33 くっついちゃった
都合良く爆発を起こせた為、自分の魔力はほぼ残っている。ダヌさんも結構残っているはず。魔物は半分近くまで減っている。倒した魔物が復活したり、何処かから追加されているような感じもしない。
これならなんと⋯⋯。いや、目の前に集中だ。
「なんとかなるんじゃないですか?」
「言っちゃった!?⋯そう思うけど、終わるまでそういうのは言わないでほしかったな」
「え、なんでですか?」
「もし!なんともならない状況になったら嫌だから!」
「えぇーー?なりますかねぇ?大丈夫じゃないですかぁ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
サシャさんにつられて楽観視したくなるけど我慢だ。ここでは何が起こるかわからないんだから。
「ダヌさん。さっきみたいに二人で攻撃しますか」
「お、やってみるか」
「貫通できるように槍のイメージで」
「よし、分かった!」
「できる限り、連続で攻撃しましょう!」
一気に消す爆発じみた事はもう出来ないけど、余裕があるうちに早く終わらせたい。貫通させたら複数は倒せるだろう。
「よし、やるか?!」
「やりましょう!」
『『炎』』
『炎』
『炎』
『炎』
『炎』⋯⋯
最初は二人で同時に放ったけど、あとは各自のタイミングで攻撃する。同じような形状はしているものの、ダヌさんの方が威力が強いようだ。一発で何体も倒せている。こういうのは経験の差からくるものだろうか。
スペース内にはシュッ!だったり、ジュッ!といった音が響く。たまに魔物の声も。そして少し焦げ臭い。
攻撃を続けて数分後、ほぼ全ての魔物を倒す事ができた。少し離れたところから魔法でという事もあり、攻撃をくらうこともなかった。このままの勢いで最後まで倒したいと思ったところで、残った数体の魔物がそれまでにない動きをし始めた。今までは単調にこちらに向かってくるだけだったのに、一箇所にまとまるような動きをし始めた。それに伴い、黒いモヤが今まで以上にあふれだす。
『炎』
まとまってくれるなら都合が良いけど、放っておくのはマズそうな気がしたので魔法を放つも、モヤで火が遮られてしまった。
「火が消えた?!」
そのままモヤは黒い丸のようなものになり魔物が覆われた。ダヌさんがもう一度炎を放つも、丸いの全体が燃えたと思ったらすぐ消えてしまった。
「⋯魔法、きいてないんだけど」
「あの丸いのなんでしょう?!」
十数秒後、丸いのがグニャっと歪んで崩れてなくなった。そこには自分達より少し大きなサイズの人型の魔物が現れた。人間と同じような見た目をしているが、よく見るとあちこちに獣っぽい見た目が残っている。
「あれ、合体しちゃった⋯の?」
その魔物は黒いモヤをオーラのようにまとい、こちらに向かって腕を構えた。
「⋯⋯⋯⋯▲▲」
言葉のような何かを発したと同時にスペース出入り口付近がドカンと音が鳴り壊れた。魔物はゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「⋯これってもしかしてヤバい?」
「さっきまで魔物こなかったけど、あれはきそうですよね?!」
「⋯⋯▲▲」
さっきと同じようなのが聞こえたと思ったら、足元の地面が槍のようになって向かってくる。あわてて避けるも、避けきれずにかすってしまう。
「っ!!いってーなぁ!!!」
「きゃ?!」
「おおおっ?!ッツッ!!」
「⋯⋯この盾、なんじゃぁ!こりゃあーー?!!」
おっと一人なんか違うのいる。久々に聞いた。⋯いや、それどころじゃない。痛いんだ。めっちゃ痛い。血が出てる。早く治さんと。あ、皆は大丈夫か?
ダヌさんとサシャさんも少し怪我をしている。ミラさんは盾で無事だったようだ。目の前に割れた土が落ちている。久々に聞いたミラさんの叫びは盾が丈夫だった事に対してだったのか。ミラさんの叫びポイントが分からない。
「ミラさん!回復してくれない?!」
「こんなに軽いのになんて丈夫な⋯⋯」
「ミラ?!聞いてる?!」
「⋯ん?あぁ、はいはい」
『回復』
少し投げやりに聞こえた回復だったけど、傷ついたところはちゃんと治っていく。
「今のは魔法かな?」
「なんかの能力なのは間違いないかと」
「そうだよね。⋯さっきは消えちゃったけど今度はどうかな」
『炎』
さっきまでと同じように槍のように出してみると、合体する前と違って避けられてしまった。何本かは当たったけど、すぐに消えてしまった。
「避けるようになってるし、当たっても効かないってか?!」
避けた勢いそのままに、腕を構えながらこっちに迎ってくる。急いで防御力上昇をかける。
『防御力上昇』
よし、さっきよりはましになるだろ。
「⋯⋯▲▲」
「またくるぞ?!」
「サシャさん!ミラさんの盾に!」
今度は砲丸のように固く丸められた土の塊が飛んできた。
『炎』
咄嗟にダヌさんが目の前に炎の壁をだしてくれた。壁と盾で少しは砲丸を防げたが、一部に人影が見える。
「っ!?まさか⋯」
この魔物には炎があまり効かないのか、炎の壁を突破してきた。
「⋯⋯▲▲」
「!?ヤバい、またくる!!」
「きゃー!!きゃー!?きゃー!!」
「みんな!私のとこに!!」
盾を持つミラさんが急に勇ましく見える。また飛んでくる土の砲丸を盾で防ぎつつ、炎で対処する。そろそろ盾も壊れそうだ。足元からの攻撃がまたきたらマズイ。
「炎があまりきいてませんね?!」
「そうだよね?!どうしよう?!」
「ユウジさん!他の使ったら?!」
「他の⋯⋯??⋯⋯⋯あー、鉄パイプ!?」
「⋯⋯え、鉄パイプ??水じゃなくて??」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯あーー!そっちね!!水ね!はいはいはいはい!!!」
どんだけ鉄パイプを信じていたんだろう。これまで使ってないのに。恥ずかしい。顔が熱い。
「んんっ?!回復かけますか?!顔が赤いですよ!?」
「いえ、結構です。大丈夫です」
気を取り直し、水をどうしたもんかと思ったけど、炎と同じように槍っぽくしてみる事にした。イメージがしやすい。
『水』
「⋯⋯!!?」
炎には大した反応を示さなかった魔物の動きが止まった。無表情に見えた顔にも焦りが見える気がする。
これはもしかして。
槍状の水が魔物を貫いていく。燃えるわけじゃないので分かりづらいけど効いているようだ。苦悶に満ちた表情になり動きが鈍くなった。
「⋯⋯▲▲ッ゛!!」
また足元から土の槍が出てくるけど、さっきかけた防御力上昇の効果を信じ、ダヌさんとミラさんに対処を任す。
「水ならいけそうですね?!」
「⋯⋯そうだね」
だからそういうのは言わないでほしい。同意するけども!⋯⋯さてと、一気にやるとしたら、でっかいの一発とかかな。⋯⋯⋯うん、それぐらいしか思いつかんわ。
魔物の上に大きい水の球をつくるイメージで魔法を放つ。
『水』
また避けようともがいているが、水の槍の影響であまり動けないようだ。今のうちにとっとと落ちてくれと願ったところで、魔物に落ちていく。
「⋯⋯⋯ヤ゛メ゛ッ゛!!!!?!!」
ッドンッ!!!!!
魔物に当たる直前、何か言ったように聞こえたけどなんだったのかわからない。
結構な水量だったようで、穴の空いた魔物は複数に千切れて動かなくなった。
「⋯⋯倒せたっ?!」
「もう!ビショビショですよ!お風呂!」
「魔物は?!」
「あぁ、盾が⋯⋯」
⋯⋯これ、ボス戦ってことだったのかな。なんかもらえないかなぁ。




