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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

リュクレース王女編

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42/50

42・次なる戦い

 食堂に現れたリュクレースは元の状態を思い出せないくらい、醜い顔をしていた。
 例えるなら潰れたカエルの顔を思わせる。


「お主は誰じゃ?」


 王様が震えた声を出す。

「はっ——」

 俺はその言葉に思わず吹き出してしまう。
 そりゃそうだろ。だって実の父親でさえ分からないんだぜ?
 今のリュクレースを見たら仕方ない部分もあると思うが。
 廊下から兵士がやって来て、リュクレースを羽交い締めにした。


「あなた達! 誰にこんなことをやっていると思っているのですか!」


 もちろん、リュクレースは藻掻もがき抵抗した。
 しかしか弱い細腕では兵士達の力を振り払えるはずもない。
 それでも抵抗を続けていて、なかなか部屋から出ようとしなかった。

 だが、その時リュクレースは見てしまうのだ。
 鏡に映った自分の顔を。

「キャアアアアアアアア!」

 甲高い悲鳴。
 悲鳴が止むと、リュクレースは抵抗を止め肩を項垂れた。
 瞳の色は死んだようなくすんだ色をしている。

 そのままリュクレースは部屋の外まで連れ出されてしまった。

「……今のはなんだったんだ?」

 領主の一人が口を開く。

「なあに、侵入者じゃろう。じゃが安心して欲しい。城の兵士はどれも優秀な者ばかりじゃ。お主等を守り通すじゃろう」

 そう言って「ホッホホ」と笑い声を上げる王様。

 ——愚かな者だな。
 結局、王様は自分の娘のことさえ外見しか見ていなかったんだろう。
 心を理解していなかった。
 本当に思い通じている親子なら、いくら醜い姿になっているとはいえリュクレースに気付いたのかもしれない。

「悲しい物語だ」
「んー? お兄ちゃん、なんか言った?」

 奇術都市の領主が覗き込んできた。
 場が騒然となっているが、こいつだけは自分のペースを崩そうとしない。
 なんだよ、この強キャラ感。強キャラは俺一人だけで十分だ。

「なんでもない」

 と俺は奇術都市の領主の頭にポンと手を置いた。
 周囲を観察しながら、昨晩——俺がやったことを思い出す。


 ——変装の超能力。
 今でも俺は金髪イケメンの男の顔・体になっているわけだが、これは他人に対してもかけることが出来る。

 昨晩、俺はリュクレースの部屋に忍び込み、変装の超能力を彼女にかけた。
 別にリュクレースが起きてようが寝てようが、この超能力はかけることが出来る。
 わざわざ寝ている間にかけたのは、彼女の滑稽な姿を見てみたかったから。
 余裕に満ちあふれるリュクレース。
 その余裕は家柄もさることながら、恵まれた容姿によるところもあるだろう。
 そんな彼女の自信をへし折る。
 いや——心さえも破壊する。

 それが変装の超能力を半永久的にかけてやって、リュクレースを醜い顔にすることであった。
 これが俺なりのリュクレースへの復讐。

「ふむ——それにしてもリュクレースはどこに行ったのじゃ? リュクレースは朝食を欠かさないというのに……」

 さっきのカエルみたいなヤツだよ。
 俺は内心ほくそ笑みながら、テーブルに並べられたサラダを一つまみ口に放り込んだ。

  ■

『リュクレース王女誘拐』


 会談を無事(?)に終え、グーベルグに帰って一週間後くらいだろうか。
 領主の屋敷でくつろいでいると、そんなニュースが耳に入った。

「ククク……王女誘拐か。そんなんで済ませるつもりかよ」
「マコトさん?」

 右隣にはメイド服を着させたエコーが。

「……マスター、一体会談でなにが起こったのかね」

 左隣にはこれまたメイド服を着たフラン。

「マスター、悪い顔してる」

 膝の上にはマリーズが乗っている。
 そんな彼女達に向け、俺はニヤリと口角を吊り上げこう続ける。

「今から意外なことを言うけど、リュクレース王女誘拐の件は俺が絡んでいるんだ」


「「「知ってた」」」


 三人がキレイに声を揃えた。
 ん? もっと驚かれると思ったんだけどな。

「マママママコトさんっ! 王女様なんて誘拐したんですか!」
「早く元の場所に戻さないと大変なことになるよっ!」
「マスター素敵。抱いて欲しい」

 だが——ワンテンポ置いて、エコーとフランは慌て出し、マリーズはうっとりとした瞳で俺を見出した。

「まあ話は最後まで聞け。正しくは誘拐なんてしてない。俺はリュクレースの顔を変えただけなんだ」
「顔を変えた? そういえばマコトさん、グーベルグを出る前に変装してましたよね?」
「どういうカラクリなんだい?」

 エコーとフランが興味津々に顔を近付け聞いてくる。

「……実はだな」

 俺は会談で起こったことを三人説明してやる。
 すると三人は納得したように「ほえぇ〜」と声を出して、

「マコトさんの力ってやっぱり万能すぎますね」
「なんのためにそんなことをしたんだい?」
「マスター、素敵。抱いて欲しい」

 と続けた。

 ——リュクレース王女誘拐の事件はどういうことだろうか。
 無論、誘拐はされていない。
 しかし元の顔をしたリュクレースが消えたのは事実である。
 リュクレースの顔が醜くなったことには気付いたのだろうか? リュクレースが身に付けているランジェリーとかは変えていないし。
 それとも王様達はまだリュクレースの顔が変わったことに気付いていない。だから『消えた』という事実だけを捉えて、誘拐されたと認識しているのだろうか。
 分からないし、そのあたりの事情はどうでもいい。

「どちらにせよ、こんな重大ニュースが民衆にも漏れるなんてことは、相当サザラント王国はごたついているだろうな……」

 グーベルグはまだマシだが、王都の方では王女誘拐というニュースを聞き混乱しているかもしれない。
 慌てふためき、王都の人間達が不安に顔を滲ませていることを想像するだけで、ブルッと小さく震えてしまう。

「領主様——」

 そんなことを考えていると——入り口の扉から本職のメイドが入ってきた。

「どうした?」
「領主様にサザラント王からお手紙が届いております」

 手紙?
 つい先日会談があったのに、まだ言いたいことがあったのだろうか。
 疑問に思いながらもメイドから手紙を受け取り、封を切った。

「ハッ! また面白いことになったみたいだな!」

 手紙の内容を読み、思わず笑みが零れてしまう。
 そこには……、


『サザラント最強決定戦のお知らせ

 王女のリュクレースが誘拐された、というニュースは貴殿にも届いておると思います。
 さらにまだ極秘事項ですが、騎士団長も遠征先でモンスターに殺害されてしまっています。
 今、サザラントは未曾有の危機です。
 そこで軍事力強化のためにも、サザラント王国内で最強の者を決定しようと思います。
 優勝した者には名誉とそれ相応のポストを約束します。
 ご検討くださいませ』


「一体、それはなにかね?」

 フランが横から覗き込んでくる。

「サザラント王はご乱心のようだぞ!」

 ——リュクレースどころか、騎士団長が死んでいることも手紙でバラすとは。
 国も王様も混乱し、情報規制をやっている余裕がないんだろう。

「よし、この決定戦に出場するぞ——」

 俺は立ち上がり、後ろを向いて窓から外を見た。

 ——最終復讐対象、サザラント王。
 この決定戦で優勝し、サザラント王の首さえも取る。
 あまりにスムーズにことが進んでいるため、口元の笑みを戻すことも出来なかった。
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