第102話 星の異常
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揺れ。
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最初に異変が起きたのは、
辺境の森だった。
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ドクン。
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地面が、
膨らむ。
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次の瞬間。
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地表が裂けた。
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蒼い光が、
地下から噴き上がる。
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ダンジョン。
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新しい迷宮が、
森の中に出現した。
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だが。
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それは、
普通の生成ではない。
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蒼い紋様の流れが、
制御されていない。
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迷宮の入口から、
原脈の力が噴き出す。
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衝撃。
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蒼い爆風が、
周囲の木々をなぎ倒す。
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森が、
吹き飛ぶ。
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そして。
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それは、
一箇所では終わらなかった。
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山脈。
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砂漠。
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都市の外縁。
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世界各地で、
同時に大地が裂ける。
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蒼い迷宮。
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蒼い暴走。
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蒼い爆発。
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【ダンジョン増えすぎ】
【世界中で発生】
【世界同時多発テロ】
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王都。
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街の中央広場。
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人々が、
ざわめいていた。
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地面が、
小さく揺れている。
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建物の窓が、
カタカタと鳴る。
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冒険者の一人が、
空を見上げる。
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「……なんだ、これ」
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遠く。
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都市の外。
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蒼い光が、
柱のように立ち上っている。
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迷宮の生成。
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だが。
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数が異常だ。
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誰かが、
呟いた。
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「ダンジョンが……増えてる」
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別の冒険者が、
顔を青くする。
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「いや」
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「増えてるんじゃない」
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一拍。
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「……湧いてる」
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視聴者:1,394,441,882
【言い方怖い】
【湧くな】
【世界終わる】
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その時。
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王都の外縁で、
爆発が起きた。
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蒼い衝撃波。
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地面が抉れ、
土砂が舞い上がる。
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人々が悲鳴を上げる。
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誰かが叫ぶ。
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「ダンジョン暴走だ!」
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恐怖が、
街へ広がっていく。
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その頃。
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星の深層。
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原脈。
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蒼の奔流が、
まだ流れ続けている。
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レインは、
そこにいる。
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蒼に包まれ、
意識はほとんど沈んでいる。
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「……流す」
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ただ、
それだけを繰り返す。
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蒼は、
止まらない。
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黒が、
それを見ている。
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観測。
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計算。
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そして――
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黒は、
理解した。
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このままでは、
星は守られる。
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だが。
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人間が、
持たない。
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黒が言う。
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「……修正が必要」
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一拍。
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ほんの僅か。
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黒の声に、
変化があった。
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それは、
アルゴリズムではない。
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判断。
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「観測を――」
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一瞬、
止まる。
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そして。
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黒は、
初めて。
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役割を、
変えた。
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「……介入する」
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【え】
【黒動く】
【観測やめた】
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蒼の奔流の中心で。
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黒が、
ゆっくりと手を上げる。
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星の深層が、
静かに揺れた。
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(第102話・完)




