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カスタム? やりすぎじゃないの?

1号店は大盛況!

 1号店の開店セールは、予想を遥かに上回る来店があった。用意した商品が、午前中で無くなる事態も発生。嬉しい悲鳴も上がったが、流石にお客様に申し訳ない。


「ちょっと男子! 急いでね!」


「はいはい。分かってまんがな!」


 安田店長の檄が飛んでいる。予想外に無くなる商品の補充は、男性社員が担当だ。新たに雇い入れた街の男達も連れて、田村が倉庫へ走る。売れる時に捌くのも、うちの商売のやり方だ。売れ筋を見ていると食器類の他に、石鹸や歯ブラシなんかも売れていた。露店での商売が実を結んでいたようだ。そして今回から販売している絵本も、既に売り切れだ。子供の居る家庭だけでなく、大人達も興味津々だ。童話以外に、文字の勉強も出来る本を書いたんだ。この街には学校が無いので、読み書きが出来ない人も多くいるんだ。


「本は在庫大丈夫なの? もう品切れだと暴動が起きそうなんだけど?」


「静香さん。今、会社のコピ-機で印刷中です。流石に書く時間ないので」


「愛は抜け目ないわね。でもインクは大丈夫なの? 切れたら補充出来無いよ?」


「そうなんですよね。花から採れないか、品質管理部が研究してるみたいなんですが」


「そこは任せるしかなさそうね。うちの品管なら大丈夫でしょ♪」


「ですよね! なんて言ったって、あの品管ですから」


 品質管理部門は、社員から絶大な信用を得ている。研究するだけでなく、最適な物を選ぶ集団なんだ。その代わり、書類不備には滅法うるさいのだが。




◇◇◇



 忙しい1日を過ごし帰って来た社員に、工場へ集まるように連絡があった。とうとう馬車が完成したようだ。工場の職人が一体どんな馬車を作ったのだろうか? 疲れてはいたが、楽しみにしていた社員は多い。既に工場の前には人だかりが出来ていた。そこにやって来た蓮見が声を掛ける。


「皆、お疲れの所すまない。全員が集まれる時間が限られているから、勘弁してくれ。早速だが来栖頼んだ」


「はい。そしたら今から馬車を出す。各自順番に見て回ってくれ。説明は随時行うからな」


 来栖の言葉と同時に、スポットライトが工場を照らす。2頭の馬に繋がれた馬車が、ゆっくりと出て来た。どんな豪華な馬車が出て来るのか? 皆が息をのんでいたのだが、見た目は普通の馬車のようだ。


「なぁ、速水。なんかこう普通やなぁ」


「今の所、変わった様子は無い―――ってなんだ? 窓があるな」


「ホンマや! ガラス入っとるで!」


 そうなんだ。出て来た馬車の側面にガラス窓が付いている。危なくないのか?


「皆、窓にガラス入ってるだろ? これで不安は無いか?」


「来栖さん! ガラスって危なくないですか? この前も襲われたって言ってましたよね?」


「ふふふ。そう言うだろうな。しかしちょっと見てろ」


 周りに居た職人の1人が、手に持った石を窓に向かって投げた。


「キャ! あぶない!」「ちょっと何するの!」「うわ-! 割れちまう!」


 社員からの悲鳴が起きたが、窓ガラスが割れる事は無かった。まさか強化ガラスなのか?


「びっくりしたか? 何人かは分かるだろうが、これは強化ガラスだ。そしてこのガラスはそれだけじゃない。3層構造で出来ている。ガラスの間に木質タ-ルを入れる事で、より強固な物が出来た」


 おいおい。まさかのペアガラスだよ。強化ガラスも万能じゃないが、その構造なら割れても破片が散らばらない。通常、強化ガラスは粒になって四散するが、間の木質タ-ルが接着剤になって散らばらない。更に3層なら弓の矢も通さないだろう。


「ちなみにこの窓は、開ける事も出来る。その場合は内側にこれだ」


 そう言って窓を開ける。滑り出し窓のようだ。更に気になるのは、窓の上部にある物。


「気づいていると思うが、シャッタ-付きだ。有事の際は閉める事で身を守る。そして外からではわからないが、壁面には鉄板が入っている。矢も貫通しないし、燃えない工夫もしてあるんだ」


 おいおい。何処の装甲車だよ? 来栖さんが中に入ったので見に行くと、中は広々とした空間で明るい。置いてあるソファ-も、座り心地良さそうだ。しかも天窓? 何のこだわり何だこれ?


「そしてもう1つサプライズだ。水流を利用した冷蔵庫完備。食品なども移動中に入れることが出来る」


 ああ。これは完全に趣味に走ったな。そう言えば工場の職人さん達、キャンプ好きだったわ。馬車じゃなくて、キャンピングカ-だったよ。それから構造の話に移ったんだが、木製の外部にも耐熱用の塗料が塗ってあり、火災に対応している。そして枠組みは軽い鉄。側面と底の部分にも鉄板が使われている。軽量化を図る為、頑丈で薄くするのに苦労したらしい。社員がグル-プ単位で乗り心地を確かめたんだが、揺れもほとんど感じなかった。まぁ街道は凸凹なので、今よりは揺れるだろうけど。職人の本気を感じる馬車だったよ。


 これって技術の無駄使いだよね? 妥協しないってこういう事なんだろうか? そんな風に思ったが、安全で快適に勝る物は無いのだろう。馬車が完成した事により、メルボンヌの街への日程を決める事になる。


 果たして残っている遺物とは何だろう......。

因みにシャッタ-は、内部から上げ下げする事が出来る。ハンドルを回す事で上下するんだって。

「電動は無理だったごめん」と来栖が言ってました。次はやっと決まったメルボンヌへの遠征。

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