63 ぐるぐるぐるぐる
テクノさん達の報告がどうなったか。しばらく経ったけど、今のところは音沙汰はないそうだ。まぁ、そもそも王都に行くまで日数がかかるらしい。まだ着いてない可能性もあるし、着いてたとして何かを決めるにも時間はかかるだろう。
だから、普段通りに過ごしている。
ちゃんと仕事をして、
異世界に行ったり来たり。
魔物退治をしないわけじゃないけど洞窟には行ってない。⋯危ないから。前回はお助けキャラみたいなのがいたからいいものの、毎回いるとも限らないそれに頼るわけにはいかない。
「サシャさん、はいこれ」
「こ、これは⋯?!」
「うん、叫んだりしてると時間がもったいない。早く着替えて」
「⋯そんな毎回叫ぶわけじゃ⋯ぶつぶつ⋯」
ぶつぶつ文句を言いながら、奥に消えてった。
「あれは何を?」
「あっちでも目立たないような普通の服」
「⋯なるほど」
「サシャさんだけだから、意味はないかもしんないけど」
今さらだけどミラさんにもあげた方がいいだろうか。
「⋯私はあってもなくてもいいけど⋯⋯まぁ、あったら着るけどね⋯」
⋯⋯これは遠回しに欲しいって言ってる?ちょっと考えておくか。
「これでいいですかっ?!」
正直女性の服はいまいちわからない。前回はなんとなくだし、今回はサシャさんが選んだやつだし。んで、今回のはオフィスカジュアルといっておけばいいのかな。そのまま仕事をしていてもおかしくない。最初に選んだゴスロリからの振り幅が半端ない。とてもまともに見える。⋯⋯ゴスロリのサシャさんも見てみたい気はするけども。
「うん。大丈夫かな。ちゃんと着てる。⋯⋯⋯あ」
「あ??」
「いや、靴がそのままだったなと。まぁ、そんなにおかしくないからいいか」
「⋯なるほど。じゃあ今度は靴ですね」
「⋯⋯考えておくね」
さらっと要求されてしまった。ミラさんの服もとなるといくらかかるんだ。近藤さんにも頼んだっていいよな。
「じゃあ、気を取り直して。今日は遊園地に行きます」
「「ゆうえんち?」」
「うん。行かないと説明しづらいけど」
「行けばわかると」
「とりあえず、遊ぶとこかな」
「⋯⋯遊ぶ⋯⋯かけっことか?」
「え?かけっこ?そんなことしないよ」
「じゃあ、かくれんぼ?」
「いや、いい大人だからそんなことしないよ⋯」
ジェスチャーでこれだろ?ってアピールしてくるけどそんなことをするつもりはない。
「⋯大人⋯⋯あぁ、賭け事ですか⋯それはいいですねぇ」
「賭け事?!しないよ!?」
「えぇ?!」
仮にするとしても、サシャさんにはやらせてはいけない気がする。公営のでも、グレーのでも悲惨な未来しか見えない。有り金を大穴にとか、数分で数万円のまれるとか。
ピピッ。
スマホが通知音を鳴らした。
「おっと、時間近いから肩でもつかんで」
「こうして近くにいると、ミラだけ服が変ですね」
「だよね。だから、さっき欲しいって言ったんだ」
あれ?遠回しだったのに直接になってるぞ??
「じゃあ、選ばないといけませんね」
「ね、楽しみ」
⋯絶対近藤さんに買わせよう。
そう決めたあたりで景色が変わった。
さっき言った通り、今日は遊園地で遊ぶ。ただ、一日一万円近くかかる有名なランドではない。地方にある少し閑散としている遊園地。回数券で乗り物等を楽しめるところだ。
おそらく待ち時間も少ないだろうし、滞在時間を考えるとフリーパスなんて意味がない。初めてならここでもいいはずだ。そんな考えのもとに選定した。
「あ、サシャさんが着替えてる」
「近藤さん。回数券買っといてくれた?」
「うん、買っといたよ」
「ついでにミラさんの服も買っといて」
「⋯⋯⋯え??」
「ミラさん。近藤さんが買ってくれるって」
「嬉しい!」
「え?え?」
よし、このまま買わせよう。
「あとで選ばせて!⋯ん??なにあれなにあれなにあれなにあれ!!?」
「ミ、ミラ?」
「ちょっとユウジさん!なにあれなにあれ!?」
おっと想像とは違う展開だぞ。サシャさんに叫ばれるよりはましだけど。
やたら興奮しているミラさんを、気になっていた原因であるメリーゴーランドに連れて行く。
「なにこれなにこれっ!!⋯⋯⋯あれ?馬と馬車??」
「そう見えますね。なんかぐるぐる回ってる??」
あれ?さっきまでとは打って変わって随分と冷静だな。
「これはメリーゴーランドって言うんだけど⋯」
「あ、なんかあれもぐるぐる回ってる!!」
メリーゴーランドには早くも興味をなくしたようで、隣で回っているコーヒーカップを気にしている。
「こ、こっちはコーヒーカップっていうんだけど、乗ってみる?」
「「乗ってみる!!」」
ちょっと狭いけど、三人で一つのカップに乗り込むと、音楽が鳴り始めてゆっくりと回り始めた。
「わわっ?!」
「ななななっ?!!」
「ここをこうするとまわる速度が⋯」
どうせだから、速度があがるように真ん中のハンドルを調整する。
「ちょ?!ちょ?!ちょ?!」
「⋯⋯ぐーるぐーるぐーるぐーる⋯⋯う⋯」
「二人とも大丈夫かな?!」
「⋯⋯む⋯⋯む⋯⋯」
「⋯⋯ぐる⋯⋯ぐる⋯⋯う⋯」
「もう少しだから!」
皆で耐えること二分間。コーヒーカップはゆっくりと止まった。⋯けど、二人はまともに立てなくなってしまったようだ。カップから出ようとしない。
「近藤さん!ちょっと!」
「グルグルグルグル⋯⋯」
「⋯⋯ぐらぐらします⋯」
近藤さんと一緒に二人を近くのベンチに座らせる。
「気持ち悪くなっちゃったかな⋯?」
「ちょっと⋯」
「落ち着くまで休んでよう」
「⋯あれは何かの拷問ですか?」
「そんなことないよ?!」
「⋯⋯ふー⋯ふー⋯」
ミラさんは喋らずにどっか一点を見つめている。
「ミ、ミラさん⋯?」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯あ、回復すれば⋯⋯」
時間がきたようで消えていった。
「ありゃ、時間か。あの調子だと戻ってくるかな」
「回復って言ってたし、治してくるんじゃない?」
「あ、そっか」
近藤さんが言った通りだったようで、少し離れたところから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「復活ですよっ!!ヒィーーーハァッ!!!遊びますよっ!!」
「なにあれなにあれなにあれ?!高くない?!早くない?!」
「うん、まぁ、そうだったね⋯」
騒ぐ二人をとりあえず回収し、ジェットコースターに乗せた後、黙らせ⋯じゃない、休ませる意味で観覧車に押し込んでおいた。サシャさんは渋っていたけど。
うん。限られた時間で遊ぶにはこんなもんだろ。




