16話 終わりと始まりと転職
死んだと思うとすぐにオサムは目を覚ました。
「わかっていても負けて死ぬってのは嫌なもんだな」と愚痴り
「カウンターに行くか」と起き上がった時、異様な景色に戸惑った。
「え?また俺の部屋じゃね?」体を確認したが、甲冑も武器も何もかもない。
「どういうことだ?」リジェネリターンのペンダントもない。
あるのはあの最初の日から肌身離さず付けている不思議なペンダントだけだった。
「日付は!?」と確認すると前のときと同じだ。
『つまり、俺はまた死んで、こっちに送られた?』オサムは少し考え。
「よし!」と立ち上がった。
『また1ヶ月あるってことだな?向こうに戻れば恐らく換金所で目覚める。タイムラグはないはずだ』
オサムはまず必要なものを購入するためにリストを作っていった。
今回は向こうの世界で不便だと感じていた物も入れておこう
・防刃系装備と素材
・専門書
・筆記用具
・絹や綿の反物
・リムルのために鏡を数種類、化粧道具
・装身具や時計
ウールばかりだったので綿や絹の服が欲しかった。筆記用具もある程度追加したい。
専門書は絶対に多いほうがいい。向こうでの時間はこちらよりも忙しくない、時間の使い方はほぼ自由だ。
そこでオサムは思った。
『この世界の昔の貴族というのは本当に時間を持て余していたんだな』と。
冒険もなく戦争も無い時代と言うのは文化が花開く、やはり暇人が居てこそ文化は発達するのだ。
それはともかく出来るだけ実用的な専門書が必要だ。ハーブ等の素材の辞典も要るだろう。
建築や土木等の屋敷の改装に必要な書物ややはり料理の本。神話や物語も有ったほうがいい。
そしてデザイン関係や武器や防具の写真や画像入りの本。簡単な化学の本も有った方が良いか?
高価な書籍になるに違いないが、幸いなことに預金を使う前の日に戻ってきている。予算は余り有った。
ということで、ネット書店やネットショップ、ネットオークション等を使ってかき集められるだけかき集めた。
今回のバッグは丈夫なカーボンファイバー製のトランクにした。向こうでバラして素材にするのである。
「しかし、こっちの世界では何もすることがねーなぁ」
と言いながら暫くの間品物が届くのを待つことにした。
時間を繰り返すのであるから、当然テレビも同じ番組しか無い。
オサムは買い物と勉強で過ごすことにした。何にせよ知識は有ったほうが良い。
久しぶりにジャンクフードでも食いに行くか。
と考えて寝間着に使っている大きめのジャージからシャツに着替えようとしたが、肩が入らない。
Tシャツも余裕があったのにかなりピッタリとしている。
「あれ?俺こんなに筋肉あったっけ?」と鏡で確認すると異常に鍛えられた体となっていた。
『あれだけ重い装備で戦ってたしな、まぁ問題ないか、もう着ない服だし』と考えて諦めることにした。
流石にジーンズが入らないと困るが、幸いそれはなかった。
ウエストは全く脂肪が無くなり、全身筋肉の鎧と化していた。
自分で確認して見ても、ボディビルダーとまでは行かないまでも体操選手程度の筋肉は付いていた。
「あと3週間か、リムルに会いたいなぁ」ベッドに寝転びながら独り言を言った。
「こっちの世界じゃ俺なんか誰も相手にしてくれないけど、帰ったら結婚だ」
「ザマー見やがれ!リア充共!俺は王国一の騎士だ、黒騎士だー!」と言い
「あ、そうだ」と思い出した。
ゲーム関係の本も買っておこう。よく考えれば実在のものより空想の武器の方が良い。
他には女性のファッション誌も少し買っておこう。これは写真が多いものが良い。向こうの世界に有うデザインのもの。
オサムはバイクで中古書店や書店を回って20冊程度あまり邪魔にならない物を買った。
「バイクって馬より揺れないな、違和感がある」と走らせていた。オサムは馬の方に慣れてしまっているようだった。
まずは家に帰り、荷物を全て入れてしまおう。あとは待つだけで良い。
今回もオサムは全財産をほぼ使い切った。食事代と飛行機代を抜くとほとんど残らないだろう。
荷物が大きいので特別料金を割増で支払った。2席分の料金だ。
また「その日」がやって来た。今回も同じ便に乗り「その時」を待っていた。
「すみませんCAさん、食事と飲み物を頂けますか?」と頼んで食べていた。
食事が終わり大体の時間がきたので窓から外を見ていた。
すると、またエンジンから煙が出てきて火を吹いた。
慣れてしまっているオサムにとっては何の恐怖も感じない。
向こうの世界に戻れるだけだ。
確認のために墜落の最後まで冷静に観察していたのだが、海面と直角に落ちた。そして周囲に島のようなものも無かった。
気がつくとオサムは換金所のリターンゾーンに帰ってきていた。
周りを見渡してトランクを見つけて手に取った。
「よし、帰ってきた」とオサムはトランクを転がしながら換金所のカウンターへ行った。
周囲から「黒騎士だ、エリトール様だ」と声が聞こえてくる。
「換金してくれ」とザラザラゴトゴトとモンスター晶石をカウンターに出していった。
冒険者達はザワザワと騒ぎ出した。
オサムはそれを無視して「鑑定してくれ」と続けた。
「ボスモンスターばかりですね・・・アレシャルの塔ですか?」と訊かれ
「そんなところだ、100階層でグレートドラゴンにやられた」と答えたがスルーされた。
しかしカウンターの受付嬢が
「ド、ドッペルゲンガー!?ハミアン?フフスト?ゴールドドラゴン?」
と驚きながら調べていった。
「合計で36万8300枚になります・・・」
それを聞いていた冒険者たちが騒ぎ出した。
オサムは「ち・・・うぜぇな」と呟き「今回も預かっていてくれ、多すぎる」と伝えた。
そして軽々と本が詰まった旅行トランクと他のものが詰まったトランクを持ち、屋敷へ帰ることにした。
屋敷に着き「帰ったよ」と一言だけ言うと
ハロルドが
「おかえりなさいませ、お館様」といつものように迎えてくれた。
オサムはこの時「帰ってこれたんだ」と言ったが、異世界の方に慣れてしまっていたようだ。
リムルも駆け寄ってきて
「おかえりなさい、ご主人様、お待ち申し上げておりました」
と笑顔で荷物を持とうとした。しかし重すぎて持ち上げられない。
「こんなトランクお持ちでしたか?見たことのないものですね」とリムルに訊かれ
「うん、ちょっとね」とオサムはごまかした。
オサムは
「それより早く部屋へ戻ろう。リムルに見せたい物がある」
と言って階段を上がっていった。
リムルはオサムの後を付いていき、先に回ってドアを開けてくれた。
「んしょ・・・」とトランクを置き
「実は、リジェネリターンの途中で前の世界に戻ってた」とオサムは打ち明けた。
リムルを含め極少数の者しか知らない秘密である。
「そうでしたか、ではまたあちらのものを?」とリムルが言うので。
オサムは本ではない方のトランクを開き
「うん、今回はこれだけ、あと身につけられるものは身につけてきた」
と鎧を脱いでいった。
「そのトランクは寝室のクローゼットにそのまま入れておいてくれないか?開いたままで良い」
リムルに言うと、運んでいった。本の方はリビングに置きっぱなしにしていた。
「1週間以上ダンジョンで寝起きしたんで疲れてたけど、あっちで1ヶ月暮らしたからね」
と笑い
「リムルが居ないんで寂しかったよ。」と素直に言った。
帰ってきた今と比べるとまさに惰眠を貪っていた。
一通りの買い物を済ませると、ひたすらネットでの情報集めだ。
食い物はジャンクフードかコンビニ弁当、ピザ。
普通なら使い切れない額を一月で使い切れるのは楽しかった。
オサムは夕食を済ませ、風呂に入り、一息ついて持ってきた本をテーブルに並べて読んでいた。
専門用語が多数出てくるので、辞典もついでに買っておいて良かった。
一通り目を通し、内容を把握して項目毎に整理して書斎の書棚に並べた。
オサムは寝間着に着替えてリムルを呼んだ。
「リムル、ちょっとこっちおいで」とトランクの場所に呼んだ。
「はい、これが鏡ね、後は絹や綿の反物を沢山買ってきた。これで服を作らせよう」
とリムルに鏡と反物を渡した。
「絹ですか!?伯爵様も持っておられませんよ?」と言われたので
「うん、そうだね。だからいくつかは閣下に献上するつもりだよ」と答えた。
実際この国ではウールが多く、南方の国を経由して綿が入ってくるが、絹はほぼ手に入らない。
このあたりは西ローマ帝国崩壊初期のヨーロッパと中世末期のヨーロッパが混在している。
コインにしてもシュレル銀貨や青銅貨、黄銅貨は鍛造したかのように出来が良いが、タイン銀貨や金貨は重量貨幣のように出来が悪い。
剣と弓で戦っているかと思えば、魔法の力で怪我や病気はほぼ根絶されている。この世界はごった煮の状態だ。
一度世界の地理や経済システムを知る必要があるな、とオサムは考えた。
フルグリフ伯爵はライツェン国の有力諸侯であり、ライツェン国は大陸西側の北方、無理に言えばドイツからポーランド辺りである。
情勢は近世ヨーロッパに似ており、大陸東南にはグリーシア帝国と呼ばれる東ローマ帝国やオスマン帝国のような大国があるらしい。
ただし、大航海時代には達しておらず船は貧弱で別の大陸は知られていない。
東の帝国シャングールは中国に当たり、文明が全く違い、絹や陶磁器がもたらされる。
海のシルクロードは無く、陸のシルクロードのようなものはある。
「で、この鏡はよく見えますね、全く歪みが無い鏡なんてあるんですね?嬉しいです」
リムルは喜んだ。
「他にも色々あるんだけど、また今度でいいよね?」オサムがリムルに言うと
「はい、今はこれだけで十分です。いえ、ご主人様がお帰りになられただけで」
リムルは嬉しそうに鏡を抱きしめた。
「じゃそれをリムルの部屋に置いておいで?」とオサムは言い
「ちょっとベッドのほうでゆっくりしたい。寝間着を持っておいでね?」と続けた。
『そうだ、ロレーヌ様に買ってきたスイーツも早めに渡さないと』とオサムは考え
リムルを呼んだ。
「はい、なんでしょう?ご主人様」リムルは寝間着に着替えやって来た。
「すまないが少しだけ子爵様の屋敷に行ってくる。」
オサムはゴソゴソと防刃チョッキと防刃スリーブ、手袋と種類の違う菓子を3つ手にした。
リムルは
「わかりました、すぐお戻りに?」と訊いてきたが
オサムはとりあえず失礼のない服装に着替え
「じゃ行ってくる。すぐ戻るからこの部屋に居てね?」
と言うと出ていった。
歩いて1分も掛からない距離なのですぐに到着した
「エリトールです」と言うと執事が扉を開けてくれた
「いらっしゃいませ、エリトール様。子爵様に御用ですか?」
と訊かれたが
「いや、ロレーヌ様に、急で申し訳ない」と答えた
執事は
「わかりました、お呼びしてまいります」そのままロレーヌの部屋へと向かったようだった。
「オサムか、何か用か?」と部屋着で出てきた。
ゆったりした服装だが色気を感じさせる、そんな部屋着だった。
ロレーヌを見て呆けている場合ではないのでオサムは頭を切り替えて
「少し二人でよろしいですか?」と言うと
「構わんが?ではその部屋で」と休憩室へ連れて入れられた。
「実は、今日死にました」オサムが単刀直入に言うと。
ロレーヌは
「ん?どういうことだ?」と言うので
持ってきたものをテーブルに置き
「こういうことです、前の世界に戻っていました」とオサムは説明した。
「そういうことか、ではこれらはあの・・・菓子か?3つあるぞ?」
とロレーヌは笑顔になった。
「そうです。今回もお薦めのものを持ってきましたが、あとこれも」と防刃ベスト等を見せた。
ロレーヌはすぐに理解したようで
「刃を通さぬ布か?」と言うので
オサムは
「そうです。伯爵閣下にお渡ししたものよりは軽量で防刃効果も少し低いですが」
ロレーヌは
「これは嬉しいな、いや、菓子ももちろん嬉しいが、戦に使える物は助かる」
と行って装備していった。
「うん、これは軽い、これで剣や矢を通さぬとは不思議な布だな。ありがたく頂戴する」
「喜んで頂けて持ってきた甲斐がありました。では用はこれだけですので失礼いたします」
とオサムが言うと
「リムルという侍女がオサムの帰りを待っているのだな?」
ロレーヌは微笑み、
「正室の座はまだ空いているのだな。私はオサムが気に入っている、考えておいてくれ」
と言われ
『本気かな?この人?からかわれているようには思えないけど』オサムは少し考え
「ありがとうございます。ゆっくりと考えさせていただきます」
心中複雑だったが、これほどの美女に好かれているかと考えると、勘違いでも気分が良かった。
「そうだな、今日はもう時間も遅い、帰ってリムルを抱いておれ」
ロレーヌは笑いながら扉を開け
「冒険をしすぎるなよ、また随分と強くなっている。では近々また邪魔するのでそのときはよろしくな」
と見送ってくれた。
一仕事終えて部屋に戻るとリムルが待っていた。
オサムはすぐに寝間着に着替え、ベッドに倒れ込んだ。
「おいで、リムル」と呼ぶと、リムルがベッドに入ってきた。
帰ってきて最初の朝が来た。
ダンジョンのことを思い出したが、やはり最後のドラゴンは一人では倒せないだろう。
後1レベルで騎士のレベル99、つまりは完スト状態になる。
しかし、騎士の次には何かがあるのだろうか?上位転職出来るならそれを見てみたい。
それはそれとして、オサムは廃ゲーマーだ。アニメオタクでマンガオタクでもあるが。
そういう人間がLv98という中途半端なことで気が収まるはずがない。
目が覚めてまずは集めたレアアイテムをクローゼット内に設置してある大型のマジックバッグに移し替えた。
シルバードラゴンとゴールドドラゴンの鱗と角、他にミノタウロスの鎚や他のレアアイテムをバッグに入れた。
リジェネリターンの魔石のペンダントは砕けると思っていたのだが、その様子はない。
恐らく数回使えるアイテムなのだろう。クリスタルドラゴンの再生力を考えると納得出来る。
リムルは既に起きており、侍女服に着替え屋敷の中でエリスに指導をしているようだった。
オサムは
「リムルー、エリスー」と呼び、二人に少し早い朝食を用意するように言った。
『そろそろエリスも侍女として扱わないとな』とリムルだけに任せないようにしよう。
早めの朝食を一人で平らげ、アレシャルの塔に行ったときと同じ装備をし、出かけることにした。
リムルが「え!?どこか行かれるんですか?」とオサムの姿を見て尋ねてきたので
「ビーツのところに用事があるんで、ちょっと行ってくる。その後にやることがあるけど夕方までには帰るよ」
と言ってオサムは出かけた。
自然なやり取りなので慣れてしまっていたが、出かける時に行く場所を告げるのはどうかとオサムは考えた。
「俺って主人だよな?子供じゃねーんだし何故行き先と帰る時間を伝える必要があるんだ?」
独り言をしたが、オサムは常に危険なことをする。仕方がないのかもしれない。
ビーツの鍛冶屋に着き
「ビーツは居るか?」と言うと
「はい、エリトール様」と出てきた。
ビーツはオサムの姿を見て「こんな朝から冒険ですか?で、御用は?」と訊いてきた
「秘密で作って欲しいものがある、婚礼用の指輪だ。9号と20号セットで2組作ってくれ」
と言って、ドラゴンの鱗と角、それにミノタウロスの鎚をカウンターに置いた。
ビーツは
「こ、これは・・・シルバードラゴンとゴールドドラゴン・・・の?」
震える手で触り「エリトール様、貴方は一体?」と言葉に詰まった。
オサムは、ふふっと笑い
「作れるか?ビーツなら可能だろう?」と言った。
「あと、これらのアイテムを使って」とカウンターにレアアイテムをどんどんと置いていき
「5つ目の黒い鎧と強力な楯を作ってくれ。デザインはこれで」と数枚の紙を渡した。
「これだけの素材があればとてつもない甲冑や楯が作れます。わかりました」
とビーツは言った。
「指輪を優先でな、9号2つと20号2つだ、シルバーゴールドを一組、薄い色のゴールドを一組だ」
オサムがそう言うと
「気張って作ります。3日で作り上げますので」とビーツは答えた。
「素材が余るだろうからペンダントも3つ作っておいてくれ」
「ではよろしく頼む。」とオサムはビーツの店を出た。
その後、クライアンの店へ行き、レアアイテムを渡すついでにアイテムの鑑定を依頼した。
オサムがマジックバッグから様々なアイテム、特にヴァレスの革を渡していき、最後に
「これなんだが、使い方がわからん。どう使えば良いのか教えてもらえないか?」
と聞いた答えは”ペガサスの呼び笛”ということであった。
その笛を吹くとゲートが開いて精霊界を通り抜けペガサスがやって来るという。
オサムは「何だそれ?」と言ってしまったがかなりのレアアイテムということだった。
そして馬で行くより早く、繋いでおく必要も無いという便利な物なので早速使うことにした。
アレシャルの塔に行くには丁度よい。
城外へ出て少し歩いた場所でオサムは”ペガサスの呼び笛”を使い、ペガサスを召喚した。
目の前に舞い降りたペガサスを見てオサムは「おぉ」とだけ声を出した。
「これ、乗れるのか?」と言いながらもオサムはそれに騎乗し、アレシャルの塔まで飛んだ。
流石に早い、30分もかからず到着した。
通常は徒歩で2日の距離だがこれを使えばかなり短縮出来ることが分かった。
オサムはペガサスを撫で、空へと帰した。
「さーて、完ストすっか」と塔に入っていった。
「20階層まで行けば99になるだろう」
とマールドライヴを最初から装備して斬り込んで行った。
「流石にまだ誰も居ないか。」と言いながらどんどん倒し降りていった。
以前よりもレベルアップしているオサムは簡単に降りていくことが出来た。
「レベルは・・・」と自分のステータスを見ると20階層ではまだ足りない。
オサムは「ブラスドラゴン位まで倒さねーと無理っぽいなこりゃ」
と呟き、ミノタウロス、メデューサ、ゴーレム、ペガサス、グレイトジャイアントと倒し
ホルドック、ストーンデビル、ダークオネス、ブラッドハウンドキングを倒した時に
レベルが99になった。29階層でのことである。
「ついでだし、ブラスドラゴンも倒しておくか」簡単に言うと
30階層まで降りて倒した。
そしてその階のワープポータルで地上へ戻った。
塔から出るとまたペガサスを呼び、街の外まで戻った。
「ペガサスの呼び笛か、かなり便利なアイテムだな。幾つか取っておこう」
オサムは簡単に言うがアレシャルの塔の地下24階層のボスモンスターである。
それなりには苦労するが、晶石を放置しておけばリジェネレートするため、何度も倒し続けることにした。
その脚で換金所に向かうと、取ってきた晶石を出し換金した。
30階層までのボスを全て倒した金額は1万9500枚だった。
「では銀貨3万枚を出してくれ。」と言って受け取り少し考えつつ「転職は可能か?」と訊くと
「えーと、エリトール様は既に騎士でして・・・」とじっと見られると
「き、騎士レベル99・・・」と受付嬢は絶句した。
「それではあちらの転職カウンターへ」と言われ、銀貨の革袋をマジックバッグに入れてそのカウンターへ向かった。
わけが分からず「騎士から転職したい」と伝えると
「レベル・・・99ですね?ロードナイトかドラグーンですが、初めてです」と言われた。
オサムは「ロードナイト?ドラグーン?わからんが、まあ良い」とよく考えずに
「ロードナイトで良い。頼む」とオサムが言うと
「ではあちらの部屋に入り儀式を」と案内された。
儀式を行うと言われて見た扉は騎士になった時に入った扉だ。
受付の者には驚かれたが通常の転職と変わらないのでは?とオサムは考えた。
儀式自体は剣士から騎士へ転職する時と何も変わらなかった。
とにかく儀式を済ませ、オサムはロードナイトとなった。
ステータスを見ると
ロードナイトレベル1 HP14852となっていた。DEFやSTR、AGI等のステータスもかなり上昇している。
「レベル99の騎士よりステータスが高くなるのか」と呟きステータスを閉じた
「何か変わったか?レベルアップした時と同じようなもんか?わからん。まあ良いかそのうち分かるだろう」と気にしないことにした。
オサムはとりあえずビーツに聞くことにした。ロードナイト用の装備があるのかどうかを。
早速ビーツの鍛冶屋に行き
「ビーツ!居るか?」と言うと「はい、エリトール様」とビーツが出てきた。
「さっきロードナイトに転職した。ロードナイト用の装備はあるか?作れるか、というのが正しいのかわからぬが」
と銀貨3万枚と今日取ってきたレアアイテムを全て渡した。
「ロードナイト・・・」とビーツは暫く何かを考えていたが「わかりました」と答えた。
「初めてになりますんで、少々期間を頂くかもしれませんが」
と言われ、やはりロードナイトのことはビーツでも分からないのか、と諦めた。そのうち分かるだろう。
「かまわんよ、今の装備でも十分戦えるのでな、ではとりあえず頼んだ」
と言うとオサムは店を出て、屋敷に戻った。
「帰ったよ」と屋敷に入るとやはり
「おかえりなさいませ、お館様」とハロルドが出迎えてくれた。
「リムルは?」と訊くと「今はお館様の部屋に」と言われたので自分の部屋へ戻った。
「あ、おかえりなさい、ご主人様」とリムルは気付き
「今日は早いお帰りですね?どちらに?」と訊かれ
「ちょっとアレシャルの塔に。あとはビーツの店と換金所だな」
オサムは淡々と答えたのでその事の重大さにリムルは気付かず
「そうですか、お疲れ様です」ニコリと笑った。
オサムは甲冑を脱ぎ、無造作にクローゼットに仕舞った。
まだ昼の3時頃だが、部屋着に着替えてベッドに寝転んだ。
「リムルー、添い寝してくれる?そのままで良いから」とオサムが言うと
リムルはベッドに入ってきた
「少しの間休ませてね」とオサムは仮眠を取った。
リムルはオサムの横でいつまでも寝顔を見ていた。




