17話 平穏と戦闘と儀式の準備
次の日の朝になり、オサムは目が醒めた。
相変わらずリムルは早く起きて拭き掃除等を行っている。
オサムは
「リムル、ちょっとおいで」ベッドから起きてトランクの方に向かった。
「どうかされましたか?ご主人様」とリムルが寄ってきた。
「昨日は鏡を渡しただけだけだけど、お菓子とかアクセサリーとかもあるんだ」
ゴソゴソと荷物の中から箱を出し、サファイアやアクアマリン等のペンダント、置き鏡とヘアアクセサリも取り出した
「はい、これね」とリムルに渡すと
リムルは
「これはあの、異世界の宝石ですか?」と訊いてきた
オサムは
「そんなに高価な物じゃないけど、どうしてもリムルに付けてほしくてね」
そう言ってから
「あ、その箱は食べ物だから、多分気にいると思うんだけど一つ食べてみて?」
と続けた
リムルはゆっくりと包装紙を丁寧に剥がして、蓋をあけると色んなチョコが並んでいた。
「見たことのない食べ物ですね、でもいい香りがします」
そう言うと、一つ手に取り口に入れた。
食べ終わると
「ご主人様、なんですかこの食べ物は!?美味しすぎます!」
ちょっと興奮気味にリムルが言った
「ははははは、気に入ってくれたね、良かった」
オサムは嬉しくなった。
「ペンダントはどうかな?」
と言い終わる前にリムルはそれをじっと見ては別のものをまた見ていた。
「素敵な色ですね、でもこれはなんだか不思議な色です」
リムルが手にしていたのは夜光性のものだった。
「あ、それは一番安いんだけど、こっちの世界じゃ絶対に手に入らないものなんだよ?」
オサムが説明したが
「全部全部私の宝物です」喜んで、そっとチョコの箱の上に置き
「ありがとうございます!」オサムに抱きついてきた。
普段そんな事をしないリムルだから余程嬉しいんだろうな、とリムルの頭を撫でた。
しかし、はっと気が付き、リムルは離れようとしたが。今度はオサムが抱き締めて離さなかった。
数日の間、ゆったりとした時間の中でオサムは幸せに過ごしていた。
『指輪ができたら伯爵に頼んで祝福の儀式とやらを準備してもらおう』
今は洋裁店の者を呼んで、綿や絹で自分やリムルの服を多く作らせている。
街を歩く時の服は特注で布地の間にカーボンアラミドファイバーと言う防弾防刃の生地を挟んである。
数十人のフル装備の剣士に囲まれたところでレイピアや短剣で皆殺しには出来る。
そんな騎士には本来必要の無い服なのだが。
それはオサムの純粋な趣味の問題だった。
アニメの見過ぎで若干だがミリタリー系の趣味も入っていた。
ロレーヌとリムルに少々アクセサリを渡した時に薬指のサイズを測ってある。
リングゲージを使って9号であることは確かめた。
これで修正は要らない事がわかっていた。
そろそろ出来上がる頃か、とオサムは街へ降りてビーツの鍛冶屋へ向かっていた。
街の中ですれ違う冒険者達の数人がオサムを見ては驚く。
恐らくレベルを見ているのだろう。ロードナイトは珍しいのだろうか?
ビーツの鍛冶屋に到着して状況を聞くと、もうかなりの品物は出来上がって屋敷へ運んでるらしい。
入れ違いになってしまったか、と一旦オサムは屋敷へ戻った。
扉を開けてすぐの場所に
ロレーヌの甲冑と剣
クリューズの甲冑と楯
エリトールの紋章が入った白銀の甲冑と楯、それに合わせた剣
他にも様々な剣が届いていた。
ロードナイト専用の甲冑と楯、剣も数本届いていた。
ビーツの腕はやはり素晴らしい。甲冑までロードナイト用の物を作ってきた。
とは言え、単純なストレングスの問題である。騎士レベル99と比較して格段に上昇していた。
ここまでレベルが上がるとかなりステータスが高くなっている。ロードナイトは普通の騎士では持てない物でも持つことが出来た。
しかし指輪がまだ出来上がっていないようだ。
オサムはもう一度ビーツの店に入った。
カウンターにビーツが居り、レンズで何か小さなものを見ている。
「よぉ、ビーツ」と声をかけると
「エリトール様、丁度良いところに」と言い
「リングが出来上がりました、とんでもない硬さでしたよ、苦労しましたわ」
と、4つのリングと3つのペンダントを並べた。
オサムは銀色の方の指輪とペンダントを手に取り裏に彫られた文字を見た。
リムル・デル・エリトールと刻まれていた。
他の物を見るとまだ何も刻印されていなかった。
「ご注文どおりでしょうか?」とビーツが尋ねてきたので
「そうだな、文句のつけようがない出来だ」とオサムは答えた。
「他の指輪やペンダントに後で刻印を入れることは出来るか?」
オサムが訊くと
「1日あれば出来ます」とビーツは答えた。
『ビーツほどの腕の職人が刻印だけで1日も掛かるとはどれほど硬いのだろう?』
オサムはそう考えながら腰のポーチに指輪とペンダントを入れた。
「そうか、その時はまた持ってくるので頼む」
帰ろうとした時に
「あ、ビーツよ、訊いておきたい事があったのだが」とオサムが言うと
「はい、何でしょうか?」とビーツは答えた。
「鍛冶に必要な道具か材料はあるか?例えばミノタウロスの鎚とかだが」
道具で装備の出来が変わるとなれば、ビーツに渡しておかねばならない。
既にビーツにはミノタウロスの鎚3本を始め
グレイトジャイアントの金床
フェニックスのたてがみ
ドラゴンスパイダーの糸
等を渡してある。
そうですね、
「ミラージュシャドウの刀身があれば細かい作業がやりやすいのですが、あとは研ぎに使うユースプリズムの粉ですかねぇ」
と笑いながらビーツが言うので
「分かった、そのうち取ってくる」とオサムは店を出た。
店を出て城へ戻っていくオサムを見ながら
「取ってくるって・・・ミラージュシャドウやユースプリズムっていやぁドラゴン以上のモンスターって聞くのに」
と呆然と独り言を言っていた。
オサムはその日、また朝から甲冑を装備していた。
ビーツの新作でロードナイト専用のかなりの重装甲だが非常に動きやすい。
以前の甲冑とデザインは似ているが、オサムがデザインしたので仕方がない。
しかしその重さはかなりのものだった。
ビーツが言うにはレアアイテムの中でも重いが防御に優れた素材を選んで騎士用の甲冑を再び打ち直したと言う。
それより、数々のレアアイテムをふんだんに使用した甲冑と楯を試したかった。
腰に下げた剣はグランブレイブ、背中に装備するのはロードブレイド。どちらもビーツの新作だ。
しかしまだ装備レベルには達していないため、背中にマールドライヴも装備していた。
またアレシャルの塔へ行き、ある程度のレベルまで上げて帰ってくるつもりだ。
それにロードナイトのレベル1とは言え、騎士との違いを知りたかった。
早速アレシャルの塔で試そうと部屋を出た。
完全装備状態で部屋から出て2階から居りてきたオサムを見て
「また行かれるのですか?」とリムルが寂しそうに訊いてきた
「今回も何日か留守にするけど、安心して待っててね?リジェネリターンの魔石も持ってるし、帰還アイテムもあるから」
リムルの頭を撫でて「多分すぐ戻るよ」と出かけた。
『これ、今までで一番イカツイ甲冑だよなぁ、自分で言うのもなんだけどカッコイイ♪』
と考えながら街を歩いて城外へ出る道すがら
「黒騎士様だ、エリトール様」と声が聞こえたが無視した。
城外へ出てしばらく歩き、ペガサスでアレシャルの塔へ向かった。
塔を目の前にして
「さぁ、グレートドラゴンはどうしようか、今回はやめとこう。ユースプリズムは確か85階層だな」
と独り言をして、塔に入った。
マールドライヴを抜き、楯を持ち階段を降りていった。
ロードナイトの力は強く、騎士用の両手剣でも片手で軽々と扱える。
ゴブリンナイト、レイス、ハーピー、リザードナイト、ミルジャイアント、リッチーと順調に倒し
ヒドラ、ワイバーン、ダークエンジェル、と倒していくと初めのうちは順調にレベルが上っていった。
「よし、この調子だと30階層辺りでレベル20だな。レベル1からだと簡単に上がる」
そしてブラスドラゴンを倒した時にレベル20になった。
考えていたとおりだったが、レベルが上がるごとに相当強くなるのがわかった。
オサムはマールドライヴからグランブレイヴに持ち替え、1日目で40階層のブルードラゴンまで倒した。
41階層は安全階層のため1日目の睡眠を取った。
「さぁ、ここからだな」
既にパーティーを組んでもほとんど誰も来られない場所まで来ているが、50階層のレッドドラゴン、60階層のクリスタルドラゴンを倒した時に気がついた。
「この鎧、自動でHPが回復してるな、楯も相手の攻撃を跳ね返してダメージを与えている」
とんでもないとは聞いていたが、本当にとんでもない装備だった。
その後もう1日休息を取り、70階層をクリアし、ついに80階層のシルバードラゴンの所まで来た。
以前はだいぶ時間がかかったが・・・
シルバードラゴンを切り伏せるまでに半分の時間もかからなかった。
しかし、やはり手強い。
次はゴールドドラゴンだな。と90階層に辿り着いた。
「前みたいに苦労せずに倒せるか?」と呟きながら
付加スキルや剣士、騎士、ロードナイトのスキルを使い、やはり半分程度の時間で倒せた。
「この装備をコピーされたドッペルゲンガーは危ないな、やめとくか、かったるいし」
そして、グレートデーモン、ウィンドチャンク、フフスト、ハミアンと倒した。
ドッペルゲンガーの出現する98階層には降りず97階層で少し休んだ。
そして十分に時間を取ったあと階段を上るとハミアンが復活していた。
「リジェネレートは終わってるな。じゃいきますか?いきますとも!」
などと一人芝居をしながら登っていった。
そして、3往復目にグレートデーモンを倒した時にレベルが50になった。
90階層のゴールドドラゴンの手前でロードブレイドに持ち替えていた。
ロードブレイドはかなりの重量の両手剣のため片手では扱えない。楯は背中に掛けた。
『何回目の対決になるんだったっけ?』と考えオサムはゴールドドラゴンに切りかかった。
勝負は10分もかからずに終わった。
「かなり強くなってるな」
オサムはどんどん戦っていった。
3日掛けて降りた塔を1日程で往復できる。
数日を塔の往復に費やした。
塔を出てきた時レベルは61になっていた。
「十分だな、ビーツに言われたものもたっぷり取れたし」
と日が傾く頃、ペガサスに乗って街まで帰った。
城門の手前に着いた時には日が落ち、夜になっていた。
オサムは換金所に立ち寄り「換金してくれ」とガシャドサっと無造作に晶石をカウンターにぶちまけていった。
「エリトール様、本日は567万9000枚となります」驚きを隠しもしない受付嬢に向かって
「では2万枚だけ換金を、他は預かっておいてくれ」と言って2万枚の銀貨を革袋に入れ、マジックバッグに入れた。
もはやオサムは銀貨を数えていなかった。ただ”十分にある”とだけ覚えていれば良いという量だ。
エリトールの領地から入る収入の数十年分を稼ぎ出している。もはや税収は必要無かった。
オサムは屋敷に戻り
「帰ったよー」と言うと
やはりハロルドが「おかえりなさいませ、お館様」と迎えてくれた。
1階で武器と楯をソファーに立て掛け、広間の別のソファーに腰掛けて
「クイード達3人が居るのなら呼んでくれるか?ハロルド」と言うと
「わかりました」と3人を連れてきた。
いつも時間がずれるため久しぶりに3人の顔を見た。
兜を外し、サイドテーブルに置き
「紅茶を淹れてもらってくれ」とハロルドに言うと、エリスが紅茶を運んできた。
「さて、お前達はどのくらい強くなった?」と言ってじっと3人を見た
「ほう、剣士レベルが皆90を超えているな?」と言うと
3人は
「99で騎士になると決めております、ご主人様のように強くなるために」
と口を揃えて答えた。
「その意気や良しと言ったところか。ところで今俺はどうなっている?見てみろ」
と3人に言うと、3人はオサムをじっと見た。
「ロ、ロードナイト!?レベル61!?」3人が驚いた。
クイード達3人はロードナイトがどういう意味なのかを知っているため、オサムが思っていた以上の反応だった。
「ははははは、俺も頑張っている。エリトール家は閣下の筆頭騎士だ」
一息ついて
「それは、こういう意味でもある、覚えておけよ」紅茶を飲みながら話した。
一辺境伯の筆頭騎士と言うには余りにも強すぎる。そしてオサムはそのことにまだ気がついていなかった。
あくまでも騎士の延長としてロードナイトと言うクラスのことを考えていた。
3人はピクリとも動かず呆然と「は、はい」とだけ答えた。
「では良し、しかし絶対に無理はするな?これだけは命令だ」
そう言って
「すまんが、剣と楯を部屋に持って上がってくれるか?」と3人に言って兜だけを持ち2階へ上がっていった。
3人はその後につづいて部屋に入り剣を武器用のクローゼットに立てかけた。
「ご苦労」と一言言って「みんな、部屋に戻って良いよ」と見送った。
入れ替わりにリムルが入って来て
「おかえりなさいませ、ご主人様」と鎧を脱ぐのを手伝ってくれた。
「こないだと同じ場所に行ってきたんだけど、半分の日数で大丈夫だったよ」
ニコッと笑ってリムルに言った。
「でも、ご主人様が留守の間は寂しかったです」
リムルは自分用の椅子に座り、オサムに寄り添っていた。
オサムが
「リムル、さっきご主人様って言ったな?」と言うと
「はい、エリトール様は私のご主人様ですので」と嬉しそうに答えた。
「俺はもうリムルのご主人様ではなくなる」と銀の一組の指輪を見せた。
「ご主人様ではなくなります?えーと」
リムルは黙り込み、しばらくして
「それは・・・?」と何も言えない状態だった
オサムは小さい方のリングをリムルに渡し
「リングの裏の刻印をみてみて?」と促した
「リムル・・・デル・・・エリトール・・・」
「うん、ビーツに作ってもらってたんだ、気に入ってもらえると嬉しいんだけど」
と言う前に
「ありがとうございます!」とリムルがまた抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと、祝福の儀式はまだ決めてないけど、明日閣下に頼んでくるからさ、それが済めば俺はリムルの旦那様だよ?」
ここまで喜ぶとは思っていなかったオサムは少々面食らった。
「わかっています、わかっていますけど・・・」
リムルは泣きじゃくってしまった。
オサムはそっとリムルの肩を抱いて「俺の中で決めてたことだ、リムルと出会った最初の時からね」と髪を撫でた。
オサムは準備が整ったので伯爵のところに式の事を頼みに行くことにした。
朝食の後、エリスに手伝わせ、”きちんとした格好”とやらに着替えた。
絹の反物を3反持って、銀のリングも握り伯爵の城へ向かった。
城に入り、フルグリフ伯爵家の家令に
「エリトールだが、伯爵閣下にお会いしたい」
と言うと。執事長が呼ばれた。
執事長が
「エリトール様、取次ぎ致しますのでその間、奥の間でお待ち下さい」
と3階の一番奥の間に通された。
「時間があればで構いませんので、お忙しいならまた出直すと伝えてください」
オサムはそんなに長話をするつもりはなかったので、しばらく紅茶を飲みながら待っていた。
「エリトール様、執務室へどうぞ」
と執事長に連れられて伯爵の部屋へ入った。
「閣下、お忙しいところ、ありがとうございます」
オサムがそう言うと
「堅苦しい言葉は要らぬ、用件はわかっておる。前々から言っていた侍女との祝福の儀式であろう?ようやく決めたか」
伯爵にそう言われ
「はい、やっと準備が整いましたので、近く儀式をお願いしたいと。」
オサムは久しぶりに会う伯爵の前で少し緊張していた。
伯爵はその様子を見て
「まず座れ、先に先刻の戦の件、よくやった。先方から礼を言われたわ」
伯爵は笑いながら
「一騎駆けで400の軍勢を斬りさばいたらしいな、恐ろしい奴め」と言った。
「で、儀式だが、今週の末でどうだ?早い方が良いのであろう?」
と伯爵に訊かれ
「出来れば早くに、と考えております。その前にお見せしたいものが」
とオサムはバッグを確認し
「机の上、よろしいでしょうか?」と立ち上がった。
「なんだ?」と伯爵が楽しんでいるのが分かる。
オサムは反物を出し
「実は、またその・・・死にまして、向こうから持って参りました」
と絹の反物を3つ置いた。
「これは生地か?」と訊かれ
「はい、絹の反物です」とオサムが答えると
「絹!?絹と言ったか?」伯爵は驚いた。
「よくもまあ私を驚かせるやつよ、この国では絹は金と同じ価値がある」
と伯爵に言われて
『それ、なんか聞いたことがあるな、歴史だったか?』とオサムは考えた。
「それなりに高価な品ですので3反しかお渡しできませんが、お収め下さい。私の分は屋敷に置いています」
オサムが言うと
「そうか、しかし絹とはな・・・またなんぞ礼をしよう」と伯爵が言った。
「あと、これを儀式で使いたいのですが。鍛冶師に作らせました」
2つの指輪を机の上に置いた。
自分とリムルの分の銀色の指輪だ。
「側室ゆえ銀にするしか無いな、そこはまぁ・・・」と伯爵が言葉を止めて
「これは銀ではないな?何で作った?」机を乗り越えんばかりの勢いだった。
「シルバードラゴンとゴールドドラゴンの角と鱗です」とオサムが答えると
「魔法物品だな、付加スキルのドラゴンブレスはレベルが要らぬ、こんなものを作ったのか」
伯爵は
「オサムにはいつも驚かされる。風呂もこの城に作ったぞ?また見に来い。しかし、国宝級の代物を侍女に渡すのか?」と訊かれ
「町娘、侍女ゆえに正室として娶れませぬので、せめて最高の品をと思い毎夜戦いました」
オサムはそう言うが誰にでも出来ることではない。
シルバードラゴンでさえ倒せるパーティーは伯爵の領内には居ないだろう。
伯爵はふぅ、と一息つき
「それほどまでに想っていたか。まあよい、指にはめてしまえば誰にもわからぬしな」
「ん?シルバードラゴンとゴールドドラゴン?」と伯爵は言いオサムをじっと見た。
「ロ、ロードナイト!レベル61!?オサムお主一体何をした!?」
伯爵は今までで一番大きな声で驚いた。
「少しばかり鍛錬をと思いまして」とオサムが微笑むと
「まったく・・・お前は。今この世界に居るロードナイトはお前だけかもしれんぞ?
過去に伝説を残しておる者はほとんどがドラグーンかロードナイトらしい。
お前もまた伝説を残す騎士となるか。なるであろうな。」伯爵は溜息をついた。
「ロードナイトとはそれほどのものなのですか?騎士の延長だと思っていましたが」
伯爵の驚き様で自分がそれほどの者なのか、若干分かった気がした。
「そういうことでしたか、しかしエリトールは伯爵閣下の筆頭騎士に変わりは有りません」
オサムはきっぱりと言い切った。
伯爵は膝を叩いて
「わはははは!そうか!世界最強の騎士が我が筆頭騎士か!」
そう言って大笑いした。
「私は他の者の領土を求めて戦はせぬぞ?その力は何に使う?」
伯爵は好奇心からではなく、純粋にオサムに尋ねた。
それに対する答えは決まっている。
「閣下と領民全てを守るために。そのためだけに剣を振るいます」
オサムは何の含みも持たせずに答えた。
「そうか、お前のその優しさと誠実さは道を間違えさせぬだろう。ロードナイトやドラグーンは一国の軍を相手に出来る者と聞く、十分に注意せよ」
伯爵は真剣にオサムに言った。こればかりは間違える訳にはいかない。
そしてまた一息つき
「ロードナイトの件はわかった。本題に戻るが週末に祝福の儀式を行う、城の大広間にて。質素にだがな、すまぬ」
と伯爵はオサムに詫びた。
「いえ、城の大広間をお貸し頂けるのならリムルも喜びましょう。感謝致します」
オサムもリムルも感謝こそすれ謝られる覚えは無い。
そして伯爵は
「当日の昼に城から迎えを出す。着替えも城で行う、そのつもりで待っておれ」と、話を終わらせた。
オサムは
「はい、ありがとうございます。」と言って伯爵の部屋を出た。
ドア越しにでも聞こえる伯爵の笑い声にオサムは嬉しさを覚えた。
オサムは屋敷に戻りリムルを呼んだ。
「今週の末に城の大広間で儀式を行うと言われた。それまでしばらく待とう。」
オサムの言葉に
「お城の大広間でですか!?私にそのような・・・」リムルが言い掛けたが
「堂々とすればいいから、もうリムルは侍女じゃなくエリトール家の者になるんだからね」
オサムがリムルの手を握って言い聞かせた。
「わかりました、それまでは侍女のリムルですが」
と微笑んだ
儀式を前にしてオサムはマジックバッグの中を探していた。
「確か、あったはずなんだけどなぁ?黒い指輪・・・あった!」と取り出した。
それを右手の指にはめて1階に降りた。
「クイードかタキトスかハンビィは居ないか?」
と呼ぶと、クイードがやって来た。
「何か御用でしょうか?二人は今外に出ております」
「試したいことがあってな、今の俺のレベルが見えるか?」
とクイードに訊いてみた。
「えーと・・・あれ?レベルどころか何も見えません。何かされましたか?」とクイードが言うと
「そうか、それならよかった。」と右手の黒い指輪を見せた。
「これはハイドステータスの指輪というもので、自分よりレベルが低い相手に自分のステータスを見えなくさせるアイテムだ」
オサムも偶然手に入れたものだが、どのモンスターのドロップアイテムなのかはわからなかった。
例のごとくクライアンに見せて効果を聞き出したのだった。
クイードは
「そんなものがあるんですね、え?ではご主人様のステータスは誰にも見えなくなるということでは?」
伯爵はロードナイトは恐らく世界でオサム唯一人だと言った。それが間違いでないなら誰にも見えないはずだ。
「うん、恐らくこの国で一番レベルが高いのが俺だからな、これで困らずに済む」
「転職してから街を歩くとジロジロと見られたからな、まあバレても構わぬのだが好奇の視線を浴びたくなくてな」
とオサムは笑って楽しんだ。
明日が儀式の日なのでクリューズやロレーヌ、他の騎士などには出来れば知られたくなかった。
伯爵だけには理由を話して許可を取ろうと考えていたが。
クイードと話をしていると、タキトスとハンビィが3人分の儀礼用の甲冑と剣を持って帰ってきた。
この日のためにビーツに突貫で作らせていた美しい装飾の甲冑と剣である。およそ戦いには向かないものだが必要らしい。
「間に合ったか、ギリギリセーフだな」オサムがそう言ったが
3人には日本でしか通用しないその言葉の意味がわからなかった。




