16話 Take2
オサムは買い物に出かけようと服を着ようとしたが腕がシャツの袖を通らない。
「え?」と自分の体を見てみた。すると鍛え上げられた肉体になっていた。
「なんだこれ?」
一晩でとんでもなく筋肉量が増えている。元々筋肉質だったがそれでもこれ程ではない。
原因をあれこれと考えたが心当たりはない、何が有ったのだろうか?
考えるだけ考えて答えが出なければその状況に順応するだけだ。
「まいっか、考えても仕方ねーし、服でも買いに行こう」と外に出た。
バイクも持ち上げられる程の力が有った。
「力が強くなってる?便利だ、けど服が居る」
オサムは買い物に出かけた。
1年程海外で暮らし、最終的にはアメリカで働こうと考えていたため、
まずはオーストラリア行きの航空チケットを予約していた。
部屋は今月いっぱいで引き払い、家具や電化製品は友人に譲ることにしていた。
残高400万円と少し外貨口座に残っていたが、カード決済するために100万だけ使って旅行の準備をしている。
部屋も退去を済ませ、明日は南行きの飛行機で出発するだけとなった。
海外へ行く日になり、これからの事を楽しみに南へ向かっている途中
飛行機の窓から外を眺めてると、突然エンジンから煙が出て火を吹いた。
「うわ!」驚くと他の客も見ていたのか気がついたのか
「エンジンから火が出てるぞ!」
「右も左もだ!!」
「太平洋の真上だぞ?」
「きゃああああああああ!」
等々阿鼻叫喚の嵐が機内に吹き荒れた
その様子を見ながら冷静になり
『あーあ、俺の人生これで終わりか、思ってたより短かかったな』
オサムは慌てず騒がず窓の外で火を噴くエンジンを見ていた。
どうしようもないことで慌ててもしようがない、それに死は突然やって来ることを両親の事で学んでいる。
オサムは諦めることにした。
飛行機は操縦不能になったのか真っ逆さまに海へと突っ込んだ。
「秋葉オサムよ、目覚めよ」
その声でオサムは目を覚ました。
キョロキョロと見回すと、クリスタルで出来たかのような神殿だった。
『病院じゃねーな、絶対。とりあえず聞いてみるか』
オサムは近くの祭壇の向こう側に居る美しい女性に話しかけた。
「ここはどこでしょうか?」
夢なら自分の知らない事は言われないはずである。
その女性は
「グランパープル聖国、お前は長い時間この世界に居た」
その答えにオサムは疑問を持った。
グランパープル聖国という単語はオサムの記憶にはない。ゆえにこれは夢ではない可能性が高い。
「バチカンじゃねーな、グランパープル?なぜ言葉が通じる?」
オサムはそう言いながら脳をフル回転させて状況把握に努めた。
一番簡単な答えは”天国”とか言う場所だ。
しかし「長い時間この世界に居た」と言ったな。
ということは空間の歪みに迷い込んで時空連続体を超えた?アニメの見過ぎか?だが何故記憶がない?
まだ材料が少なすぎる。結論は持ち越そう。
「その言葉が嘘ではないと言う証明はできますか?あなたは誰ですか?名前は?」
オサムは女性に訊ねた。
「証明は出来ぬ、お前は自らこの世界の記憶を消して去った。そして私に名は無い、守護者と呼ばれている」
守護者はそう言うが
「何故俺がそんなことをする必要が?何か有ったことだけは理解しています」
オサムは自分の体の異変のことを言っていた。
「お前は神々の一人となったが、永遠の命を嘆いて死を選んだ、そしてこの世界を去った」
守護者は事実を述べたがオサムは疑問が解消されない限りはあらゆる可能性を探る。
「俺が神に?普通の人間ですよ?永遠の命を捨てて去った?それも考えにくいことですね」
古来より人は永遠の命を得るためには何でもしてきた、その権利を得て捨てるわけがない。
ましてや神になった者がその地位を嘆く訳がない。
ただの一般人で、自由人であるオサムは神や不死には興味はないが、もしそう成れれば自分はどう考えるだろうか?
美女に囲まれた豪勢な生活、世界から貧困をなくす、世界を手に入れる?何故自分はそうしなかった?
「自ら消した記憶はこの世界に居ればいつか戻る、それまで世界を回れ」
「お前以外にも選ばれ此の世界に迷い込んだ者が居た。その者は悪しき者ゆえに今は朽ちていようが」
『この口調からすると、自分以外にも誰かが居る。そういうことだな?朽ちているということは死んでるか』
オサムは納得が行かなかったが、騙されるのもいいか。と考えた。
「では世界を回りましょう。歩いてですか?荷物を失くしたみたいでどうすることも出来ませんが」
オサムが辺りや自分を見て気がついた。服がボロボロになっている、焦げた後もある。
完全に飛行機事故の被害者に違いないと思わせるような格好だ。
「荷物は預かっておる」
守護者が言うと、妙に儀式張った男が一人オサムのリュックを持ってきた。
「あとはお前がこの世界を去る前に持っていたものだ」
と言うと、何やら真っ黒な甲冑と3本の剣を持ってきた。1本は短剣で1本は柄まで入れると2メートルを軽く超える。
それに革で出来た使いやすそうだが古めかしいデザインのバッグやポーチ。
オサムは「コスプレか?」と思ったが、どうやら違うようだ。
鎧も剣もかなり重い。鉄でできていてもこんなに重いはずがない。
しかし、オサムは持ち上げることが出来た。
ベルトに通された4つのポーチを開けると金貨や青銅貨が入っていた。
大きめのウエストバッグにも革袋や銀貨、他にも何やらいろんなものが入っていた。
金貨を取り出してみたがいくらでも出てくる。物理的に不可能な量だ。
「その中には金貨が1億枚、銀貨や青銅貨などが30億枚入っている」
守護者がオサムに伝えた。
『まぁ嘘だな、しかし1000枚は入ってるな、どういう仕組みかわからないが』
オサムは金貨を元に戻して、床に置いた。
「そしてそれをお前は付けておかねばならない」
そう言われた瞬間に左腕に腕輪を付けられた。真っ黒な腕輪だ。
「何をするんですか!」外そうとしたが外れない。
他にも首に架けられていたペンダントを外され、その腕輪にはめ込まれた。
「これも肌身離さず付けておけ、グランパープル聖国の守護者の印だ。魔法印も体に刻んだが」
ペンダントを渡されたので首にかけた。
「ハイドステータスの腕輪とエンフォーセ、この世界で生きるために必要なもの」
「服と甲冑も着てみよ。剣とベルトも忘れるな」
そう言って勝手にオサムを着替えさせた。しかし、あつらえたかのようにしっくり来る。
オサムは、こうなったら抵抗しても無駄だな。と考えて好きなようにさせた。
「そして、このリーファの笛を渡しておく」
守護者が不思議な形の笛をオサムに直接渡した。
「外に出て使ってみよ」と言われたので首にかけて鎧と胸の間に下げた。
兜を付けて、言われたとおりにやってみよう。
何が起きるのかわからないが、世界を回ろうとしてた矢先の事だ、別にかまわない。
オサムは外に出てその笛を吹いてみた。
すると空からペガサスが降りてきた。
いや、ペガサスではない、角がある。しかも全身が青くぼんやり光っている。
「リーファ?そんな幻獣居たか?」オサムがつぶやくと「乗れ」と言われた気がした。
「お前、言葉が分かるのか?」オサムがリーファに話しかけるとリーファは頷いた。
「分かった、乗るよ」オサムはリーファに乗った。
ゆっくりと舞い上がり空を飛んだ。
「おぉぅ、こりゃすげぇ、しかしどこに連れて行く気だ?」
オサムの言葉に返答はなかった。
暫く飛ぶと大きな陸地が見えた。
下を見ると中世の城が見えた。
「ヨーロッパか、人の姿も見えるな。あそこに下ろしてくれるか?」
オサムがリーファに言ったが無視された。
そしてどんどん飛ぶと幾つもの城の上を飛び、小さな城の外に降りた。
「ここに入れってことか?」しかしリーファは動かない。
オサムはリーファから降りて、門の方に歩いていくとリーファは飛び去った。
「え!?あれ?どういうこと?」
オサムは置いてけぼりを食らった。
今までに起きたことを順番に並べることにした。
まずは飛行機事故。そして神殿。甲冑や剣に金貨や銀貨、そしてリーファ。
これが現実ならここは異世界だ。ということは、この門の中は中世の都市が広がっている。恐らく城塞都市と呼ばれるものだろう。
ならば考えても仕方がない。オサムは腹を決めた。
門の前まで歩くと、上から
「何者だ!冒険者だな?ん?冒険者ではないな?」と言われたので
「えーと、俺は秋葉オサムといいます。グランパープルという国からペガサスみたいなリーファと言う馬に乗って来ました」
オサムの脳はフル回転中だった。何もわからない。言って良いことなのかもわからないが、相当なギャップが有るだろう。
「グランパープル聖国から?リーファ?使者か?」そう言われたが、そもそもがわからない。
オサムはハッタリを使うことにした。しかし出来るだけ嘘は避ける必要がある。
「そうです、城主に会うために来ました。極秘で用があります。急用なので遣わされました」
「少し待っていて下さい」と中世の甲冑姿の男が姿を消し、門が開き始めた。
オサムは門を通り町並みを見てみた。完全に自分のやっていたRPG、中世の世界である。
「ありがとうございます。それで、城は」と正面と見ると小高い丘に城が建っていた。
「では、このまま歩いて行きますので、ご苦労様です」オサムはまっすぐ歩き出した。
『完全に中世だな、十字軍くらいの時代か?町並みや人も、セットじゃないよな』
実際に空を飛んできたのであるから、タイムスリップじゃない、異世界だとオサムは考え出していた。
一応門の中には入れた。あとはどうするかだがプランは全く無い。
金は有るので街の中なら不便はしないだろう。
オサムは丘の方を見上げ
「となるとあの城は王様が住んでる城か。小さい国だな。まずは服屋と宿屋を探すか」
カシャカシャと歩いていると服屋を見つけた。さして広くないと思ったが歩いてみると案外規模の大きな街だ。
「こんにちは、どなたか居ませんか?」オサムが呼ぶと奥から男が出てきた。
「えー、いらっしゃいませ。ウチは服屋ですが?」
店主らしき男が言うと
「そうそう、服が欲しいんだ。鎧しか持って無くて」
オサムが兜を取って
「サイズとか適当でいいんだけどすぐに着れる服あるかな?」店主に言うと
店主は
「ありますが、着てみますか?」とだけ言った。
「少し体が大きいので、できれは3L位がいいんだけど」
オサムがそう言うと、店主は首を傾げて「3Lですか?わかりませんが持ってきます」
そう言って奥から持ってきた。
やはりTシャツやジーンズは無い。スーツも無いようだがシャツや乗馬ズボンのようなものが多い。
オサムが
「悪いけどこの鎧を脱ぐの手伝ってくれるかな?どう脱げば良いのかわかんなくて」
そう言って悪戦苦闘していた。
店主が鎧の両脇の固定ベルトを外すと前後に分かれるようだ。
まずはガントレットを外して上の鎧を脱いだ。次に脚や腰の鎧を外すと完全に脱ぐことが出来た。
鎧の下は綿の入った絹の服だった。
「え?お客さん、それ絹ですか?」と驚かれたが、オサムにはわからない。
「うん、そうだね、鎧の下は蒸れるから」と、とっさに口から出た。
店主はオサムをジロジロ見ながらも
「色々持ってきましたんで、着てみて下さい」と薦められるままに5着買った。
「えーと、いくらになるかな?」オサムが値段を尋ねると
「銀貨3枚と青銅貨50枚になります」店主が言うので、オサムはポーチから銀貨と青銅貨をカウンターに置いた。
店主は青銅貨を見て「どこの国から来ました?こんな精巧なコインは見たことが有りませんが」
「他にお持ちのコインは有りますか?見てみたいです」
そう言われてオサムは
「グランパープルからですが、他には金貨と白銅貨、黄銅貨があります」と手持ちのコインを出していった。
全て鍛造製で鋳造製の銀貨とは明らかに技術が違うように思えた。
「ほう、どう作っているのかはわかりませんが素晴らしいコインですね、グランパープル聖国から。わかりました」
オサムは出したコインをポーチに入れ、服をバッグに入れるとすんなりと5着入ってしまった。
「え?何だこのバッグ?」底無しなのかもしれないが、もう何が有っても驚くことはない。何かの仕掛けが有るのだろう。
「あと、宿屋って何処かありますか?」
尋ねると店主は
「えーと宿屋はですね、この道を城に向かって行った左側にあります。道路を挟んで武器屋と鍛冶屋があるのでわかると思いますよ」
「他にも城近くには宿屋は多いですが、一番近いところは今言った場所です」
そう言われてオサムは鎧の中にウエストポーチと武器以外を詰めて店を出ていった。
宿屋に到着すると
「1ヶ月ほど泊まりたいんだけど、部屋開いてるかな?」と訊いて
「2階の一番奥が空いてるよ、1ヶ月で青銅貨90枚だけどいいかい?」と言われ、青銅貨を払った。
オサムは部屋に着くと鎧架けが有ったのでそこに掛けようとしたが、余りにも重すぎるため壊れるだろうと床に置いた。
ボロボロになってしまった服はポケットの物を全部ポーチに移してゴミ箱に放り込んだ。
幸い近くに食堂が有ったので1週間程度、慣れるまで食事以外殆ど宿屋から出ないことにした。
知らない街では何が起きるかわからない。窓から行き交う人々を見ても剣を持ってる人間が多い。
用心のために巨大な剣でドアが開かないようにし、短剣を付けたまま寝た。
リュックに入れていたものはバッグに入ったのでリュックも捨てた。
買った服もだが、バッグの口を通るものなら何もかも入る。
金貨や黄銅貨、白銅貨も使わないようなのでポーチごと入れた。銀貨と青銅貨だけで十分なようだ。
コインの入ったポーチがもう一つバッグに入っていたので中身を見てみると小さな銀貨だった。恐らく少額貨幣だろう。
一度、ポーチの中の金貨はどのくらい入ってるのか確かめようとしたが永遠に出てくるので全部戻して銀貨と青銅貨のポーチもバッグに入れた。
これで荷物になるようなものはない。
どうやらオサムはこの世界ではかなりの金持ちのようだ。
金貨1億枚と銀貨などが30億枚というのも本当かもしれない。
何百兆円になるのか見当もつかなかった。
オサムは、街を歩くためには巨大な剣はともかく腰の剣も少し大げさな気がしたので目の前の武器屋に入った。
そこには色んな剣や斧、メイスなどが飾られていた。
ゲーム好きのオサムには素晴らしいとしか言いようのない店で、じっと見ていると店主が怪訝な目でオサムを見ていた。
「あんちゃん、あんた冒険者じゃないだろ?扱えるのはレイピアかサーベルくらいだよ」
店主にそう言われて
「え?わかるの?」じゃあ、と言って腰の剣を見せた「これは扱えるんだけど、どうかな?」
すると店主は
「へ?!なんじゃこりゃあ!」と驚いた。
「あんちゃんこれを扱えるのか?」と訊いてきたので
オサムは不思議に思いながらも
「うん、そうだね、あ、そうだ、ちょっと待ってて」と言って宿屋の部屋に戻った。
オサムは鎧を着込み、兜だけは手で持ってウエストバッグを付け、巨大な剣を背中に、ベルトに剣と短剣全てを装備して店に戻った。
店に入り
「これが俺の装備なんだけど、特にこの大きな剣」
と軽々引き抜き店主に見せた。それに短剣も。
店主は
「あんちゃん一体何者だ?その短剣も含めて扱える人間は世界中どこ探しても居ないぞ」そう言われたが扱えるのである。
「じゃあ俺はなんでも扱えるってことかな?そこの後ろに飾ってある刀が欲しいんだけど」
オサムは丁度いいサイズの刀を指差した。
店主はその刀を手に取り「ちょっと裏まで来てくれるか、とオサムを店の裏に連れて行った。
そこはかなり広い部屋になっており、天井も高い。
「じゃあこの刀でその立ててある丸太を斬れるかやってくれ」店主にそう言われて刀を渡された。
「丸太なんて斬れるかな?まぁいいや、やってみるよ」と言って何故か居合の構えをとった。
オサムは意識していなかったが渡された瞬間にベルトに差し、精神を集中した。
それは一瞬だった。
オサムは軽く抜いただけだったが、丸太が斜めにずれて落ちた。
「あ、斬れたね、これって扱えるってことかな?」店主に言うと
「扱えるなんてもんじゃねぇよ、達人だよあんた」と言い返された。
「んー、なんだかわからないけどグランパープルで色々有ってね」そう言いかけた時に
店主が遮るように
「あんちゃんならウチの店にあるもの全部扱えるな、好きなの選んでくれや、この部屋には魔剣の類もかなり置いてある」
そう言われてズラッと剣が並んだ場所に連れて行かれた。
「好きなのを。表に飾ってある普通の剣だと多分壊れちまう」店主は言った。
「じゃあこの刀と、軽くて丈夫なの選んでくれるかな?何か良い物」
オサムには多すぎてわからなかった。
「そうだな、ウチで一番上等なのはこっちの刀だな、あとはこの剣、軽いがよく切れる、どちらも魔剣だがな」
店主にそう言われたので「じゃ、その2本貰うよ、いくらになるかな?」オサムが言うと
「おいおい、この2本だと銀貨3000枚になっちまうぞ?金貨なら60枚だ」
オサムは「あ、金貨でもいいのか」とウエストバッグからポーチを出して金貨60枚カウンターに置いた。
ついでに短剣と腰に付けていた剣も放り込んだ。
「え?それはマジックバッグ?」店主は言ったがオサムにはなんのことかわからなかった。
「これでいいかな?代金」オサムは何の気無しに言ったが店主は驚いていた。
「この金貨は?精巧すぎる、けど偽物じゃないな」そう言われたので
オサムは
「グランパープルで俺のだと言われて渡されたんだけど、偽物じゃないよ、俺調べたから」
「じゃあ、この2本持って帰るね」と兜を付けて店を出た時に行列に出くわした。
かなり長い行列だが豪華な甲冑の騎士も居る。恐らくここの王か誰かの帰りなんだろう。
これでは宿屋に行けない、通り過ぎるまで待つことにした。
「やっぱりこれは王様の行列だな」刀と剣を片手ずつに持ってぼーっと待っていると
突然「止まれ!」と行列が止まった。
どうやら王様がオサムのことを見ているようだった。
「おい、そこのお前、冒険者でも無いのに何だその装備は?」と王様らしき人に直接訊かれた。
「えーと、この剣ですか?今買ったばかりなんですが、その」とオサムが言おうとした時に店主が飛び出してきて
「伯爵様、この人はこの2本どちらも扱えますんで買っていただきました。騎士レベル95の剣ですが」店主が説明してくれた。
「ありがとう、俺わかんなくて、伯爵様?」
「レベル95の騎士だと?兜を取れ」と言われたのでベルトに両手の刀を差して兜を取った。
「まだ若いな、どこから来た?」と伯爵に言われ
「グランパープルと言う国からです。リーファに乗って来ました」と答えた。
「ほう。城まで付いてこい」伯爵は自分のことが気になるのだろうか、宿屋に荷物もないし、と付いていくことにした。
歩いている途中で両腰の刀と剣もバッグの中に突っ込んだ。
城に着くとオサムは3人の騎士と一緒に伯爵の執務室に入れられた。
強そうな男性騎士と女性騎士だった。
背中の巨大な剣と兜を取って椅子に座らされた。
「お前は何者だ?グランパープルから来たと言っていたが」
じっくりと見られながら
「あ、そうそう、守護者の印とか言うものを持っています」首から下げたペンダントを出して
「これです」と伯爵の机に置いた。
伯爵はそれを手に取りじっと眺めた。
「ふむ、間違いないな。何故こんな辺境に来た?しかも先程の剣は騎士レベル95の剣だというが。
それにその背中の巨大な剣、扱えるのか?
店主はお前が扱えると言っていたが、この目で見なければ納得できんな」
「それはまた後にするとして、冒険者にしては装備が立派すぎる。グランパープルは騎士を持たぬ国、お前は聖獣リーファに乗ってきたと言ったが理解し難い」
そう言われた時に
「伯爵様、グランパープル聖国の守護者様よりこれが届きました」
黒い礼服の恐らく執事か誰かだろう、伯爵に封書を手渡した。
伯爵は封書を開け読んでいた。
「お前の名はなんという?」と聞かれたので「秋葉オサムです」と答えると
「間違いないようだな、この城の騎士として身分を与えるようにと書いてある、守護者様が何故だ?」
伯爵は不思議そうにその手紙を見ていた。
「えぇ!?騎士として推薦ですか?どういうことでしょうか?」オサムが訊くと
「こちらが聞きたいわ、ともあれ守護者様からの指示なら従うしかないが」
「よし、庭に出るぞ、クリューズ、レンデルフ、ロレーヌ一緒に来い」と伯爵が立ち上がった。
伯爵の執務室でクリューズとレンデルフと呼ばれた2人の騎士が巨大な剣を持とうとしてたが、
二人でも持てないようだったのでオサムが片手で背中に装備した。
そして4人は伯爵の後について庭に出た。
そこにはかなりの本数の木が生えていた。
「先程の剣は?」オサムが伯爵に言われ
「あ、はい」とバッグから取り出した、一緒に最初の剣と短剣も取り出して芝生の上に置いた。
「まずは店で買ったという剣でこの木を1本切ってみよ」と言われたのでオサムは右手で剣を持ち木を切った。
軽く振ったがかなり切れ味が良かった。
その時、伯爵は芝生の上に置かれた剣と短剣を手にとって見た。
「何だこの剣は!?」と驚かれたがオサムには未だにわからない。
「では次にこの芝生の上の剣で思い切り切ってみよ。」
そう言われたのでオサムは拾い上げ力を込めて振った。
一瞬何も起きなかったが、次の瞬間に数十本の木が音を立てて切り倒された。
伯爵をはじめオサム以外の4人は唖然としていた。
「インペリアルセイヴァー、本物なのか?」伯爵が言うことをオサムは理解できずに居た。
「すみません、なんのことでしょうか?」オサムが言うと
「何か他に守護者様から渡されたものはないか?」伯爵が慌てて訊いてきた。
「えーと」オサムは左手の籠手を外し
「これを付けられました、外せません。確かハイドステータスの腕輪?エンフォーセ?そういう事を聞きました」
「ハイドステータス?なるほど、そういうことか。しかし何故こんな辺鄙な場所に、王都で良いものを」
伯爵は考えているようだった。
「よし、ではアキバ・オサムだったか、我が城の騎士として迎えよう」
「しかし、この強さでは筆頭騎士とせねばならぬな、守護者様の推薦でもあるし」
「クリューズ、良いか?」伯爵は横の騎士に尋ねた。
「私も目を疑いましたが本物のようですね、近々アレシャルの塔に連れてゆきます。」
クリューズという騎士が答えた。
「エリトール家を継がせるしかないか」伯爵はまたオサムのわからない事を言った。
庭の木を切り倒させられた2日後、アレシャルの塔と言う場所へ行く事となった。
オサムは「どういう場所なんですか?」とクリューズに訊いた。
「我が国で最強と言われているダンジョンだ、ボスばかりが生息する、並の騎士一人では30階層までも行けぬ」
オサムは「ダンジョン」と言う言葉を聞いただけで胸が高鳴った。
「ダンジョン!ダンジョンですか!?モンスターが?」オサムの声は嬉しそうだった。
クリューズは
「並の騎士では攻略は無理だと言っているだろうが、お前の強さを見る」と言って黙ってしまった。
アレシャルの塔にはオサム以外にクリューズとロレーヌという騎士の他にも18人が来ていた。
「10名は残って馬を見ておけ、塔の中で良い。私と残り9名はアキバ・オサムと同行だ」
そしてオサムにも
「全てのモンスターはお前一人で倒せ、いいな?無理だと思えば階段を上がれ」
クリューズはそう言ったがオサムは楽しみで仕方がなかった。
「ではまず1階層から」とオサムを先頭にして階段を降りた。そこにはモンスターが居た。
「えーと、ゴブリンナイト?HP500?ステータスが見える」オサムは背中の大剣を抜いた。
「やってみろ、我等でも簡単に倒せる相手だ」クリューズは言った。
『だんだん強くなって行くってことか、下に降りるほど』オサムは思ったが、体が先に動いた。
気が付いたときにはゴブリンナイトを一撃で叩き斬っていた。
「あれ?なんか慣れてる気がする」しかしオサムは気にしないことにした。
10階層までのゴブリンナイト、レイス、ハーピー、リザードナイト、ミルジャイアント、
リッチー、ユニコーン、ゴブリンキング、オーガナイトは一撃だった。
20階層までのヒドラ、ワイバーン、ダークエンジェル、オーガキング、スペクター、
リザードキング、イビルデーモン、ケンタウロスも一撃だった。
30階層までのミノタウロス、メデゥーサ、ゴーレム、ペガサス、グレイトジャイアント、
ホルドック、ストーンデビル、ダークオネス、ブラッドハウンドキング、
そして30階層の主ブラスドラゴンも一撃で倒した。
その後もドラゴンスパイダー、タートルドラゴン、フェニックス、シャッター、
ナイトウォーカー、マンティコア、40階層の主ブルードラゴンも一撃で倒した。
同行する10人の騎士は呆気に取られていた。あまりにも強すぎる、戦い慣れしすぎている。
モルゴン、ウォッチバンパイア、ヴァレス、ラーミア、マインドブレイカー、ダークオネス
そして50階層のレッドドラゴンですらも。
デモン、クシャナ、ヒュージワイバーン、ヒュージゴーレム、シールドガーディアン
60階層の主クリスタルドラゴンも一撃だった。
ゴォス、ヒュッケバーン、ミラージュシャドウ、シールドドラゴン、ナーガ、クラウラー
70階層のブラックドラゴン。
ここまで来ると騎士20人と魔道士のパーティーでも全滅するはずだ。
ビヒーア、シャドウフラクター、クアンラン、メディドゥ、80階層の主シルバードラゴン。
見たものはほとんど居ないだろう。
オルロヤルビィ、ユースプリズム、シアク、クラードデビル、90階層のゴールドドラゴン。
伝説級のモンスターだ。
グレートデーモン、ウィルドチャンク、フフスト、ハミアン、ドッペルゲンガー
そして、100階層のグレートドラゴン。
全てを倒しきるまでに3時間も掛けなかった。
オサムは途中から楽しんでいるようだった、それを見ていた騎士達は恐怖していた。
「これだけ?もっと強い敵とかは居ないのかな?」
オサムは少し物足りなかったが、ワープポータルで地上に戻された。
「これでわかった。お前は間違いなく聖騎士だ」クリューズが言った。
「聖騎士?」オサムが訊くと「歴史上にも登場したことのない最強の騎士だ。インペリアルセイヴァーと呼ばれている」
そしてクリューズが
「これらがモンスター晶石とレアアイテムだ。全員で集めた。お前のものだ、後で渡す」
と言って「帰るぞ!」と続けた。
オサムはわけが分からず帰路についた。
そして城に戻る途中で「換金所」と呼ばれる建物に連れて行かれた。
晶石を全て渡され、騎士達が見ている中
「アキバ・オサム様ですね。あれ?グランパープル聖国で登録されてますね」
「晶石全てでえーと・・・銀貨40万5000枚です」と驚かれた。
クリューズ達も驚いていた。
「全額引き出されますか?預かっておきますか?」と尋ねられ
オサムは
「ここって銀行みたいに今持ってる金貨や銀貨も預けられるのかな?」
と訊くと
「金貨と銀貨のみ取り扱っております、お手持ちの物をお預かりすることも出来ます」
「ただ、青銅貨や黄銅貸は受付できません」
受付の女性がそう言うので「じゃあ今度手持ち分も預けに来るからおねがいします」
オサムが言うと
「分かりました、ではお預かり致します」と言われたのでオサムはクリューズの所へ戻った。
レアアイテムはウエストバッグに全て入れた。
「40万枚とはな、いやそれよりも100階層までの時間か、とてつもない」
クリュースが城への帰り道で言った。
「そんなに難しいダンジョンなんですか?」オサムは素直な気持ちから聞いたのだが
「嫌味を言うな!いや、申し訳ない、聖騎士様」
クリューズはオサムをどう扱えば良いのか迷っているようだった。




