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第16話 陛下は策士

お読み頂きましてありがとうございます。

「やめてください!」


「いいではないか。いいではないか。」


 領主の屋敷では個室を与えられ、首都に問合わせるという領主の話しを信じた私がバカだったのだ。こんな若いイケメンの領主さまなら無体なことはしないだろうと思い、私ひとりに話を聞きたいというので執務室に向かったのだったが……。


「ほう。教会で儀式を行っていたら、神父に化けた盗賊団のボスが襲い掛かってきたわけか……。疑うわけじゃ無いんだが、その儀式の衣装を着て見せてくれないか。持っているのだろう?」


 私は『箱』から直接、身につけることができるのを見てもらえば信じてもらえると思い、着てみせる。実はこの衣装、古代ギリシャの服のように身体に巻きつけるタイプのもので、心許ないのだ。


「本物みたいだ。くるっと回ってくれるかな。」


 私がゆっくり回って見せたところ、急に領主が手を伸ばしてくる。と、何かをスルリと抜き去ってしまう。それは腰紐兼肩紐というようなもので最後に腰のあたりで蝶結びにしてあったのだが……。


「きゃっ。」


 一気に儀式の衣装が只の布を巻きつけた物体と化してしまう。ズルズルと落ちていく衣装を必死に抑えるが立って要られなくなり、座り込んでしまう。


「な……なにをするんですか?」


「うんうん。本物だね。一度、やってみたかったのだよ。この紐1本で本当に着崩れるんだなあ。じゃあ、こっちの布を引き抜いたらどうなるんだ……。」


 私は男の力にあがらえず、くるくるくるりっと回されてしまった。


「あーーーーれーーーー。って言うと思っているのかよ!」


 本当はこの儀式の服の下には何も着ないらしいが、余りにも心許ないので下に日本で買ったTシャツをつけていたのだ。


『ファイアーボンブ』


 この魔法は圧縮した『ファイアボール』だ。それが執務室の壁にぶつかって爆発して炎上する。執務室の壁に大穴が開く。領主は何が起きたのか分からずその場にへたり込んでいる。


 よし。この隙に逃げよう。こちら側の壁に穴をあけたのも、セイコさんが居るであろうゲストルームがあったからだ。私は、走り出そうとする。


「おい。何があった! ストリングス!!」


 敵か!


『ファイアボール』


 あっ、ユーストリングス団長。でも、口から飛び出した呪文は急にはとまれない。


「おいおい。俺だユーストだ。」


 ちっ。ひょいと避けやがった。意外と俊敏性があるのね。年寄りの癖に……。


「おま……なんて格好をしてるんだ……。」


 なによ。一応、これでも下着は付けているわよ。めちゃめちゃ、心許ないけど……。私は直ぐに元の服に着替える。


 おい。今、ガッカリしなかったか……? ガン見し過ぎだっつーの。


「こ、公爵……賊です。『聖女』を騙る賊……。えっ……知り合い……って……まさか……?」


「ああ。そのまさかだよ。コイツは本物の『聖女』様だ。全く悪い癖を出しやがって……流石に今回は庇えんぞ……。」


「早いわよユースト。」


 そこにサンジェーク陛下とセイコさんが顔を出す。良かった、セイコさん無事だったんだ。万が一、セイコさんも別の部屋で同じようなことをされたら抵抗できないに違いないと思って冷や冷やしていたのよ。


「あっ。ショウコさん、無事だったのね……これは…儀式の衣装じゃ……はーん……そういう…こ…と…。」


 足元に落ちていた衣装見つける。と。いきなり、陛下の声色が元に戻る。うわっ……気持ち悪っ。


「貴様か! こんなことをしやがったのは……」


「誰だ。公爵、誰なんだこの汚いオカマ野郎は……。」


 陛下はその言葉にニタリと笑う。やっぱり、キモい。


「あちゃ……もうダメだ。」


 団長が何かを諦めたかのように頭を抱える。


「ツー・ストリングス卿。不敬罪で即刻縛り首を申し付ける……。」


 うわっ。伝家の宝刀を卑怯な使い方をしているよ……この人……でも……庇えないわ。私にされたことを思い出せば庇うところなんて無い。


「ふ……ふ……不敬って……へ……へい……か……?」


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