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29-1・由井さん②

 由井さんは、南宿場町ミドメリデの宿屋で受付の仕事を続けていた。行方不明になってたら「いきなり計画破綻」だったので、いてくれて助かった。


「んぉぉっ!さりちゃんと源くんと吉見ヨッシー!?」


 僕だけが「苗字呼び」なのは、現実世界で全く接点が無かったから、もしくは、クラス内で影が薄いからだろうな。


「ゆいゆい、相変わらずだね~!」


 由井さんが頭上高く手の平を翳して、応じた真田さんがハイタッチをする。

 この2人は特に仲良しってわけじゃないんだけど、どちらも人見知りをせずに誰とでも仲良くできる潤滑剤タイプなので、直ぐに意気投合できる。

 クラスで一番背が低いのが由井さんで、2番目が真田さん。童顔も相まって、2人で「ローティーンコンビ」と呼ばれたり、真田さんは「中坊」で由井さんは「小坊」と呼ばれる。ちなみに、真田さんはその呼ばれ方を嫌がるけど、由井さんは全く気にしていない。


「お泊まりだよね?お部屋は2つ取れば良い?」

「うん」

「夜になったら遊びに行って良イイよね?」

「うん、もちろん」


 前回、藤原くん&鷲尾くん&土方さんと一緒に来た時は、「4人プレイ?」などと良いながら僕等4人を1部屋に押し込もうとしていたのに、今日はちゃんと男子部屋と女子部屋に分けてくれる?少しは成長したのだろうか?


「はいっ!シングルルーム2つねっ!」


 部屋の鍵を、1つは僕に、もう1つは吉見くんに渡す。


「ツイン1つとシングル1つじゃなくて、シングル2つ?」

「あたしの部屋は?」

「さりちゃんは源くんと同じベッドでムギュギュでしょ?

 吉見くんが邪魔だと思ったから別のお部屋にしたんだけど、

 みんな一緒のお部屋が良かった?」

「はぁ?」

「だって、新婚バカップルと、その他1人って感じでお店に入ってきたぢゃん」

「バカじゃねーし!」

「真田さん、『バカ』を否定する前に訂正しなきゃならない勘違いがあるってば」

「夜、どっちの部屋に遊びに行けばイイかな?

 さりちゃん達の部屋だと邪魔かな?邪魔だよね?

 でも邪魔しないから、ちょっとくらい遊びに行ってもイイ?」

「絶対に来るなっ!ウザすぎっ!!」

「真田さん、『遊びに来る』を拒否しちゃったら、

 『ムギュギュをするから由井さんは邪魔』を肯定することになっちゃうよ。

 ・・・てか、由井さんと話をする為にここまで来たのに、

 『遊びに来る』を拒否したら本末転倒だよ」


 前言撤回をしなきゃならないところが多すぎる。「真田さんと由井さんは直ぐに意気投合できる」と評価したけど間違い。真田さんが由井さんにペースを乱されてイライラしてる。2部屋を手配してくれた時は「少しは成長した」と思ったけど、全く変わってない。由井さんが行方不明になってたら「いきなり計画破綻」と考えていたけど、由井さんがいても「計画破綻」をしそうだ。

 これはさっさと話をまとめておかないと拗れるな。


「ねぇ、由井さん。夜になったらゆっくり世間話をするけど、先に本題ね。

 宿のバイトやめて、僕等と一緒に帝都に来てもらえないかな?

 みんなで力を合わせて、現実世界に帰ろうよ」

「その話なら、前にも断ったはずだよ」

「そうなんだけどさ、由井さんを1人でここに残したくないんだよね」

「なんで?」

「由井さんが心配だから」

「心配してくれるの?」

「当然だよ。

 由井さんが秘境者狩りに狙われたり、

 由井さんを目の敵にするクラスメイトがいるかもしれないからね」

「源くん、もしかしてアタシのこと好きなの?」

「もちろ・・・・・・・・・・・ん?急に何の話?」

「はぁぁっっ!?尊人くんがゆいゆいのことを好きなわけないじゃん!」

「・・・なんで真田さんが答えてんの?」


 ダメだ。話せば話すほど真田さんのペースが乱れる。僕もペースが乱れそうになった。


「源君が態度をハッキリさせないからでしょ」


 しかも、頭脳明晰で基本的に冷静な吉見くんまで、頓狂なことを言い出した。


「今の会話で、態度をハッキリさせなきゃならない必然性が全く無いというか、

 ハッキリさせるチャンスが無いまま真田さんが否定してるというか・・・」


 話が拗れる要素がゼロなのに話は拗れていく。


「モーソーワールドって、面白いんだけどさ、

 テレビとかSNS無いから、ちょっと飽きてきたんだよね~」


 なんの脈絡も無く、唐突に「本題」が転がり込んできた。これはチャンスだ。


「だったら、テレビやネットがある現実世界に帰ろうよ!」

「ん~~~~~~~~~~~どうしよっかな~。

 源くん、さっき『アタシが秘境者狩りに狙われたら大変』って言ったよね?」

「うん、言ったよ」

「アタシね、狙われてもカンペキに逃げられる自信があるの。

 だから、今からかくれんぼして、アタシが負けたら一緒に帝都に行ってあげる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

「尊人くん!ゆいゆいの自信を打ち砕いてやって!」

「・・・・・・・ん?ど~ゆ~こと?」


 言葉が足りなすぎて解読が困難なんだけど、真田さんは理解をできたのかな?


「ゆいゆいは、『この世界で生き抜く自信がある!』『かかって来いや!』

 『かくれんぼで勝負だ!』『見付かったら降参する』って言ってるの」

「まだちょっと理解できてないんだけど、

 隠れた由井さんを見付けたら帝都に来てくれるってことでいいのかな?

 隠れる範囲は?

 『宿場町全体』とか言われても、見付けられるわけないんだけど」

「隠れる範囲は、新婚バカップルが今晩ムギュギュするお部屋でイイよ」

「バカじゃねーし!」

「真田さん、否定すんのそこじゃないってば。

 ・・・てか、シングルルームでかくれんぼすんの?」


 楽勝すぎてむしろ怖い。シングルルームなんて、6畳~8畳程度の広さしか無いはず。由井さん、そんな狭い範囲で隠れきれるような特殊能力を持っているのだろうか?


「かくれんぼするのは良いんだけど、由井さんが受付を放棄しちゃったら、

 お客さんの対応ができなくなって、宿が困るんじゃない?」

「んっふっふ!アタシが宿の受付を何年やってると思ってるの?

 任せてよ!そのへんは、ちゃ~んと考えてるよ」

「『何年』・・・たって、せいぜいで30~40日くらいでしょ?

 転移してから、それくらいしか経っていないんだからさ」

「さりちゃん、アタシがかくれんぼしてる間、受付やっててね」

「はぁぁっっ!?なんであたしが!?できるわけないでしょ!」

「『任せてよ』って言いながら人任せなの?」

「さりちゃん超可愛いからさ、

 お客さんが来たら、『ちょっと待っててください』って言って、

 ヘラヘラと愛想よくして適当にお話ししとけばダイジョーブ!

 この世界の人、だいたいバカだから、それで誤魔化されるよ」

「『ヘラヘラ』じゃなくて『ニコニコ』ね」


 なんか、「この世界の人はバカ」を含めて、もの凄く説得力がある。そう言えば、北東村ペイイスに住んでた時、真田さんがドレス着て道具屋に座ってニコニコと笑顔を振りまいていたただけで、売り上げが伸びたんだっけ?


「じゃあ・・・僕と吉見くんで由井さんを探すからさ、

 ごめんけど、真田さんは受付お願いね」

「もうっ!しょうがないなぁ!」


 真田さん、由井さんから「超可愛い」って評価されたから機嫌が直ったっぽい。そう言えば西都市セイの冒険者ギルドで子供扱いされて怒った時、僕が「真田さんは可愛い」って言ったら機嫌が直ったんだっけ?


「尊人くん!」

「ん?」


 宿の受付に収まった真田さんに呼び止められる。


「ゆいゆいを瞬殺してね」


 真田さんが親指を立てて首をかききる仕草をした後、その親指を下に向けた(サムズダウン)。「ぬっころせ」って意味だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・怖っ」


 前言撤回。真田さん、由井さんから「超可愛い」って言われたけど、まだ機嫌直ってない。




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