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45-1・もう一つの切り札(早璃)

「わぁぁっっ!!」


 魔力で形成された穴に飛び込む!

 僕にはこれが限界。ブラークさんのマジックソードなら、灼熱半球の正面半分を掻き消せるかもしれない。ブラークさんのマジックソードなら、余波でチートにダメージを与えられるかもしれない。だけど、これで充分だ。


「その程度で俺を出し抜いたつもりかぁっ!!

 富醒・イメージ!ウリエル!!・・・猛る炎に沈めっ!」


 チートが灼熱半球を解除して、巨大な火の玉を飛ばしてきた!


「マジックシード・氷!」


 魔法は、周りから「使い物にならない」と言われたけど、一通りの基礎は学んだ。素の僕では真田さんほど上手く使いこなせないけど、マジックソードと魔石ダガーのコンボがあれば、僕の周りの熱くらいは相殺することはできる。


「富醒・イメージ!ヘパイストス!!これで終わりだぁっ!」


 智人トモが掌を頭上に翳すと、空に無数の剣が出現!一斉に、僕に向かって飛んで来た!


「レンタル待機モード解除!」


 マジックソードでは物理攻撃を凌げない。ダガーの刀身では、飛んでくる剣の重さを捌けない。


「富醒レンタル!再発動!!」


 魔石ダガーを腰布に挟み、背負っていた先生の剣を抜刀して、飛んで来た剣を弾く。2つ目の剣を弾いたところで手が痺れ、3つ目の剣を防ぐ代償で先生の剣を手元から弾き飛ばされた。ブラークさんでも剣の雨を凌げなかったんだから、僕に凌ぎきれるわけが無い。

 だけど、物理的に弾き飛ばすのは、「次の準備」を整えるまでの、第一波だけで良い。第二波が飛んで来るまでのタイムラグの隙を突いてチートに突進する。


「丸腰になった君に何ができる!?死にに来たかっ!」

「わぁぁぁっっっっ!!」


 僕が預かっている特殊能力に、飛んでくる無数の剣に対抗できる力は無い。

 唯一対抗できる特殊能力を、借りる約束はしていない。


「さりぃぃっっっっっ!!!」


 だけど・・・僕には「繋がり、伝わる」という確信があった。


「みことくんっっっっ!!!」


 叫んだ直後に、離れたところに退避をしてくれた真田さんが僕を呼ぶ声が聞こえる。

 突進中の僕の真横に、並走をする真田さんの幻影が見えた。幻影の真田さんが手を伸ばしたので、精一杯手を伸ばして掴む。

 僕の手に「peak experience」のカードが握られた。


「ピークエクスペリエンス発動!!」


 ゾーンに入り、飛んでくる剣の軌道が見えるようになった!足元に飛んで来た剣を、ジャンプで回避!頭目掛けて飛んで来た剣を、身を低くして回避!真正面に飛んで来た剣に手甲をぶつけて弾く!

 これで、僕の目の前には、チートしかいない!


「くっ!バカなっ!」


 バックステップで距離を開けるチート!だけど、チートの動きを先読みしていた僕は、チートより先に精一杯跳び跳ねて、チートに飛び込んでいた!腰布に挟んでおいた真田さんのダガーを抜刀して振り上げる!


智人トモっっっ!!!」


 チートの視点が、目の前の僕から、ダガーの切っ先に移動をした。喧嘩慣れをした藤原くんですら武器の動きに釣られたんだから(第18話)、チートが引っかかるのは当然だろうな。

 チートが憎い。何度も「殺したい」と思った。


「・・・だけど」


 握っていた手を開き、憎悪と殺意の全てを込めたダガーナイフを手放す。


「なに?」


 チートには理解できない展開なのだろう。1~2秒。僕が空中に置いてきたナイフに、チートの視点が注がれる。


  『富醒は有効な武器になる!だが、所詮は他人に与えられた“棚ぼた”の力だ!

   最後の最後で一番アテになるのは、自力で得たオマエの内側に有る力!

   オマエを最も裏切らないのはオマエ自身だ!』


 藤原くんのアドバイス(第22話)を思い出す。


智人トモっ!

 君の最大の弱点は、『棚ぼたの力』で慢心をして、

 内側に有る力を鍛えなかったこと!」


 チートの視線が僕に戻ってきた時には、僕はチートの胸ぐらを掴んでいた。


「わぁぁぁっっっっ!!」


 力一杯引き押せて、「顔面を潰す」くらいの勢いで渾身の頭突きを叩き込む!


「ぶぐぅっっ!」


 反射的に顔面を押さえるチート!その隙に背後に回り込んでチートと背中合わせになって、両腕をクラッチしてペアストレッチ(背筋伸ばし)の要領で持ち上げた!


「これで君の負けだっ!」


 チート攻略の鍵は、既に初戦の時に示されている。

 僕は櫻花おーちゃんの件で激怒をして、チートを殴った(第25話)。

 藤原くんがチートの懐に飛び込んだ時(第26話)、藤原くんがチートを羽交い締めにした時(第27話)、チートは自力ではなく安藤さんのサポートで藤原くんを退けた。


「凄いよ。藤原くんは気付いていたんだ」


 チートは、特殊能力イメージの超火力に頼りすぎて、「自分自身の肉体で戦う」が全くできていない。密着できるほどの至近距離では、チートには抵抗する術が無い。

 原因追及を怠り、自分だけが凄いと勘違いして、恩人の安藤さんを蔑ろにした。チートの負けは、安藤さんが倒れた時点で決まっていたのだ。


「僕1人でここまで追い詰めたんだから、

 『集団リンチはズルい』って言い訳はできないよね?」


 僕は「僕1人でチートを追い詰めた」とは思っていない。仲間達との繋がりのおかげ。そして以心伝心で超アシストをしてくれた真田さんのおかげ。

 でもそれは、チートには言わない。

 与えられた特殊能力に溺れて自己研磨を怠った者が、無駄と言われても努力を積み重ねた者に負ける。終盤をこの展開にするために、全く上達しない魔法の練習(早璃に差を付けられる一方)や、藤原との特訓で性根を鍛えられるシーンを入れた。

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