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アマデウスの力学

作者:芦野里実
最新エピソード掲載日:2026/05/07
1791年12月5日、偉大な音楽家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトがこの世を去る。
12月10日、ザンクト・ミヒャエル教会で、
サリエリが主催するモーツァルトの追悼式典が執り行われる。
モーツァルトが作曲したレクイエムを、生前、親交を深めたサリエリが指揮し、葬送するために。

2人は、とても仲が良く、
特にサリエリは、モーツァルトの音楽も愛したが、
人間性を音楽と同じくらい愛していた。

サリエリは、レクイエムの「入祭文」の指揮をしながら
モーツァルトの魂へ語りかける。

「君が指揮する演奏を、誰も感じることができなかったこの曲、
私は、君の創ったレクイエムを、正しく演奏できているだろうか」

サリエリの脳裏に、過去に共にカンタータ『オフェーリアの健康回復に寄せて(K. 477a)』を作った時の、モーツァルトの言葉が頭をよぎる。
「速度、強弱、これが魂と合っているかが大切なんだ。
これが僕の作曲の魔法。僕の秘密さ。
これが楽譜から再現できたら、
不思議なことだって起こるんだよ。」

サリエリ「ほんの少しでも…速度が…曲の解釈が…
違っていたら言ってほしい、はっきり言って欲しいんだ…君の意見を…」
「不思議なことが起こるって言っていたじゃないか」
「きみの声が…聞きたいんだ…」
演奏はモーツァルトの残した譜面どおり、教会内に完璧に響くも、
どこかウィーンには音楽の生気が足りない。
「モーツァルト、きみが居ないと、こんなにも、世界は寂しいなんて…」

入祭文の演奏を終えた後、サリエリの体だけに強い風が吹き抜け、同時に魔笛のパパゲーノの笛の明るい音が、サリエリに応えるように、ほんのり聞こえた気がする。

「キリエ」のフーガが始まると、
サリエリは、急に真っ暗な空間へ。
モーツァルトが言っていた『不思議なこと』が起こる。
音楽は響き渡り続け、サリエリは指揮を続ける。

急にサリエリの足下から大地が割れ、まわりの風景が動き出す。
モーツァルトの人生、長い音楽の旅路が、彼の目線で逆流し、
その記憶の中に、サリエリが立っているような状況のよう。
そこで友の全ての曲の由来を視る。
そして、幼いモーツァルトが、ある人間から、音楽の才能(超能力)を授けられた瞬間を目撃し、衝撃を受ける。
神ではなく、人間に捧げた音楽だった。

友を、私は決して忘れない…サリエリは自分に誓う。
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