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終わったならまた始めればいいじゃないか-推敲Ver-  作者: 朝倉新五郎
第一章 騎士
19/43

19話 爵位と最強の称号

 一月程してオサムは伯爵に呼び出された。


 昼前に伯爵の部屋に行くと、腕組みをして待っていた。

 「オサムよ、お前一体何をした?」と伯爵がオサムに尋ねてきた。


 オサムは意味がわからず「いえ、最近はダンジョンにも殆ど行ってないですし、何も」と答えた。


 「では何故グリオン王国の使者が突然講和を申し込んでくるのだ?ここ十数年戦っていた相手だぞ?」

 伯爵は確信を持っているようだった。

 「たった一人の黒騎士に城を3つ落とされたと言っていたらしい。王からの使いが封書を持ってきた」


 「ああ、話せば長くなりますが、よろしいでしょうか?」

 とオサムはひと月前の出来事を伯爵に話した。


 侵攻軍を撃退したこと。グリオンの領土に攻め込んで城を3つ破壊したこと。

 その気になればグリオン王国の王都を含め全ての城や要塞を破壊すると脅したこと。

 そして、その全てが魔法石採掘のついでに行ったということ。



 「そういうことか」と言ったきり伯爵は黙ってしまった。

 そして、

 「講和条件としてグリオン王国の領土が割譲され、私は侯爵になりその領土も治めることになる、以前の倍以上の領地になる」

 「そしてこれはエリトールであるオサム、お前の功績だ」

 

 オサムは功績はどうでも良かったので

 「おめでとうございます。侯爵閣下」と言って喜んだ。

 恩人である伯爵の役に立てたと感じていたからだ。


 「うむ、これで戦はほぼ無くなるだろうが、お前は我が王に謁見せねばならん、爵位が与えられる。私の侯爵領拝領と共にな」

 伯爵がそう言うと

 「そうなんですか?なんだか面倒ですね、王様に謁見ですか?爵位なんて要りませんよ、今のままがいいです」

 とオサムが嫌がるのは分かっていたので伯爵は裏で動いたようだった。

 王から拝領するという子爵領は伯爵の領地と隣接しているが、城がある。オサムは移転を嫌がるだろう。

 それに今回の功績ならば王から直接領地を賜る。そうなれば自分の手を離れ、王直轄の諸侯に列せられる、それも嫌がるだろう。

 しかし形だけではあるがオサムは伯爵のエリトール家を継ぎ、筆頭騎士である。移転だけは無き様にと頼んでいた。


 「この辺境、特に旧グリオンの土地では何が起きるかわからんので引き続きオサムには居続けてもらうが、

  お前は子爵に取り上げられる。立場上は陛下直属の子爵だが、領地は王から頂くものも含め今の3倍となる。

  子爵領には城があるので住むことは可能だが、城代を私が出そう。子爵に相応しい屋敷が城の敷地にあるので改装中だ、従者や召使いも増やす」

 伯爵は怒っているのか喜んでいるのかわからなかった。


 「いや、俺はただ、前回のような村や町を戦禍から守りたかっただけで、そんなこと望んで無いです。今のままで十分です」

 オサムが戸惑いながら言うと


 「お前がロードナイトということを王に伝えた。まだ手紙は届いておらんと思うがな」

 伯爵が頭を掻きながら

 「長年の国同士の争いをあっさりと止めてしまったんだぞ?これが今のお前の力だ」

 「はっきりと言うが、お前は一国の軍以上の存在になってしまったのだ」


 オサムはそんなことはどうでもいいが、争いがなくなるのは良いことだ、と考え

 「はぁ・・・戦争が無くなれば苦しむ人達が居なくなりますね」

 と答えた。


 「そうだがな、もうよい。出発の日は教えるのでそれまでは静かにしておれ」

 と言って伯爵の話は終わった。



 オサムは屋敷に戻り、リムルの待つ部屋へ上がっていった。

 一応部屋は分けたのだが、オサムの我侭でリムルはオサムのベッドで共に寝起きしていた。

 「リムルー」と呼ぶと

 「おかえりなさい、旦那様。何事でしたか?急に呼び出されるなんて何か悪いことでも?」

 と訊かれたので

 「いやー、どうも王様に謁見しないといけないらしい。あとなにかの褒美だったかな?子爵になるんだってさ俺」

 嫌そうな顔で言ったのだが


 「それは素晴らしいことですね、子爵様ですか」

 リムルは喜んだ


 「あとね、屋敷も大きなものを貰って、従者や召使いも増えるんだって」

 「なんだか色々面倒だよね?今のままでも十分なのにさぁ」とオサムはベッドに倒れ込んだ。


 リムルはふふふっと笑って

 「相変わらず無欲な方ですね、そういうところ私は好きです」


 「けどさ、けどさ、考えてみるとリムルも子爵夫人になるんだしいいよね?この話」

 オサムは相変わらずリムルのことしか考えていない。


 「私は旦那様と一緒ならそれでいいです」

 ニコリと笑ってリムルは答えた。リムルもオサムの事しか考えていなかった。



 一ヶ月も過ぎた頃だろうか

 嫌とも言えないので、オサムは王に謁見することとなった。

 ペガサスならゆっくりと飛んでも1時間程度だが、陸路では馬車で1週間以上掛かるだろう。

 往復で3週間。滞在期間を合わせれば1ヶ月になるかもしれない。


 とは言え、オサムという存在が護衛団の規模を縮小させ、騎馬と馬車のみで移動出来ている。

 出発前に伯爵が「エリトールが居るため護衛団は15騎とする。魔法士は2名、召使い4名」

 と、通達するとクリューズは驚いたが、オサムが居るなら。とロレーヌも含め納得した。

 日程では夜に移動することは無いようにしているが、昼でもこの辺境ではモンスターが出現する。


 『だりぃ・・・飛んでいきてぇよ、合流でいいじゃん合流で』とオサムは考えたが、

 伯爵を守る必要性から同行するしか無かった。

 オサムは既にペガサスの呼び笛以外にナイトメア、グリフォン、ドラゴンの呼び笛も持っていた。


 ドラゴンの呼び笛はドラゴンダンジョンで偶然手に入れたが、その存在は誰も知らなかった。

 これもクライアンに鑑定してもらい調べたのだが、通常のドラゴンを呼び出すアイテムとのことだ。

 昔の文献にドラゴンライダーと呼ばれる存在が1名だけ居たが、それは存在自体が謎の人物だった。


 小規模での移動ということから野営することは無かった。

 伯爵用の豪華な馬車が一両、他に召使と魔法士用の馬車が一両、荷馬車が一両、騎馬が15騎の編成だ。

 各町や城塞で寝泊まりしながら昼に移動した。


 夜になると時々オサムはペガサスやグリフォンで屋敷の方へ戻るため皆に会えないわけではない。

 ただし夜中になるため皆が寝静まってしまっていた。クイード達が起きていたとしても冒険に出かけているだろう。


 オサムは新しい屋敷、というものを見て、部屋割りや内装の注文を書き残し去っていくだけだった。

 当然のことながら浴場と水洗トイレもしっかりと頼んでいた。

 今回は防水マジックバッグを使って湖や河、泉などで水を汲んで設置しているため大樽は要らなかった。


 当然エリトールの屋敷にも手紙を置いて帰っていっている。しかしリムル達に会うことは諦めていた。


 部隊の規模のせいだろうか

 稀に何故かフィールドボスクラスのモンスターが出たがオサムがその都度簡単に片付けた。

 下級のフィールドボス程度だが、パーティーを組んで倒すような相手が多い。


 オサムのロードナイト用の甲冑や剣が異常に重いため、移動中は騎士時代の装飾の多いものを身に着けている。

 頼りない感覚におそわれるが、オサム自身が十分に強いため問題はない。

 こちら側には余り来ないので、出現したモンスターを書き留め、後で研究することにした。見る限り知能の低いモンスターが多い。

 指輪を付けているためステータスは誰にも見えないようにしているが。強さ自体は変わらない。


 持ってきている甲冑や剣は儀礼用の物ではあるがビーツに作らせたロードナイト専用の物である。

 クリューズ辺りが全力で剣を振り下ろしても傷すらつかない逸品だ。

 防御力も攻撃力も黒騎士装備とほとんど変わらない代わりにかなり重い。



 幾つかの町や城塞を経由して、到着したのは巨大な城塞都市だった。

 ざっと見ても伯爵の城塞の10倍はある。城壁もかなり高い。

 丘というより山と言ったほうが正しいであろう場所に王城が建てられていた。


 そして、数日城に泊まることになった。

 流石に城の規模は大きく、侍従や侍女が居ないと迷ってしまう。

 伯爵の城の5倍程度の広さの優雅な城だ。


 

 翌日、伯爵とオサムは叙勲のために王の間に通された。

 儀仗騎士が通路の端から端まで並んでいる。

 伯爵とオサムは、その間を抜け、王の座る壇上の下で片膝を着いた。


 王は何かを読み上げ、伯爵に侯爵領を、オサムに子爵領を与えて式典は終わった。

 オサムには長い時間に感じられたが、実際には30分も無い。

 夜に舞踏会が開かれると言うので、二人も主賓として出席することとなった。

 

 『やっぱり舞踏会か、しかも王様の城で。ぜってー貴族とかばっかりなんだろうな』

 オサムはクリューズやロレーヌに一通りの作法を教えてもらっていたが、正直出たく無かった。


 夜になると二人は先程の大広間に連れてこられ、続々と貴族風の男女が現れ舞踏会が始まった。


 オサムは少しワインを飲み、食事を摂ると、シャンパンを片手にバルコニーに出た。

 これは侯爵から許可を得ている。自分がなんとかするから、とのことだ。

 侯爵はオサムの理解者であり、一種の保護者であった。


 夜風にあたって城下を眺めていると、いかにもという風体の貴婦人が数人近づいてきた。

 折角面倒なことから逃げてきたのに今度は追われる立場になってしまった。

 しかし何者かは分からないが、丁寧に接しなければならない。


 「エリトール子爵様、聞くところですが隣国グリオンとの戦乱を収めたとか、騎士から子爵様へなど余程の功績を上げられたのですね」

 貴婦人たちはオサムを取り囲んで話を聞きたがっていたが、

 「私は侯爵閣下のために働いたに過ぎません、一介の騎士にどれほどのことが出来ましょうか」

 そう答えたが

 正室は居るのか、予定はあるのか等を訪ねてくる。

 

 オサムは適当に返事をし、リムルのことを思い出した。


 「今のところ、私にそのような気持ちはありません。王陛下から頂いた領地の経営に専心したく考えておりますゆえ」

 領地経営のことなど侯爵に任せてしまうのだが、一応の返事はした。

 一通り話すと貴婦人たちは戻っていった。興味本位でやって来たのだろう。


 そして入れ替わるように出てきた女性が居た。

 オサムには気がついてないらしく、街を見下ろして風に吹かれていた。


 オサムは放っておくことにしたが、

 「あ、」と気付かれてしまった。


 その女性は静かに近寄ってきて

 「エリトール子爵様ですね?私はツォレルン男爵家次女のミーシャと申します」

 と自己紹介されたので、オサムもせざるを得ない

 「本日、と言うより先程子爵領を頂いたばかりの騎士でまだ戸惑っておりますが、エリトールといいます」

 

 そのミーシャという令嬢はロレーヌにも劣らない美女であった。

 ただし、ロレーヌが太陽とするなら、ミーシャは月といった印象だ。

 「子爵様の事をお聞きしても?」と言うので

 「答えられることなら」とオサムは返した。


 「随分とお強い騎士様だと伺っております、お年は?ご両親は?」


 「まだまだ強いとは言えませんが侯爵閣下の筆頭騎士として鍛えましたので。年は20になりましたか。父母は居りません。ある事情がありまして」

 そう答え『綺麗な女性だけど、ロレーヌとはまた違って話しやすいな』と考えていた。


 「そうですか、私は今年で16になります。ずっとお城暮らしですので外の事を教えて頂けませんか?」

 ミーシャがそういうので、知っていることを話した。

 辺境のこと、モンスターのこと、ダンジョンのこと、戦のこと。さすがに異世界のことは話せない。


 「モンスター?ですか?」と訊かれたので

 「はい、辺境ですので数多く居ります。王都の周辺には居らぬと聞いていますのでご安心を」と答えた。


 「そうでしたか、ですからお強いのですね?私には想像も出来ない世界です。籠の鳥ですので」

 続けて

 「どなたかがこの籠からだしてくださることをいつも考えています」

 とオサムに言ったが、王都と侯爵の城塞を比べて考え

 「宮中の方が安全で落ち着けますよ、ミーシャ様」とオサムは答えた。


 その時、侯爵が出てきてオサムを呼んだので

 「主に呼ばれましたので、これにて失礼致します。またお会い出来れば」と広間にもどった。


 「このような席は苦手であろう?適当に理由を付けて自分の部屋に帰っても良いぞ」

 そう言って城の侍女を呼んだ。

 「エリトール子爵だが緊張のせいか、ちと体調を崩しておるらしい、部屋へ連れてやってくれぬか?」

 オサムは侯爵の気遣いが嬉しかった。


 

 部屋へ戻り、服を脱ぎベッドに倒れ込んで眠った。

 


 数日間城や屋敷で過ごし、侯爵一行は帰ることになる。

 その間はやはり宴や舞踏会の毎日だ。侯爵はともかくオサムには苦痛だった。


 馬車の護衛をしながらあと1週間半、それまでオサムは大っぴらにリムルと会うことが出来ない。それがもどかしかった。

 それを侯爵に見抜かれ「リムルが恋しいか?オサムよ」と言われた。

 「2日に1度位向こうにペガサスで帰っているので寂しくはありませんが、面倒ですね」

 正直に侯爵に言うと

 「そうか、帰っていたのか?しかしもう寝てしまっているだろう?ああ、そういうことか」

 侯爵は何かを勝手に納得したようだった。


 

 来た道を引き返しながらオサムは毎晩城内へ戻っていた。既に新しい屋敷の改装はほとんど済ませてあった。

 『帰った頃には新しい屋敷に移っているのかなぁ?クリューズに任せているから安心だけど』

 伯爵が自分用に建てたと言う屋敷はマンセル子爵の物より大きいらしい。夜にしか見ていないので大きさは分からない。

 城へ向かう間も進捗具合が把握できるのは良いが、誰にも会えないのは楽しくない。


 1週間を超えた頃、侯爵の領地に入った。もうすぐ屋敷に戻れる。

 「すまぬな、オサム、お前だけならペガサスで飛んでいけるのだが」

 と侯爵に言われたが

 

 「いえ、この世界で侯爵閣下に出会えなければ今頃野垂れ死にしていたでしょう。感謝しかありません」

 オサムは答えると

 「そうか、まぁ城に戻れば屋敷の引っ越しも完了しているだろう。リムルとゆっくり過ごすと良い」



 そして、城へと戻ってくると、やはり屋敷の引っ越しは済んでいた。

 オサムは新しい屋敷の扉をそっと開けると

 「おかえりなさいませ、お館様」とハロルドがいつものように迎えてくれた。


 「随分と大きな屋敷になったな、侯爵閣下の物を改装したと聞いていたが全てクリューズが手配を?」

 とハロルドに尋ねると

 「左様でございます。前の屋敷にはクリューズ様が住むとのことでした」


 「あいつもちゃっかりしてるなあ、まああの屋敷はロレーヌ様の屋敷と近いし丁度良いか」

 オサムは侯爵の将軍であるクリューズの部屋を見せてもらったことがあるがかなり広かった事を覚えて居る。

 


 オサムは

 「そうか、しかし広いな、俺の部屋は?」と聞くと最上階3階となっております、ご案内させましょう」

 と侍女のヴィオラを呼んだ。

 「子爵様をお部屋にご案内しなさい」ハロルドが言うと

 

 オサムを3階の部屋に導いていった。

 

 部屋に入り

 「リムルー、帰ったよー。」とオサムが言うと

 奥の部屋からリムルが駆けつけ「おかえりなさい、旦那様!」と抱きついてきた。

 今回の屋敷の改装にあたって、オサムとリムルの部屋はやはり分けていたが、ドア1枚で出入り出来るようにしていた。

 リムルの方の部屋は着替えや化粧程度にしか使わないだろう。

 

 甲冑をぬぐのにヴィオラを手伝わせ、部屋着に着替えた。

 ヴィオラは「ではこれで。ごゆっくりなさって下さい」と扉を締めて帰っていった。

 もうそろそろオサムの甲冑の重さではクイードやタキトス、ハンビィ程度しか持ち上げられないだろう。

 片付けは自分でするしか無くなってしまったようだ。


 オサムがそうやって考えているとリムルが

 「ね、ね、聞いてくれますか?」と言うので

 「なんだい?」とオサムが訊くと


 「召使いの中に魔法士が居るんですよ?」とリムルが楽しそうに話しだした。


 どうやらクリューズの手配で従者が8名、侍女が4名や召使いが13名に増えて、その中の2人が魔法士らしい。

 この規模の屋敷になると、エターナルライトや治療の出来る神聖魔法士や厨房で必要とされる火炎魔法士、氷水魔法士が着くことが多い。

 侯爵はヨーン魔法団と言う戦闘用の魔法団を結成させているが、通常は騎士や剣士の冒険に着いていったり、暇な時はやはり城内で働いている。

 魔法士や魔道士は庶民出身者が大多数を占める。賃金の高い安定した生活のために騎士団に付属することが多い。

 しかも冒険で稼いだ晶石は等分されるのでかなりの稼ぎになる。

 だが、独立する者が少ないのは前衛である騎士が居なければほとんど狩りが出来ないためだ。騎士団付きになるのが手っ取り早い。


 『そう言えば一番最初のダンジョンの時以来見てなかったな』とオサムが考えていると

 

 リムルが「そのうちの一人が可愛い女の子で、すぐ転ぶんです、面白くって」

 と言うのを聞いて、オサムには心当たりがあった。


 「どの子かな?会わせてくれる?」とリムルに言うと。

 リムルがドアを開けて「ヴィオラ、あの子を呼んできてくれる?魔法士の子」と伝えた。


 少しするとドアがノックされリムルが扉を開けると「その子」が現れた。


 「あ、やっぱりあの時の!!」とオサムが言うと、その子も

 「あ、あの時の方ですか!?」と言った


 「あのときは申し訳有りませんでした」と深々と頭を下げた。


 リムルが「お知り合いでした?」と訊くので「ちょっとね」とオサムは笑って答えた。


 「相変わらずドジっ子なんだね、名前はなんて言うのかな?」オサムが訊くと

 「マリエール・ミルスです!子爵様よろしくお願いします!」と元気よく返事し

 オサムが

 「マリエールちゃんね、よろしくね」と言うと

 「はい!こちらこそお願いします。では失礼します!お仕事に戻ります」と言ってドアから出て走っていった。

 

 リムルが

 「旦那様、見ていて下さい。」とドアを開けて見せていると、階段の手前で豪快にコケた。

 「ね?面白い子でしょ?」と笑顔でオサムに言った。


 「治ってないんだなぁそそっかしいところ」とオサムも笑った。

 侯爵がマリエールを寄越したのはオサムとの一件が有ったからだろう。

 恐らくだが侯爵の城ではお荷物になっていたのかもしれない。


 その日から数日、オサムは屋敷に慣れるため外には出ずに過ごした。主に自分の部屋の書斎で読書や書き物をしていた。

 屋敷に慣れた頃にまずは増えた従者と召使の名を覚えなければならないため、新しく来た者達を前の屋敷にはなかった執務室へ呼んだ。


 新しい従者の5名が

 クラウド・トールセン

 アンカール・デルモア

 ギルビィ・スマイス

 レオン・グラハム

 ジン・レトワーズ

 いずれもやはり下級騎士家の次男や三男だった。


 ハロルドが家令となったので執事として

 フルグリフ侯爵のところで執事補佐をしていたハワーズ・モンテリマールがやって来ていた。


 侍女がヴィオラやエリスに加えて

 リーシャ・ワトムス

 シオン・ゲイツ

 この2人もリムルやヴィオラの後輩でエリスと同年齢となる。


 召使では

 神聖魔法士のルークリエ・ティルム

 火炎魔法士のマリエール・ミルス

 カッシュやユゼムと共に調理場に立つ補佐役としてトレモル・カーザー

 ケンテルの補佐にワイロン・スピアード

 ミランダやアリエル達の下に

 ユリア・スマインテイム

 チャオ・ランダー

 オサムとリムルを合わせると総勢27名もの大所帯となった。

 しかし、今回の屋敷の規模は以前の10倍近く、マンセル子爵家の倍はある。侯爵が自分のために建てたものなので当たり前だが広くて豪華だ。

 部屋数は40を超える。オサムが大きめの部屋割りを指示したのだが、これでも掃除が大変である、もう3人雇うことにした。

 慣れた者を、と言う事で侯爵に頼み、城の召使の中から 

 ポエル・アグレシア

 ベルタ・ラインバート

 ドリス・サーミニア

 この3名を寄越してくれた。いずれも若い。

 ハロルド以外はオサムと同じかそれ以下の年齢だった。

 この人選には侯爵やマンセル子爵がオサムの年齢を考慮に入れている。


 「新しく私の家族になってくれて嬉しく思う。我が屋敷に来た以上皆も他の者を家族と思ってくれ、今までの常識は捨ててこの屋敷の作法に慣れるように頼む」

 オサムが言ってることの意味が全員分からなかったが、すぐに直面することだ。恐らくヴィオラのように衝撃を受けるだろう。

 そのことを知っている者達の中には若干楽しみにしている者も居た。



 従者が8名に増えたが、クイード達3人が基本から教えてくれているのでオサムは口出ししなかった。

 3人はレベル40を超える騎士になっていた、恐らく相当な鍛錬を積んだのだろう、

 他の5名はまだ剣士で20~40というところだ。いずれ3人がしっかりと鍛えるはずである。

 ルークリエやマリエールとも組ませ、低級ダンジョンにクイード達の内の1人が同行すれば安全だ。


 オサムはクイード達3人を呼んで銀貨3万枚を渡した。


 「これは?」とクイードが言うと「当面の装備が必要だろう?他の5人にも買うか作ってやると良い。魔法士にも良い装備をな」

 「ああ、そうだ。俺が使ってた剣士装備が有ったな?あれはまだ有るか?あるならそれを使わせてもかまわん。打ち直してもらえ」

 オサムがそう言うと

 「我々はご主人様から頂いた装備がありますし、あの5名はまだ剣士ですので高価な品は要らないでしょう、考えて与えてみます」

 ハンビィが答えたが

 「お前達にも俺の使わない装備を渡すのでビーツに打ち直してもらうといい。5人の装備は任せる。いいな?」

 そして

 「ちょっと奥の部屋に来い」と3人を装備用のクローゼットの前まで連れてきて


 「剣が20本と少し、甲冑も5つほどある。かなり強力な物が多い、持っていけ。俺の装備は別の場所に置いてある」

 と剣を1振りずつ取り出して床に座り込み3人に確認させた。


 「どれもこれも一級品の魔剣ばかりじゃないですか!?これを私たちに?」3人が言ったが

 「使わぬものを持っていてもな、屋敷も移ったことだし、整理がしたい。全部持っていけ。1階の倉庫に入れておいても良い」

 「お前達や例の5人はロードナイトである俺の従者だ、弱くては困る。お前達でもまだ十分とは言えん」


 3人が剣を確認していったが殆どが刃こぼれ1つ無い新品のようなものだ

 魔剣ばかり20数本、甲冑もレアアイテムを使った物だ。


 「装備レベルになれば徐々に変えていけよ?あと、楯もいくつかある、持っていけ」

 そう言われ、3人は3階と1階を往復して装備を運び出していった。


 「スッキリしたな。久々に戦いに行きたくなってきた」とゴソゴソと準備を始めた。

 オサムのレベルはロードナイトの80。ほぼ無敵だが、アレシャルの塔の最下層のグレートドラゴンだけはまだ倒していない。

 「試しに行くか」と剣を2本、腰に下げられる長さの剣と、ビーツから届いた長大な両手剣を背中に装備した。

 

 「リムルー、ちょっとダンジョンに行ってくる。リジェネリターンの魔石も持っていくから安心してね」

 と奥の部屋のリムルに言うと

 「まだ行かれるのですか?もっとごゆっくりなさればいいのに」

 少々不満げだったが

 「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と言われ

 「うん、どうしても倒したい奴が居てね、しばらく留守にする」と屋敷を出た。

 

 ペガサスを呼び出し、塔に到着した。

 「さて、どのくらい強くなってるかな?」と塔に踏み込んだ。


 1日もかからずに98階層、つまりドッペルゲンガーの階に入った。

 黒い影がぼやっとオサムの姿に変わった。

 『このレベルのロードナイトと同じ強さがあるのか?』


 しかし、流石にそこまではコピー出来ないようだ。魔剣や鎧もコピーできていない。

 オサムはあっさりとドッペルゲンガーを倒した。


 いよいよグレートドラゴンと戦うことになる。

 前は手も足も出なかったが、今回は善戦出来るだろう。


 剣や鎧、マジックアイテムの効果よりオサム自身の強さがグレートドラゴンを翻弄した。

 ドラゴンブレスもスキルで切り裂ける、爪で攻撃されても腕を切り落とした。

 尾も切り落とし、最終的にグレートドラゴンは息絶えた。

 オサムもかなりのダメージを受けたが、回復薬をそこそこ使えば倒すことが出来ると分かった。

 これ以上の強さを持つモンスターが居るのであればまだまだ強くならねばならないが、恐らく居ないはずだ。

 居るとすれば伝説の魔竜、この世の始まりから居ると言われて神と同等に崇められている数柱の存在くらいだろう。

 いずれ会ってみたい。この世界の事が何かわかるかもしれない。


 グレートドラゴンが息絶える時に見慣れないアイテムがドロップしたがいつも通り気にせずマジックバッグに放り込んで1階層までワープポータルで戻った。


 オサムは1週間掛けて10数回100階層まで降りていった。

 流石にヴァレスの革で作ったグランパープルの袋も晶石で一杯になってきた。

 とは言えまだまだ入るのだが、この辺りで良いか。と考えて帰ることにした。


 オサムは一旦換金所へ戻りマジックバッグにはまだ余裕があるため屋敷に戻らず、晶石だけを換金した

 無限に晶石を出し続けるオサムに受付の娘は目を白黒させていたが

 「ご、合計758万9200枚になります」と言われたので「預かっていてくれ」

 とオサムはサラッと言った。

 既に1000万枚は超えているだろう、領地の税を少し下げるか。と考えた。


 オサムは自分のステータスを見るとロードナイトレベル99となっていた。

 「気が付かなかったな、完ストしてるじゃん?」と呟き

 転職カウンターに行って

 「転職できるか?ロードナイトのレベル99なのだが、次はあるかな?」

 と言うと、受付の娘は以前以上に絶句した。

 

 「エリトール様、暫くお待ち下さい、確認して参ります」と転職の間に入って、しばらくして出てきた。

 受付の娘は「転職は可能なはずですが、古文書を調べても前例が全く無いためこの建物の地下で転職の儀式を行うそうです」

 「そうか、案内してもらえるか?」

 とオサムが言うと「まずは儀式の間に」と答えられた。


 「承知した」と儀式の間に入っていくと、高齢の神官が待っており古びた魔導書らしきものを用意している。


 神官は

 「この奥に階段があります。そこから地下の神殿へと参ります」

 そう言ってオサムを案内した。


 地下の神殿というものを見ていると「ここは精霊界と繋がっておりまして、実際には建物の地下ではありません」

 オサムは「そうか」とだけ答えて

 

 「では頼む」と神官に告げた


 「しばらくお待ち下さい。私も古今聞いたことのない例なので」と魔導古文書を開き、確認を行うと


 「まずあの魔法陣に立って下さい、その後儀式を行います。精霊界を通って神の世界へ行くようです」

 と言うので、オサムは歩いてその魔法陣の真ん中に立った。


 神官が魔導古文書を開き、何やら聞いたことのない呪文のようなものを唱えると

 魔法陣全体が輝きオサムを包み込んだ。


 景色が変わり上下左右のわからない空間に居るような感覚の中で声が聞こえた。

 その声は威厳に満ちた声であり、恐らく神々の世界とやらに居るのだろう。


 強烈な光が放射され、それが消えると、元の魔法陣にオサムは立っていた。


 予めハイドステータスの指輪は外してマジックバッグに入れていたが、

 それは関係ないようだ。


 神官は「おぉ・・・これは・・・インペリアルセイヴァー・・・」と言ったので

 オサムは自分のステータスを確認した。


 インペリアルセイヴァーレベル1、HPは20万を超えていた。ロードナイトとは桁が違う。


 オサムは特段変わったことは感じないが、体の奥深くから力が湧き出すのを感じていた。

 またステータスがかなり上昇しているようだ。詳細を確認しようとしたがHP以外の数値は出てこない。


 しかし、感覚としてはロードナイトに転職したときと変わらない。


 神官が

 「では戻りましょう、ここには長く居られません」とオサムを連れて戻った。

 戻る途中でハイドステータスの指輪を付けた。


 オサムはそのまま、また塔に飛んでいった。

 「試してみるとするか」と塔を降りていった。

 ボスクラスの敵をまるで藁人形でも斬るように一撃で倒していった。


 「なんだ?この強さは?」とオサム自身戸惑ったが、シルバードラゴンも3撃で倒せた。

 同じようにゴールドドラゴンも5撃で倒し、グレートドラゴンの部屋に降りた。


 グレートドラゴンは怯えたかのように威嚇してくる。

 オサムは「こちらから行くか」と飛び上がると巨大なグレートドラゴンの頭まで届いた。

 ロードナイトの時も常人離れした能力だったが、今回は数段上のようだ。


 斬撃を叩き込むと反撃してきたが、空中で避けることが出来る。

 5分もかからずグレートドラゴンを倒した。


 そしてまた1階に戻り今度は30回以上戦い続けた。

 もう晶石が数え切れなくなってきたため、また換金所に行き換金することにした

 ゴトゴトと晶石を出していくと

 受付の娘が

 「エリトール様、どこに行かれてらしたんですか?」と訊いてきたので

 「アレシャルの塔、今回は30回位クリアしたかな?忘れた」

 平然と語りながら晶石を出していくオサムに、受付の娘は言葉を失った。

 「1722万6000枚です」受付の娘は震えていた。

 

 オサムは

 「どうしたの?それお預かっておいてね」と笑顔で言うと

 「は、はい、わかりました・・・」と受付の娘は言った。

 「じゃ、そろそろ帰るね?またね」とオサムは換金所を出ていった。


 『ちょっとこれは誰にも見せられないな』指輪は眠る時も常に付けていることにした。


 帰る途中に自分のステータスを見たが、インペリアルセイヴァーLv15となっている。

 「流石にレベルは上げにくくなってるな」と呟いた


 屋敷に戻り

 「ただいまー」と言うと「おかえりなさいませ、お館様」とハロルドが迎えてくれた。

 「じゃ、自分の部屋に居るから」と伝え階段を登っていった。

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