見えだったが?」
「ォロティア義勇軍は、奴隷ビジネスはやめたんだぞ! いっしょにするな、だぞ!」
{なに言ってるのですか!?}
「んぶっ……!」
「うぷっ…… ぶぶぶ」
ギルとジャンの顔面に、イリス怒りの分裂ぷっぴゅんが貼りついた。
{昔は奴隷狩りしてたくせに、お詫びもせずに堂々としないでください、なのです!}
「うぶっ…… ぶぶぶぶ……」
「……っ! ぐぅっ……」
まずい。ギルもジャンも、酸素を失って紫色になってきている……
「それくらいにしとこうか、イリス。こいつらはあとで、アシュタルテ公爵に送ってやるから」
{それなら、いいのです}
ぽにゅん
イリスがふたりの顔から離れ、少女の姿に戻る。
『アシュタルテ公爵』 の名に、ふたりぐみは目に見えてひきつってるが…… まあ、自業自得だよな。
「で? 仮に、やつらが本当に離反してたとして、どうする気だったんだ? 仲間にくわえてもらうのか、それとも、引き戻すのか?」
「違う」
ジャンの眉間のしわが、さらに深くなる。
「制裁だ」
「ああ、なるほどな」
裏切り者には死を、ってやつだな。こういう組織あるあるだ。
そうすると、鳥人とセンレガー領はやっぱり、かなり運が良かったと言わざるを得ないな…… ちょうど、あの周辺に見切りをつけたォロティア義勇軍の本拠地移転とタイミングが重なったおかげで、見逃されたんだろう。
それに、事情は少々異なりそうだが、ドゥート皇国も ―― グロア女皇はォロティア義勇軍との長年の契約関係を打ち切って、権力を守るための踏み石にした。それがあっさり許されたのも、あのタイミングだったからだろう。
―― いや。
もしかするとグロア女皇と義勇軍の間には、まだ俺の知らない裏取引があるのかもしれないな。
たとえば俺とイリスを竜神族との交渉にあてる一方で、魔石の存在を義勇軍にも漏らしているとか ――
「…… ところで。きみたち、どうして俺がここにいるか、知ってるか?」
念のためにきいてみると、ジャンは 「けっ」 と吐き捨て、ギルは 「お、おまえ、俺たちのストーカーだぞ?」 と見当違いの返事をした。
どうやら、俺が魔石の採掘交渉のために来ていることは、知らないみたいだな。
―― 俺が確認したいのは、こんなところか。
「よし、じゃあ…… 《縮小化》 あと 《錬成陣スキップ》 ―― ワイヤー入りスノードーム、錬成開始 《超速 ―― 200倍》 錬成終了」
「お、オニだぞう!」
「あんた、ひとの心、ないだろ?」
縮小化されてスノードームに入れられたギルとジャンが、なにか言ってるが ――
「君たちにとって、ひとの心が、そんなにキレイで優しいものだってのが驚きだな」
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