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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

リュクレース王女編

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31・就任演説

「ふう……ギルドマスターの椅子ってのはなかなか座り心地がいいんだな

 さっきまでフランが座っていた場所であろう。
 ギルドマスターの部屋の奥にある大きな机と椅子。
 俺は椅子の背もたれに体を預け、肘掛けに手を置いて腰を下ろした。

「それはそうだろう。その椅子に座りたいがため、今いる職員や冒険者で頑張っている者も多く——」
「口を慎みたまえ、フラン。お前は今、俺の奴隷だぜ?」
「——っ!」

 フランがなにかを言おうとするが、寸前のところで言葉を飲み込む。

 ——ちなみにフラン。今はメイド服を着させています。
 特段仕事をさせるつもりはないけど、やっぱ女の子にメイド服を着させるのは王道でしょう!

「敬語を使いたまえフラン。『ギルドマスター様』にな」
「は——はい。わかりましたギルドマスター」

 顔を歪ませながら、棒読みでそう口にするフラン。
 メイド服を着させた巨乳の女の子にそんなことを言われれば、さすがの俺でもクラッとなる。
 だが。

「ギルドマスター様だ。ちゃんと様を付けろ」
「——ギ、ギルド——」

 歯軋りをしながら、なんとか声を絞り出そうとするフラン。
 フランとしてはこれ以上ない屈辱だろうな。
 さっきまでギルドマスターだったのに、ギルドを乗っ取られてしまって。
 だがその表情が俺の嗜虐心しぎゃくしんを煽る。

「ほらほら。早く言いなさい。そうしないとまた触手だよ?」
「ギ、ギ、ギルドマスター様!」

 短い言葉ながら、息継ぎせず一気に言い放つフラン。

「〜〜〜〜〜〜っ!」

 その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
 ちょっとイジめすぎたが。
 しかし——そんな顔を見ていると、ますますイジめたくなってくる。

「あっ、やっぱそんな呼び方しなくていいよ。さすがに可哀想だし」
「ほ、本当か——本当ですかっ?」
「ああ。『ご主人様』と呼んでくれればそれでいいよ」
「さらに悪くなったっ?」

 さて。
 フランをイジめて楽しむのも良いけど、やっぱりギルドマスターになったからには仕事をしなければならない。

「教えてくれ、フラン。ギルドマスターってのはなにをするんだ?」
「……そんなことも知らずに、ギルドマスターになったんですか」

 はあ、と溜息を吐いてフランは得意気にこう続ける。

「良いですか。ギルドマスターというのは一見華やかな仕事のように思えるが、雑務も多く非常に面倒な仕事です。具体的なものといたしましては多方面の会議の出席であったり、決算書の確認。他の街のギルドと折衝しないといけない時もあるし、時には率先して建物内部の掃除もしなければならない。その他にも——いや、今から言うことが一番大変なのかもしれないね。多くのギルド職員や冒険者をとりまとめなければならない。カリスマを失ったギルドマスターは信頼を失い、一気に失脚する。そうならないためにも職員や冒険者とこま目にコミュニケーションを取ったり、時代の流れに沿った施策・企画を練らなければならない時もあり……」
「あっ、やっぱ良いわ。面倒なことは他の人に任せるから」
「なんで説明させたのっ?」

 こうして聞いていると、やっぱギルドマスターってのは面倒だしフランがそれに誇りを持っていたことがありありと分かる。
 だって何度か口を挟もうとしたけど、怒濤の勢いで説明を続けるから困惑しちゃったんだもん。

「マコトさん、どうしてギルドマスターになろうとしたんですか?」

 隣にいるエコーが尋ねてくる。

「そりゃあ……」

 ——なんとなくだ。
 勢いとノリでなった、とも言える。

「……色々試したいことがあってな」

 でも本音を言うと二人に軽蔑されそうな気がしたから、なんとなく意味深なことを言ってみる。

「試したいこと?」

 フランが首をかしげる。

 ——試したいことというかやってみたいことがあるのは事実だ。
 冒険者ギルドに革命を起こしたい。

「ああ、そのために俺はギルドマスターになったんだ」

 ドヤァ。
 とはいっても、ギルドを良くしたいなんていうことは考えておらず、九割くらいは好奇心なんだが。

「その前にみんなに挨拶しなくちゃな」

 よいしょと。
 名残惜しいがギルドマスターの椅子としばらくお別れだ。
 立ち上がり、フランとエコーと一緒に部屋を出て受付があるロビーへと向かった。



「諸君。俺が今日からグーベルグのギルドマスターとなった」

 受付のロビーに職員を呼び、みんなの前で演説を始める。
 冒険者のヤツ等は呼んでいないんだが、話を聞きつけて集まっている者も多く、ロビーは人で溢れかえっていた。
 中に入れなかったヤツも、窓の外から眺めていた。

「俺がギルドマスターってことは、ギルド内で一番偉いってことだ。職員も冒険者も俺の言うことを聞くように」

 よし、我ながら無難な演説だ。
 人前で話すことは本来苦手なはずなのにな。
 それなのに——辺りから、

「ブーブー!」
「はあ? あの美少女ボクっ娘のフランちゃんがギルドマスターから失脚? しかもあいつの奴隷に? お前下手な真似ばっかしってと殺すぞ」
「フラン様がギルドマスターの方が良かったのに」
「殺す殺す殺す殺す!」

 心ないブーイングや野次が飛んでくる。

「口を慎むように。今度そんな口を利いたら罰を与えなければならないかもしれない」

 ——と俺に一番大きな声で文句を言ってきたヤツをエネルギー弾で吹っ飛ばす。

「ぐぼぉっ!」

 エネルギー弾が直撃し、後方にいる何人かを巻き添えにしながら壁に激突した。

「……もう手が出ているじゃないか」

 と隣で控えているフランの呟き声が聞こえてきたが、あまりにも的外れなので無視である。

「まあ……いきなりギルドマスターが変わって戸惑う者も多いと思う」

 実際。
 いくら優秀な俺という人間がギルドマスターになったとしても、環境の変化に戸惑うのは仕方のないことであった。
 元の世界では、担任が育休に入って急遽他の先生が担任になったくらいでクラス中が騒々しくなったしな。
 そう考えれば、こいつ等の反応も当たり前なのだろうか。

「しかし安心して欲しい。俺は今日からギルドに革命を起こそうと思う。その革命はよりギルド——そしてグーベルグを良くするものだ、と確信している」
「でかい口叩きやがって! そんなことを言う——ぐほぉっ!」
「口を慎むように」

 再度、エネルギー弾で他のヤツを吹っ飛ばしたら、心なしかブーイングや野次が収まったように思える。
 きっと俺の演説に心を打たれた者が多いからだろう。
 この調子だ。

「その革命の一つで——このギルドは明日から」

 溜めて、一気に吐き出すようにして。


「ランク制を廃止する!」


 …………。

 あれ? 意外に反応が薄い?

「ランク制を……廃止……?」

 静かなロビーの中、職員だか冒険者だか知らないが一人が反応する。

「そうだ」
「そ、それはどういうことかねっ?」

 一番慌てるようにして、俺の服の裾を掴んできたのはフランだ。

「そのままの意味だ。SランクとかAランクとかくだらない。明日から例えHランクでもSランクのクエストを受けられるようにする」
「なっ——き、君はそれがどういうことか分かっているのか!」

 フランのもの凄い形相で顔を接近させてくる。
 そのフランの言葉を皮切りに——俺の言っていることが分かったのか——ロビーが騒ぎ出す。

「ランク制の廃止だと?」
「やった! コツコツランクを上げなくても済むぜ」
「バカか。Fランクのお前がSランクのクエストなんか受けても——」

 なんてことを口々に言い出す。

「静まれ!」

 俺がエネルギー弾を発射させようとすると、みんなは口を閉じ直立の体勢となる。
 おいおい、これじゃあまるで俺が恐怖政治を敷いているみたいじゃないか。
 ちなみに俺の目標は『みんな仲良く』だ。

「……あのギルドマスターさん。質問していいですか?」

 恐る恐るといった感じで有象無象の中の一人が手を挙げた。

「許可する」
「まだ名前を聞いていないんですが? 名前を知らなかったら色々と不便と言いますか……」
「それもそうだな」

 ——ここでマコトと名乗るのが普通だろう。
 そもそも気紛れでギルドマスターになったことは間違いない。
 だけど——俺にはもう一つの『考え』というのも存在している。

 少し考えてから、質問に対してこう応じた。


「俺は——フェイク。ギルドマスターのフェイクだ」
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