表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/105

第77話 狙われる者


 静寂。



 霧都ヴェイルは、息をしていた。


 流れる霧。鳴り直す鐘。戻ってくる雑踏。


 さっきまで“未定義”に塗り潰されていた世界が、少しずつ――自分の名前を取り戻していく。



視聴者:341,882,004

【戻った…?】

【街が生き返ってる】

【世界の描画終わった】



 中央塔の白紋様は、止まっている。


 止まったのではない。


 “止めた”。


 動けばまた、上から読まれる。


 造形師はそれを理解していた。



 レインは、空を見上げていた。


 裂け目は閉じている。


 だが、閉じた“だけ”だ。


 押し返した感触が、指先に残る。


 あれは撤退ではなく――採点。



《評価:危険度A》

《再訪:確定》



 ミナが、息を整えながら呟く。


「……退いた、よね」


「退いた、だけだ」


 レインの声は静かだった。


 勝った熱がない。


 “分かった”冷たさがあった。



視聴者:344,002,441

【勝利の顔してない】

【不穏の匂いしかしない】

【次が本番タイプ】



 レインは、足元を見る。


 蒼は消えている。


 赤も消えている。


 だが――消えたのは光で、残ったのは“癖”だ。


 世界に触れた指の感触が、まだ離れない。


 彼は膝を折り、石畳に指を置いた。



 “聞く”。


 地脈の響き。


 核の残滓。


 古い力の澱。


 ──ない。


 薄い。


 空っぽに近い。



 レインは、息を吐いた。


「ここには、もう溜まってない」



 ミナが眉を上げる。


「……星に溜まった古い力?」


「ああ。二年前、俺が潜った理由だ」


 レインは、短く笑う。


「感じる。もう、ない。ここは枯れてる」



視聴者:346,441,882

【枯れてる宣言】

【じゃあ何で狙われる】

【答え合わせ来るぞ】



 造形師が、塔の縁からゆっくり降りてくる。


 外套は裂け、血の痕がある。


 だが足取りは揺れない。


 彼はレインの隣に立ち、同じ空を見上げた。


「……それでも狙う。なら理由は一つだ」


 レインが、先に言った。


「星の代謝じゃない。再配置そのものが目的じゃない」


 造形師が続ける。


「“妨害できる存在”の排除か」


 ミナの指が、無意識に握られる。


「私たち……?」


 レインは頷く。


「俺たちがいる場所が、狙われる」


 言葉が落ちた瞬間、広場の空気が一段冷えた。



視聴者:349,002,441

【狙われるのは人】

【キャー!ストーカー!】

【物語ギアアプ】



 造形師が、淡々と確認するように言う。


「つまり、ここに居続ければ、また観測が来る」


「来る」


 止めれば止めるほど、“もっと上”が来る。



 レインが言った。


「身を隠す」


 ミナが一瞬、言葉を失う。


「……隠れるの? 今、勝てたのに」


 レインは視線を落とさない。


「勝てたんじゃない。測られただけだ」


 造形師が、静かに肯定する。


「評価された。危険度を」



視聴者:352,441,882

【勝利=採点】

【こわ】

【大人の会話♡】



 風が吹く。


 霧が流れ、露店の布が揺れ、街が“いつもの顔”を取り戻していく。


 だが広場の中心だけは、まだ“戦場の匂い”が残っていた。



 造形師が、ふっと目を細める。


「ここが再配置されないのなら」


 彼は白い塔を見上げた。


「私がここにいる理由は、もうない」


 ミナが身構える。


「……行くの?」


「行く」


 即答。


「必要だと考える場所を残すために」


 造形師の声は冷たい。


 だが、今日だけは少し違った。


「そして――見つからないように気をつけよう」


 それは敗北の言葉ではない。


 “同類”になった者の言葉だった。



視聴者:355,110,882

【造形師が逃げる宣言】

【敵なのに共犯】

【三角関係キュン♡】



 レインは、初めて造形師を見る。


「次に会う時、敵か味方か」


 造形師は肩をすくめた。


「残したいものが残るなら、どちらでもいい」


 それだけ言って、白い紋様を一枚、空中に刻む。


 門ではない。


 “消えるための線”。


 次の瞬間、彼の輪郭は霧に溶けた。


 最後に残ったのは、白い残響だけ。



視聴者:358,002,441

【退場かっけぇ】

【白い残響って何】

【造形師推すぞ】



 広場に、二人が残る。


 レインとミナ。


 戦いの後の静けさは、現実より重い。


 言うべき言葉が、二年分ある。


 けれど、どれも鋭すぎて喉に引っかかる。



 ミナが先に笑った。


 泣きそうな笑いだ。


「……戻ったんだね」


 レインは短く頷く。


「戻った」


 それだけで、ミナの肩が落ちた。


 張っていた糸が切れるみたいに。



視聴者:361,441,882

【再会ターイムきた】

【二年は長いよ】

【邪魔しちゃいけない雰囲気】



 ミナは言いかけて、やめる。


 責めたいわけじゃない。


 でも、言わずにいられない。


「……二年」


 レインは、視線を逸らさずに答えた。


「前は三年かかった」


 ミナが驚く。


「……短くなってる」


「ああ」


 レインは、ほんの少しだけ口角を上げた。


「俺が強くなるほど、時間が短くなる」


 ミナの胸が痛む。


 その言葉は、“次はもっと短くなる”と同時に――“次も潜る”と言っている。



 ミナの足元に、赤い紋様が一瞬だけ灯る。


 感情で勝手に。


 すぐに消える。


「……私も、追いつける?」


 レインは即答しない。


 だが、答えは目にあった。


「頑張れ」


 ミナは、息を詰めた。


 その優しさが、ずるい。



視聴者:364,002,441

【言葉少ないのに刺さる】

【夫婦砲のアフターケア】

【もう付き合っちゃえ】



 その時。


 広場の端で、拍手が一つ鳴った。


 空気を読まない、乾いた拍手。



「良い感じの雰囲気を邪魔して悪いんだけど」


 女の声。


 軽い。


 しかし、背中に氷を滑らせるような“精度”がある。



 霧の中から現れたのは、長い外套。


 杖。


 蒼い髪。


 そして、眠そうな目。


 リュシアだった。



視聴者:366,441,882

【リュシアwww】

【空気読まない女きた】

【タイミング職人かよ】



 レインが目を見開く。


「……リュシア!?」


「久しぶり」


 リュシアはレインを見て、眉を上げた。


「……やっと出てきたんだ」


 レインは短く言う。


「お前、なんでここに」


「確認に来た。二年前、ここから“変な量”の力が跳ねたから」


 リュシアはさらっと言った。


「で、見つけた」


 視線がミナへ流れる。


「ミナと出会った」



 レインの目が細まる。


「……鍛えたのか」


「鍛え直した」


 即答。


 乾いた刃。



視聴者:368,882,441

【会話が刃物】

【師匠こっわw】

【でも好き】



 ミナが口を開きかけて止まる。


 リュシアは続ける。


「あの時のミナは、今にも壊れそうだった」


 ミナの指が、無意識に拳になる。


「……壊れなかった」


 リュシアは肩をすくめた。


「そう、壊れなかった。そして、強くなった」



 レインが、ミナの足元を一瞬だけ見る。


 赤の残り香。


 波形の癖。


 そして――“切り方”。



 レインが低く言った。


「あの赤は、お前が仕込んだな」


「仕込んだのは“型”だけ」


 リュシアは淡々と言う。


「火をつけたのは、本人の執念」



視聴者:371,002,441

【「型」だけって言い方強い】

【執念で覚醒は熱い】

【師匠キャラ立ちすぎ】



 ミナは視線を落とす。


「私、レインの力になりたかったの」


 リュシアは小さく息を吐く。


「思いが強いと、世界は折れる。良い方向にも、悪い方向にも」


 レインが、ミナを見る。


「無茶したな」


 ミナは、笑う。


「誰の背中、見てきたと思ってるの」


 同じ言葉が、今度は再会の合図みたいに響いた。



視聴者:373,441,882

【回収キター】

【背中ワード強すぎ】

【流行るぞこれ「背中見てきた」】



 リュシアが咳払いをした。


「で。あなたたち、身を隠すって?」


 レインが頷く。


「狙いが俺たちなら、ここに居続けるのは悪手だ」


 リュシアが小さく息を吐く。


「……なら、再配置を妨害できる力を持つ私や、セリス、アルヴェルトも――

 これからは目立たないように動いた方がいいわね」



視聴者:375,882,441

【かくれんぼ】

【変装だな】

【ミナはナミさんのコスプレ推】



 そこへ、地下から駆けてくる足音。


 レジスタンスの兵が息を切らし、膝をつく。


「ミナ――! いや、零号!」


 言い直した瞬間、場の空気が一度だけ揺れた。


 秘密が剥がれた音。



視聴者:378,002,441

【言い直したww】

【もう隠せてない】

【可愛いミス】



 兵は続ける。


「……戦争です」


 ミナの顔が強張る。


「どこが」


「《レムナート》が、《グランヴァル》と――開戦しました」


 レインが、目を細める。


「レムナート……」


 リュシアが補足する。


「鉄と穀倉の大国」


 兵が声を震わせた。


「俺たちの家族が、あそこにいます。頼みます……みなさん、助けてください!」



視聴者:381,882,441

【ミナさん?みなさん?草】

【家族人質展開やめろ(好き)】

【レイン出るしかないやつ】



 ミナが言う。


「レイン……あなたには星を救う目的がある」


 リュシアも頷く。


「戦争は、関係ない。無駄に目立つだけ」


 レインは、空を見上げた。


 未定義の残り香。


 さっきの視線。


 狙われる理屈。


 そして――鉱脈。


 古い力を溜める“器”。


 彼は静かに言った。


「関係ある」


 二人が目を見開く。


「世界の三大王国――」


 レインは指で空をなぞる。


「《レムナート》、《グランヴァル》、《セレスティア》」


 名は、口にしただけで重い。


「俺の出身はセレスティア。巨大鉱脈があった。だから三年間で力を放出できた」


 視線が兵に戻る。


「なら、同じ大国であるレムナートとグランヴァルにも巨大鉱脈がある可能性が高い」


 ミナが息を呑む。


「……古い力を?」


「解放できる場所がある」


 レインの声が低くなる。


「それを探して、解放する」



視聴者:384,002,441

【鉱脈=燃料→大国】

【独占反対】

【世界の裏側きた】



 リュシアが小さく舌打ちをする。


「……嫌な予感がする」


 ミナは兵を見る。


 震える手。


 家族という言葉の重さ。


 レインは、迷わなかった。


「行く」


「隠れるなら、なおさら戦地の方が動きやすい。紛れられる」


 理屈は冷たい。


 だが、その目は違った。


「それに――守りたい人がいるなら、守る」


 ミナの赤が、ほんの一瞬だけ灯る。


 理解した合図。



視聴者:387,441,882

【行く宣言きた】

【主人公やっぱそう】

【“守る”がテーマになってる】



 リュシアが肩をすくめる。


「私は一度、セレスティアに戻る」


 ミナが問う。


「どうして?」


 リュシアは指を立てる。


「王都の結界式。まだ生きてる。今の“上位観測”に対抗するなら、古い防壁の再起動が必要」



 霧が流れる。


 塔の影が伸びる。


 ヴェイルは、いま静かだ。


 だがその静けさは、嵐の前の“整理”に過ぎない。



 ミナが、レインの袖を掴む。


「……本当に、また消えたりしないよね」


 レインは、袖を引かない。


 代わりに、手を重ねる。


「消えない」


 ミナが目を見開き、笑って、泣きそうになる。


 レインは、ほんの少し笑った。



視聴者:392,441,882

【泣くwww】

【重いのに甘い】

【この夫婦、世界より厄介やな】



 レジスタンス《残響》が動き出す。


 地下の扉が開き、荷が運ばれ、地図が広げられる。



 レインは最後に、霧都ヴェイルを振り返った。


 選別で削られた街。


 抗い始めた街。


 そして、守り直す街。


「ここは、置いていく」


 ミナが頷く。


「残す。必ず」



 遠くで鐘が鳴る。


 今度の鐘は、選別の合図じゃない。


 出発の合図だ。



視聴者:397,002,441

【旅立ち回きた】

【戦闘準備】

【次回:道中無双はよ】



 レインが、低く言う。


「レムナートへ」


 ミナが言う。


「家族を守る」


 リュシアは霧の中へ消えながら、軽く手を振った。


「死なないでね。面倒だから」



視聴者:400,441,882

【面倒だからwww】

【リュシア節】

【次回絶対神回】



 そして。


 空の“外側”。


 未定義の揺らぎが、ほんのわずか――笑った。



《追跡対象、更新》

《核干渉者/赤干渉者》

《観測継続》



(第77話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ