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20・激闘——そして決着

 別にアンチ・サイで魔法を消滅させることも出来たし、身体強化の超能力で無理矢理ツタを引きちぎることも出来るけどよ。


「ふ、ふん。ここまで来ただけのことはあるみたいだね」


 動揺を見せてはいけないと思ったのか。

 アリサは腕を組み、


「これで君達を倒せるとは私も思っていないよ。よかろう——ちょっとは本気を出して」

「なにを言っている? 次は俺のターンだろ」


 俺はアリサと同じようにして手の平を向ける。


 その瞬間。

 手の平から触手が現れ、一瞬でアリサ——そして近くにいた部下へと到着する。


「なっ——なんてことだ。君も魔法を……」

「これは魔法じゃないって」


 触手の超能力だ。

 ギルドマスターのフランにも使った技だな。


「さて、お前はこれを無効化する力を持っているか?」

「ふ、ふん! 侮らないで欲しいね。こうやって拘束されても、攻撃出来るから魔法使いは最強なのさっ! くらえ、フレイム・ランサー!」


 アリサが部屋に響き渡るように叫ぶ。



 ——シーン。



 しかし声は虚しく響くだけで、なにも起こる気配がなかった。


「ど、どういうことだい。魔法がふ、不発?」

「まあそういうことだな」


 不発っていうか、アリサの体にアンチ・サイをかけてやった。

 これでしばらく、アリサは魔法を発動することが出来ない。


「さて……と。そろそろトドメといくか」

「くっ……部下には手を出すな! 私の命と引き替えに、部下は助けてくれ」

「そんなこと言うヤツって、なんか策略張ってるんだよな」


 それに——お前の命ごとき、俺にとってはどうでもいい。

 ジリッとアリサに近付き、


「今からお前には死よりも恐ろしい目に遭わせやろう」

「な、なにを——きゃっ!」


 アリサの口から悲鳴が漏れる。

 拘束していた触手が動き、アリサの太股を優しく撫でたのだ。


「——少しだけ目の保養をさせてもらおう」

「へ、変態……あっ!」


 メスの声が聞こえた。

 触手はそのままどんどん侵攻していき、アリサの下着の中まで入り込んでしまった。

 もぞもぞと触手が動く度に、


「あっ、ダ、ダメ! そこは弱点……はあっ!」


 と苦しいのか気持ちいいのか、喘ぎ声のようなものを漏らしていた。


「……マコトさん。マコトさんってやっぱり変態なんですか?」

「はあ? なにを言っている。これは相手を無力化させるために仕方なくやっていることだよ」

「…………」


 エコーはジト目を向けてくる。


 ——それから十五分後。


「はあはあ……まいった。もう許してくれ」


 触手から解放され、床に寝転がっているアリサ。

 体は汗とか液でびしょ濡れになっており、床に水溜まりが出来ている部分もあった。

 服ははだけ、とても先ほどまで「リーダーだ!」と威張っていた面影はない。


「ふう、やっと交渉出来そうだな」

「ここまでして、まだ交渉とか言うんですかマコトさん!」


 そんなリーダーを見て、他の部下も戦意を喪失して、立ち向かってこようとしてこなかった。



「はあっ、はあっ……それで。君は私になにを要求するのかね」


 息を荒げながら、アリサが問う。

 タオル一枚を上から羽織っており、隙間から見える肌が艶めかしかった。


「俺の要求はたった一つだけだ。《ネドトロス》を俺にくれ」

「くれ? ……どういうことだ。てっきり《ネドトロス》を消滅させろ、という話だと思っていたんだがな」


 アリサが首を傾げる。

 無論、クエストの達成条件は《ネドトロス》を消滅させることである。


「最初はそのつもりだったけどな。でも俺の使命のために《ネドトロス》は利用させてもらう」

「君にも使命というものがあるのか」

「そうだ——俺の使命はサザラント王国に復讐することだ」


 そう言うと、驚愕にアリサは目を大きくさせた。

 正しくは『サザラント王・リュクレース王女・フーゴ騎士団長』に復讐すること、なんだがな。

 別にサザラント王国の転覆なんか謀っちゃいない。


「そのためにこの組織が必要なんだ」

「どういうことだ? 確かに……《ネドトロス》の最終目標もサザラント王国に復讐することであったが」

「そこだ」


 何度も言っているが、サザラント王達に復讐することなんて、俺一人でも達成は可能だ。

 超能力で城まで乗り込んで、メチャクチャにするだけだからな。


 だが——それではつまらない。

 俺はもっと愉快で、あいつ等が絶望するような復讐がしたいんだ。


「まず俺は騎士団長とやらに復讐をしたいと思う」

「なっ……サザラントのフーゴ騎士団長か! ドラゴンを単騎で倒した、という伝説も残っている騎士だぞ。そう簡単に敵うわけがない」

「そういうヤツに復讐しようと思っていたんだろ?」

「それはそうだが……というより、私は別に騎士団長に恨みがあるわけでは……」


 ぶつぶつと呟いていたが、細かいところは聞こえていないようなフリをした。

 フーゴ、あいつそんなに偉かったのか。

 そりゃ、騎士団長なんて簡単に成り上がれるわけがないが。


「そのために《ネドトロス》を使う。この《ネドトロス》はサザラントの騎士団からも警戒されているんだろ?」

「その通りだ。本拠地を突き止められ、騎士団から乗り込んでくる前に他の地に活動を移すつもりであったが……」

「やけに弱気なんだな」

「騎士団だぞ? この《ネドトロス》は私が作った最強の秘密結社であることには間違いないが、サザラントの騎士団に敵うわけがない」


 ふむ、このアリサとかいう女。

 冷静に戦況を分析出来る力も持っているらしい。

 ただ容姿が優れ、魔力が高い(それが凄いかどうか知らないが)だけではなく、頭も良いのだろう。


「サザラントの騎士団は総数で五万人とも言われている……《ネドトロス》はせいぜい二百人程度だ。

 騎士団が本気を出せば、この組織なんて簡単に潰れてしまうよ」

「なるほど、な」


 ニヤリ、と口角を吊り上げる。


 ——なんだ、たった五万人しかいないのか。


 いくら《ネドトロス》が弱く、人数が少ないとしても、俺一人で五万人分の力を発揮すればいいんだ。


「戦力は安心していい。俺がいるんだからな」

「……君の話は的を射ないね。一体、なにが言いたい?」


 確かにちょっと話が長くなりすぎたか。

 俺はすーっと息を吸い込んで、



「今日から俺が《ネドトロス》のリーダーだ!」

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