第104話 新技を手に入れた
「すごいな! ママチャリが電動自転車になった感!」
『はっはっは、そうだろう、リンタロー!』
『不思議なたとえですね』
ミリンとミアが、金属のこすれるような声で笑った ――
龍穴 ―― オーエド城の地下の、広大な洞窟の道は、地下を流れる川沿いに、長くかなり急な登り坂になっている。
だが俺は、疲労をまったく感じることなく、軽々と走り抜けた。
竜神族のミアとミリンが合体してくれたことによる身体強化が、これほどとは ――
どれほど走っても、息がまったく切れない…… いや、走れば走るほど力が増していくようにすら、感じるのだ。
『それにしても、さっきの襲撃者! まったく、見当たらぬな!』 と、ミリンがやや苛立った声をあげる。
『いったいどこに逃げてったんだ!?』
「俺たちを足止めしたいなら、そこでやれば良かったのにな」
『バカを申すな、リンタロー! やつは、余の攻撃に恐れおののいたのだッ!』
『ミリンの攻撃と、私の結界 ―― 同時に操れる侵入者と真っ向勝負では、勝ち目がないと踏んだのでしょうね』
ミリンとミアが俺の脳内で交互に話すことは、妥当 ――
「とすると、どこかでトラップや奇襲を、仕掛けてくるな…… ミアの結界は、物理もいけるんだったか」
『まあ、ある程度は』
ミアの返事とともに、俺の身体を薄い膜が覆う感覚 ―― 俺はそのまま、道の奥のトンネルへと突入した。
その瞬間。カタッと小さな音がした…… と、思ったら。
無数の、先のとがった鋭い石が、天井から降り注いでくる……
それだけじゃない。
両脇からも、同じ石が、俺めがけて一斉に飛んでくる……!
いくつもの石が、俺を包むミアの結界にぶつかって白い火花を出し、弾き返されていった。
「まあ、予想どおりだな……」
『機械生命を利用した、トラップですね』 とミア。
「だろうな…… 俺がやつでも、これくらいはする」
俺はいったん、足を止めた。
石はまだ、際限なく降り注いでいるな…… どうやらこのトラップ、トンネルに人が入ると発動するもののようだ。
俺は石をひとつとらえ、懐中電灯を当ててみた ―― 黒っぽい地に、青や緑の光沢。
この洞窟を造っている岩と、同じものだ。
強烈な魔法攻撃でも傷ひとつつけられない、驚異の固さを誇る石…… もし1つでも直接当たっていたら、俺のからだには間違いなく、のぞき穴が開いていただろう。
さすがの竜神族の結界も、この攻撃を受け続ければ危ないかもしれない ――
「ミア、この結界、どれくらいもつ?」
『こらリンタロー! おやの結界をナメるでないぞ!』
『ミリン。リンタローは別に、ナメたわけではありませんよ…… ですがまあ、ナメてもらっちゃ困りますね』
「わかった、ミア」
ならば、もうあとは一択 ――
「突っ切るぞ!」
『もちろんだ!』
『異存は、ありません』
ミリンとミアの返事が俺の脳内に響くと同時に、俺は再び、全速力を出した ――
まるで、無数の凶器そのものの石は、俺が進むに従い、より勢いを増す……!
だが、俺の結界はすべての攻撃を弾き返していく。石と結界との摩擦で起こる火花で、俺の全身はまばゆく発光しているようにすら、みえる。
おそらく結界の表面は、あり得ないほどの高温になっていることだろう。
だが、その熱は俺にはまったく、伝わってこない……!
「すごいな、ミアの結界」
『ふっ、それほどでも、あるのだ!』 と、ほこらしげなミリン。
『いまのリンタローは、私たちと合体したので、身体強化もされていますからね』
「ほんと、ありがたい……!」
トンネルを抜けきると、小さなホールだった。
水は流れておらず、奥にまた、トンネルのような細い道が続いているところを見ると ――
このホールもまた、トンネルの一部、と考えて良さそうだ。
「よく、こういうダンジョンでさ……」
俺がミアとミリンに話しかけたとき。
ガターン!
空間を震わせながら、岩壁が降りてきた ―― 入口と出口、両方に。
つまりは俺たちはこのホールに閉じ込められてしまった、わけだ。
まさしく俺がいま、ミアとミリンに言おうとしていたとおりに ――
しかも、どこからともなく水音まで聞こえてきた。
足元を、一筋の水が流れている…… ごく少量だと、油断してはならない。
一筋はやがて二筋に。二筋はやがて、小さな水溜まりをつくる。小さな水溜まりは、少しずつ大きくなっていく……
つまりは ――
侵入者を閉じ込めたうえで、溺死させる部屋だ……!
「いや、ベタすぎるだろ! 工夫しろよ……!」
『まあ…… 侵入者を阻む手段としては、オーソドックスかつ有効、ですよね』
ミアの言うとおりではあるんだが、なんだかな…… と、ここで。
ミリンが、聞いてきた。
『おや! リンタロー! アレを試してみても、よいかッ?』
ワクワク楽しげに、語尾が弾んでるな……
思わず、うなずいてしまいそうになる。だが……
「ちょい、まて! アレって、なんだ?」
『龍気術ですね』
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