エピローグ
英雄譚の最後は『英雄』の死によって終幕する。
残ったものは日常の風景。
なによりも尊い、世界の当たり前の物語。
白い部屋で、少女はその光景を愛しげに眺めていた。
それこそが、己の望む全てだと。
「『英雄』を打ち倒せるのは『英雄』しかいない」
ならば、誰が『英雄』を討伐してもこの地には新たな『英雄』が生まれることになる。
そしてその『英雄』は新たな『英雄に』……
それは子供でも理解が出来る輪廻の輪だ。
「ですが、あの二人なら大丈夫でしょう」
名も無き誰かのためではなく、お互いのための『英雄』である二人。
ただ一人のために力を使える、当たり前の勇気を持った二人。
「走り出そうとも傍に誰かがいるのなら、道を見失うことなどない」
道を踏み外せば、そばにいる相手が引き止めてくれる。
道を見失えば、そばにいる相手が手を引いてくれる。
白い世界で、少女は笑う。
童女のように、少女のように、王女のように。
「平和な世界に『英雄』は不要な存在です」
だからあの二人はただの人として、幸せに生きるのだろう。
あたりまえの幸せを謳歌して、あたりまえの幸福を手にして。
それは英雄譚には記されない退屈で平凡な物語。
激動の変革や艱難辛苦とは程遠い、ありふれた日常。
だが、それは決してつまらない物語などではない。
なぜならそれこそが、彼らの望んだ全てなのだから。
この物語は、これからも続いていく。
確実に言えるのは、この物語は幸せな終わりを迎えるということだ。
こうして、英雄譚は完結する。
その後の話は、もはや語るまでもないだろう。




