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過去の転移者の謎~後編

過去の転移者の行った事と歴史に共通点はあるのか?

 転移者と思われる人間は、50年単位で突然現れていた。俺と田村、中村さんと花崎さんでこの事について考えてみた。かなり古い文献もあったので、50年単位というのも正確な情報とは言えないのだが。


「なぁ、速水。書かれてた文献の名前は、間違いなく日本人やろ?」


「まぁ、間違いないだろうな。それも比較的農業関係の知識を持った人が多い」


「そうね。私も調べていて思ったわ。ただ内容が部分的過ぎてわからないわ」


「静香もそう思ったんだ。井戸を掘っただけで、水源の確保? それにこの時水源が不足していたのかしらね?」


「花崎さん、俺もそれを考えました。まさか1か所じゃないだろうし、どうやって地下水脈を調べてたのかも気になりますね」


「魔法でドカンと穴掘って出て来たとかやったら、夢あるんやけどなぁ」


「それは無いんじゃない? それなら私達だって魔法使いたいよ」


「あはは、そうだねぇ。異世界っていうなら何か特別な力とか欲しかったかも」


「多分、一度水が出たところを中心に掘ったんでしょうね。夢が無いけど」


 そんな話を4人でしていると、歴史を調べていた倉木さんと安田さんがやって来た。


「お疲れ様。こっちも可能な範囲で調べました。と言っても大陸中の情報が多くて纏めきれていませんが」


「気になった記述を纏めてみたんで、見てもらえます?」


 そう言って見せられたメモには、今いる国のある大陸が、”ファレスフィナ大陸”と言う名前である事。この大陸には24の国があって、過去には戦争もあった事。この国が周辺6か国と同盟関係にある事等が書いてあり、50年から100年の単位で地震と思われる大きな揺れが発生している事がわかったようだ。俺達が注目したのは、その揺れの事だ。


「揺れがあった年代と転移者が現れた年代は、概ねあってるわね。でも100年って時もあったのよね?」


「その事なんですけど戦争中の記述が抜けてるので、はっきりとは解りませんでした。」


 花崎さんの質問に答えた倉木さんは、戦争中にもあったんじゃないかと推測していた。俺や田村もその考えに同意だ。あくまでも不確かな情報なので、確信とまではいかないのだが。


「そう言えば私達って会社の敷地ごと、この世界に来たわけだけど日本ではどうなってるのかしらね?」


「安田さん、ワイもそれ思いましたがな。すっぽり穴でも空いてるんやないかなと」


「もしそうなってたら、大きな事件になってるかも」


「家族や友達もきっと心配してるよね」「私もお母さんが心配だわ」


 俺は皆の話を聞いて。田舎の両親を思い出した。ニュ-スになってたら心配してるだろうなと。


「はいはい。それは今考えても仕方がないわ。私達は何としても帰るんだから!」


「花崎さんは、元気ですね。確かに今は原因の究明と、帰還方法を調べる事が優先ですね」


「速水君と千鶴の言う通りね。それなら一番直近のタオカさんについて調べる事が、近道じゃない?」


「せやな。公爵はんに早う調べてもらおうやないか」「「さんせ-い」」


 司書のユリアナさんに揺れについての詳しい文献が無いか? 聞いてみたんだが、すぐには調べられないとの事だったので、連絡をもらえるようにお願いして一度男爵の屋敷に帰る事にした。男爵を通り越していきなり公爵様にお願いは出来ないだろうし。



◇◇◇



 ライアン男爵の屋敷に帰った俺達は、調べた事について男爵と話をし、例のハ-メリック帝国に現れたユキナリ・タオカと言う人物について、公爵様に調べて貰えるようにお願いした。


「なるほどな、確かに君達と関りがある可能性が高いな。わかった。公爵様に書状を書くよ」


「ありがとうございます。それとこの大陸であった揺れについては、ご存じ無いですか?」


「私も君達が現れた時の揺れしか、体験していないのでな。それ以前は解らない」


「そうですか。何か情報があればお願いします。後、図書館から揺れの事で連絡があれば教えてください」


「わかった。とりあえず疲れただろう。ゆっくり休むといい」


 思わぬ発見があった事は嬉しいが、はっきりした情報が無いと徒労感が大きい。男爵との相談の結果、図書館で調べて貰っている揺れに関する文献の話が終わった段階で、グランベルクの街に帰る事になった。公爵への提案の話もすぐには進まないだろうし、何より残った会社の皆が心配しているはずだ。それから2日程して図書館からの連絡が入った。




◇◇◇


 


 俺達は、王立図書館に向かった。到着すると既に連絡が入っていたようで、すぐに中に入れてもらった。


「遅くなってすみません。古い資料もありましたので」


「ユリアナさんにご迷惑をお掛けしました。それでは拝見させていただきます」


「こちらも仕事ですから。ごゆっくりどうぞ」


 集めてもらった文献によると揺れが発生した時、俺達と同じように奇妙な建物も現れた事が書いてあった。木で出来た住居の様な絵が描いてあり、その姿は日本家屋のように見える。


「これで決まりやろ? どう見ても日本の家やでこれ!」


「そうだな。全ての文献に描かれている訳ではないが、間違いないだろうな」


 どうやらこの世界にやって来た日本人と思われる人達は、家ごとこちらに来ていたようだ。その後、その家はどうなったんだろう? また気になる事が増えた。もう少し色々な情報が欲しいところだが、帰って会社の皆に調べた事を伝えよう。他の意見も聞いてみたい。

 


 それから2日後、グランベルクの街に帰る事になった。

 


分かった事は多くなかったが、一つの希望もあった。とりあえず帰ろう。皆の元へ。

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