25話 世界平和を目指して
相変わらず各地で小競り合いが起きていたが、
この数ヶ月大きな異変は何も起きなかった。
各国に領地を持つオサムだが、それはオサムの領民が増えたということである。
幸いオサムがグランチューナーであるため軍隊に攻め入られることも通過されることもない。
オサム達の領地は治外法権が確立されていた。どこの国の軍も攻め込んでは来ない。
はっとオサムは気がついた。
「俺に領土を与えた理由はそれか、確か敵対する国の領土の境界線ばかりに有ったな」
「俺を利用してやがったな?」オサムは怒りを覚えたが、すぐに
『これで少しは戦乱も縮小してるか』と考え、怒りは静まった。
「しかし、これでますます断れなくなったな」オサムは書斎で舌打ちをした。
「いや、いっそ統一しちまうか?この大陸全部」
オサムは本気で考えた。
オサムが今まで一番遠くまで行ったのはグリーシアである。
大陸の全てを見たわけではない。
「リーファなら1ヶ月も掛からず全てを見れるな」
オサムは準備をした。
銀貨を3000万枚、ビーツの最新で最強の装備を身に着け
マジックバッグとそれと同じ大きさのグランパープルのバッグ
他に必要そうな物全てをマジックバッグに入れた。
そして、リムルに
「今回は長くなるよ。世界を見てくるから」
と言って飛び立った。
責任感ではなく好奇心からだ。オサムは気になったら止まらない。
1ヶ月は屋敷に帰らないだろう。
グリーシアを通り抜けるとまだ広大な大地が広がっていた。
「まずは東端の国シャングール帝国まで」
東端まで来て、海を渡ってみたがやはり日本列島のような大きな島はなかった。
「ここが東の果てか」
オサムはシャングールに降りて一通りの都市を回った。
絹を大量に仕入れ、他にもシャングールの特産品をかなりの量買った。
こういう時のためにオサムはドラゴンの首に大型のマジックバッグを付けて倉庫代わりに出来るようにしていた。
銀貨や金貨、青銅貨、それに食料と水も相当な量を入れている。勿論装備の予備も。
オサムは今度は大陸を一周しながら島を見つけようとした。
大小様々な島が見つかったが、国家のような規模と大規模な建築物の有る島はほぼ無かった。
一度石造りの神殿のような物がある場所を見つけたが廃墟となっていた。
大陸南端の半島の近くに大きな島がありそこは栄えていた。
他にも色々と廻ったが、やはり大陸の方が文化的水準は高そうだった。
巫女のようなものが居る島が有るかと期待していたが
聖なる気のようなものを持つ島はグランパープルだけだった。
全てを見て回りオサムは屋敷に帰ってきた。
「クイード、タキトス、ハンビィ、俺の居ない間に何か起きたか?」
オサムが訊くと
「ここ一月は何もありませんでした」
と言われた。
「何もない、か」
「周辺国のいざこざは?」と訊くと
「今まで通り、各地で」とクイードは答えた。
オサムは3人に向い
「俺はこれからすべての国を治める大帝国を作ろうと思う」
そう言って3人を眺めた。
「世界の混乱をおさめるためにですか」
どうやら3人はオサムの言葉を本気と受け取ったらしい。
「そうだ、俺はこの世界から無用な戦を無くす」
オサムは簡単に答えた。
「長い道程になるが」
「しかし今ではない、まずは世界の敵からだ」
オサムは自分に言い聞かせた。
「そのために俺達は奴らの天敵にならねばならん。お前達も」
オサムは指輪を外した。
「インペリアルセイヴァーとなれ、グレートドラゴンにすら恐怖を与えられる」
「インペリアルセイヴァー・・・HP32万?ロードナイトやドラグーンが最高職ではなかったのですね・・・」
3人がオサムに言った。
「神々と会うことになる、姿は見えんがな。声だけだ」
「あまりにも強いためお前達にも隠していた、すまない。侯爵閣下と国王陛下だけが知っている」
3人は黙り込み、しばらくして
「ご主人様の深慮遠謀のためならば。我々もこの世界の平和を願う気持ちに曇りはありません」
クイードが口を開いた。
オサムは
「では時間を掛けても良い、アレシャルの塔の最下層グレートドラゴンを一人で倒してこい」
「それができれば塔の1階に戻り何度も倒せ。最低30回、それでレベルを上げろ」
オサムの言うことは無茶ではない。3人の装備はオサムが使っていた装備だ。
恐らくこの世界で最も強力なものばかりに違いない。
「インペリアルセイヴァーになれば更に100回倒せ、余裕のある時で構わん」
自分がやったことをそのまま3人にやらせることにした。
そして
「行く前に俺の部屋に来い。マジックバッグとグランパープルのマジックバッグを作らせてある」
「俺も途中で行く。200回程な」
と静かに言った。
屋敷の自分の部屋においてあるマジックバッグを3人に渡した。
もう自分達でも作れるだろうが、これもオサムがデザインし、戦闘中に邪魔にならない形状だった。
しかもクライアンに特注で作らせた無限に近い容量を持つバッグである。
一度どの程度入るのかを巨大な湖の水で試したがその湖が空になりそうだったためすべての水を元に戻した。
「剣も甲冑も用意しておく。最高のものをな」
オサムはビーツに自分用だけではなく3人の装備も作らせている最中だった。
自分の持っている素材アイテムを全て見せ、要る物は渡してあった。
モンスターも群れが発生したと知らせがない限りは3人はアレシャルの塔に通っていた。
もちろん他のダンジョンにも。クイード達は数日留守にすることが増えた。
ただし、もしもの時のために1人は屋敷に居させた。
ある時、マジックバッグの中身を整理していると見慣れない物が出てきた。
呼び笛である。
「これは?ん?グレートドラゴンのドロップだったか?」オサムが思い出した。
ボスの中でもグレートドラゴンはドロップするものが少ない。
角や牙、鱗などを時々落とすだけだ。
ドロップアイテムが目的ではないため、見もせずにマジックバッグに放り込む癖がオサムには有った。
この際全てを分けようと考えた。
マジックアイテム精錬師のクライアンの店に行き、整理用のマジックバッグを作らせた。
オサムは色々とアイテムを手にとっては分別していった。
流石に大陸中のあらゆるダンジョンを回っているだけあって非常に種類が多い。
「ビーツとクライアンを呼んで見てもらう必要があるな」
オサムはある程度分け終わると一休みした。
その頃昼夜を通してクイード達3人はロードナイト99を目指して戦い続けていた。
オサムはビーツとクライアンを呼びつけ、マジックバッグの中身を全て見せた。
二人はしばらくの間何も言えず固まっていたが、やがて
「これほどの素材とマジックアイテム、一体どうすれば入手出来るのですか」
まずビーツが訊いてきた。
「戦っているあいだにいつの間にかだな、使えそうな素材は有るか?」
オサムが訊き返した。
「かなりあります、しかしわからない物が多いのは確かです、試しても?」
今度はクライアンが言った。
「かまわん、何をどれだけ使おうと問題無い、試してみてくれ」
オサムは答えた。
「では二人が使えそうなものをマジックバッグに入れて持って帰ってくれ」
「強力な装備とアイテムが必要だ。4人分」
オサムは
「あと、500万枚ずつ銀貨を渡しておく。これは口止め料と考えて欲しい」
そう言って銀貨の入ったマジックバッグを二人に渡した。
二人はそれで気がついた。
「私ら二人共エリトール様に命を握られているのですね?我々の知識と腕ですか」
「出来ればお前達を斬りたくはない、それゆえの500万枚だ」
オサムは脅しているつもりは無いが、脅迫には違いない。
「承知致しました。この腕と命、エリトール様のものと考えていただいて結構です」
ビーツは笑顔でそう言った。
「私も、お預けします」
クライアンも続けた。
「すまぬな、本当はこのようなことはしたくなかったのだが」
オサムが言うと
「事情がお有りなのでしょう?先程からエリトール様の言葉に覚悟が見えます」
ビーツが言い、クライアンが頷いた。
オサムはふぅ、と一息つき
「そうだ。俺の作らせた物が世の中に出回ると世界が荒れる、これは予想ではなくこの俺自信が証明していることだ」
「一人で数十万の軍を破れる力を悪意を持つ者が手に入れれば多くの民が不幸になる、それは避けたい」
オサムは常々考えていたことを二人に伝えた。
「では、最高のものをご用意致します。出来上がりましたら届けますので」
そう言い残して二人はマジックバッグを持って出ていった。
しばらくしてリムルが部屋に入ってきた。
「先程のお二人に何か大切な頼み事を?」
オサムはその言葉に
「うん、リムルが邪魔だったわけじゃないよ、安心してね?」
「秘密のアイテムを作ってもらうんだ、これでモンスター退治が楽になる」
そう言ってリムルの心配を取り除いた。
そして、スロヴィア王国、クイント王国と一月の間に2箇所でモンスターの襲撃があった。
オサムは3人を鍛錬に集中させるため、あえて一人で始末した。
「またあの法衣を着た奴が居たな、何者だ、一体」
オサムには謎が解けなかった。
しかし、3人はロードナイトとして順調に成長していた。
「もう少しだな」
オサムは目の前の3人のレベルを確認して
「今最高の装備を作らせている、インペリアルセイヴァーにしか扱えぬ代物だ」
オサムは換金所の儀式の間の者に確認していた。
騎士やロードナイト、インペリアルセイヴァーの転職レベルだが、
騎士は剣士レベルを50まで上げればナイトかパラディンに成れる。
しかし、ロードナイトやドラグーンになるには
ナイトかパラディンのレベルを99にする必要が有るらしい。
そしてインペリアルセイヴァーになるには・・・
剣士からのレベルを全て99にする必要が有るということだった。
幸いなことにクイード達はオサムを見習って全て99で転職している。
あとはロードナイトのレベルを99まで上げればインペリアルセイヴァーと成れるのだ。
そして、その時が来た。
3人がアレシャルの塔に通いだして約二月、ロードナイトの99レベルとなった。
オサムはクイード、タキトス、ハンビィを連れて儀式の間へと向かった。
最初にクイード、そしてタキトス、最後にハンビィが儀式を受け
インペリアルセイヴァーに成った。
オサムは
「どうだ?」と3人に訊くと
「神々の声が聞こえました。神聖な声が」
そう答えた。
「では自分と他の者を見てその強さを知れ」
オサムが言うと
「インペリアルセイヴァーです、なんですかこのステータスは?HPしか見えませんが20万を超えています」
と言葉を詰まらせた。
オサムは
「それが最高位の騎士だ」とだけ言った。
「ご主人様の言葉の意味がわかりました、では100回、塔を攻略してきます」
とクイード達が言うので
「まずは装備からだ、専用のものを作らせた。」
オサムが屋敷の自分の部屋に3人を連れてきた。
「甲冑はサイズ以外全て俺のものと同じだ、剣は15本作らせた。」
そう言ってオサムは3人に見せた。
「クイードとタキトスは両手剣だったな、10本有る。好きなものを選べ」
「ハンビィは二刀流だな、5本ある、使え」
とそれぞれに甲冑と剣を装備させた。
「余った剣は1階に作らせた倉庫に入れておく、全て使って良い」
オサムは続けて。
「ではクイードから、アレシャルの塔で自分の強さを確認してこい」
と言うとクイードは
「はい」と静かに言い残して屋敷を出ていった。
3人がそれぞれ100回アレシャルの塔を攻略し終わったのは約一月後だった。
「よし、皆レベル20だな。事実上お前達に勝てる相手はここに居る者達だけだ」
「しかし、驕るな。お前達3人を相手にしても俺は勝てるのでな」
穏やかにオサムが諭したが、その必要はなかった。
「力には責任が伴います。我等はご主人様のように世界を守るためのみに剣を振るいます」
3人がオサムに跪き忠誠の誓いをあらわした。
「そうか」とオサムは嬉しく思った。
「ゴータス王国からの知らせだ、先程使者が来た」
「では、この世界を守りに征くぞ」と4人は屋敷を出た。




