23 あげちゃう
異世界交流の経過はどうだろうか。あの聖女で大丈夫だったんだろうか?⋯⋯いろいろな意味で。
『ヒャアッッッハァーーー!!!!!!キタキタキターーーッッ!!!!』
「⋯⋯⋯やっちゃったかなー⋯⋯」
見るタイミングが悪いのか?それとも聖女の素がこれなのか?⋯⋯きっと素だろう。間違いない。
レベルアップすると、少しは滞在時間が延びる。それはステータスの確認をすればわかる事。⋯ただ、本当に少しの時間だから異世界交流の妨げになりそうな気がしている。
じゃあ、ユウジの時間を延長すればいい。
残念ながらそれは出来ない。前にも説明したが、能力を盛り込み過ぎて不可能。容量オーバーである。
じゃあ、どうするか?
普通にレベルアップ、能力追加をしてもらう。⋯ただ、その方法では寿命がくるまでにどれくらい時間を延ばせるだろうか。魔物退治にでも駆り出されれば余計に時間が足りない。魔物退治も交流の一環として間違いはないけれど。
という訳で、
「よし、あげちゃおうか」
もう何も追加する事ができないユウジにではなく、サシャに。
⋯⋯⋯いや、本当にやっちゃう?どうなるかな?⋯⋯やっぱりやめる?⋯⋯⋯⋯いやいや、交流の為には⋯⋯⋯⋯⋯。
「うん。あげちゃおう」
多少の奇行があるとしても、全体から見れば些細な事。付き合わされるメンバーには⋯⋯頑張ってほしい。うん。
よし。そうと決まれば神託でも下してみよう。
『聖女よ。ボタンをポチッと押しなさい』
ぽちっとして欲しいんだよ。
ーーーーー
「ボタン⋯ですか?」
突然の神託と同時に目の前にボタンが現れた。
これを押せっていうこと??押すとどうなるの??神託だし、押してみるけども。
「ポチッと押すってこうかな」
ぽちっとな。
ピンポン。
「え?⋯⋯⋯あっ⋯⋯!」
教会にいたはずなのに、村とは全く違う景色になった。直線的な高い建物や行き交う人々の姿は見たことがあるような景色だった。
⋯⋯この感覚とこの景色は⋯⋯⋯もしかしてニホンなんじゃない??!!
「⋯⋯⋯ヒャアッッッハァーーー!!!!!!キタキタキターーーッッ!!!!ニホーーーンヌッッ!!!!!」
ユウジさん抜きで!ニホンにきちゃった!!!神様!ありがとーーー!!!
神様への感謝の気持ちで少し落ち着き、周りがざわざわしている事に気づいた。不思議なものでも見ているような視線も感じる。
「コスプレ?」
「外国人?」
「なんか叫んだ?」
「警察呼ぶ?」
「あ⋯⋯」
やっちゃったかなー⋯⋯。ユウジさん、どこー?
ーーーーー
コンビニ飯ばかりではなく、たまには外食をと昼休憩は外に出ることにした。まぁ、料金が安めの牛丼のチェーン店に行く程度だけど、温かいご飯が食べたい。
目的の店が見えたあたりで奇声が聞こえた。その奇声には聞き覚えがあるよう気がしたが、ここでは聞くはずのない人の声だ。
あんな人⋯⋯⋯まぁ、こっちでもいるんだろうな。
どの世界にも変な人はいるだろう。こっちの奇声の主はどんな人かとチラ見をして通り過ぎるつもりだったが、思わず二度見して立ち止まってしまった。
!?おいおいおいおい!見たことあるぞ!?
今まで仕事だったから、もちろんボタンは押していない。なんならボタンは家にある。それなのに連れてきてもいないその人、サシャさんが何故かそこにいた。そして、いつもの聖女の格好で叫んでた。
⋯うん。残念ながら、間違いなく本人だ。
周りからはコスプレ?とか言っているのが聞こえる。当の本人は奇声を発しなくなったようだが、挙動不審になっている。
⋯⋯これ、どうすんの?
仮にいつもの移動能力だとすれば、十分経てば戻るだろう。だから見て見ぬふりをして店に入れば、昼食をとる事はできる。サシャさんの表情を見るに、好奇心たっぷりで恐怖などの感情は見えない。⋯となれば、放っておくのもアリだと思ったのだが。
「あ!ユウジさん、いた!」
はい。見つかってしまいました。サシャさんは勢いよくこちらに駆け寄ってくる。もう逃げ場なしだ。
「やっぱり、サシャさんだよね?どうしてここに?」
「えーと、神託?」
「と、とりあえず向こうに行こうか」
サシャさんが来ると同時に周りの視線も集まってきてしまった。この場を離れる為、手をとって歩き出す。サシャさんは常に周りを舐めるように見ている。
「ニホンの町はこうなってるんですねぇ」
「そうだよ。タイミングのいい時に、あげた服を着て来てもらおうと思ってたんだけどねぇ」
「来ちゃいましたねぇ」
「神託って?どういう事?」
「それはですねぇ、⋯あ、教会」
時間だったようで見覚えのある教会の景色に変わった。
「⋯これって、俺の能力と同じって事だよね?」
「えーと⋯⋯多分?あ、状態を見てみましょう」
『状態』
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サシャ
職業 聖女
位階 六
体力 満
魔力 満
能力 聖魔法
世界移動 十分間
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「あ、世界移動についてた仮がなくなってる。私の能力として追加されたって事かな?」
「⋯っぽいね。あ、神託って何?」
「ポチッと押しなさいっ神託と同時にボタンが現れたんです」
「ぽちっと、ボタン⋯⋯」
状態に出ている表示は同じ。くっついていると一緒に移動するのも同じ。それにボタン。⋯うん、もう完全に同じ能力だろう。でも、どうして??
「いやー、ユウジさんが来ないとニホンに行けないって思ってたから、いいタイミングです!神様!ありがとーーー!!!」
え、神様ってそんな個人の要望叶えるの?!さすがに偶然だろ?!
「⋯⋯それは良かったね」
「んん?ユウジさん、どうしました?これで私に会える時間が増えましたよーー??」
「そうだね。頭が痛くなりそうだよ⋯」
「おやおや?じゃあ回復しないといけませんね!」
「⋯⋯まだ、大丈夫かな。必要な時は自分で回復するよ」
「そうでした!回復使えますもんねー!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
昼飯を食べていない空腹のせいなのか、渾身のドヤ顔のせいなのか、なんか腹が立つ。どうしてくれよう。
「今後が心配だわ⋯⋯」
とりあえず、昼飯どうしよう⋯⋯。
ーーーーー
「良かった。ちゃんと移動能力を使えたみたいだね」
ユウジともすぐ合流できたみたいだし良かった。⋯⋯⋯⋯⋯良かった⋯よね?
『ヒャアッッッハァーーー!!!!!!キタキタキターーーッッ!!!!』
⋯⋯⋯⋯良かった、はず。




