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17・《ネドトロス》

 ……二時間後。


「《ネドトロス》についての情報は大体ゲット出来たな」

 魔法結社ネドトロスについての情報をまとめるとこうだ。


・魔法使いばかりを集めた組織。

・この辺り一帯の地域を中心に活動している。

・金銭やモノを盗んだり、女を襲ったり、やりたい放題。

・資金を集め、ゆくゆくはサザラント王国の転覆を謀っている。

・グーベルグの近くに基地を構えているらしいが、どこにあるかは誰も分かっていない。

・高ランク魔法使いも何人かおり、サザラント王や騎士団も危険視している。


「うむ……意外に大きな組織みたいだな」


 そういや、元の世界では似たような組織もあったな。名前は怖いので伏せるが。


「サザラント王国、ってのは?」

「なにを言ってるんですか、マコトさん! グーベルグもサザラント王国の中にある街なんですよ。サザラント王様がトップ、強力な騎士団も抱えている……」


 エコーは得意気に説明を始めた。

 俺はそれを聞き流しながら考える。


 ——サザラント王国の転覆を謀っている。

 まあ俺もサザラント王とか、騎士団長に復讐を考えているつもりだから、意外に考えは合うかもしれない。

 もしかしたら放っておいても、サザラント王国を滅ぼしてくれるかもしれない。


「……だが! それはダメだ!」

「ひゃっ! いきなり叫びだして、どうしたんですかマコトさん」


 エコーが首を傾げる。

 放っておいたら、魔法結社ネドトロスとかいう魔法使い集団がサザラント王国を滅ぼす?

 まあたかが、一集団なのでそんなこと出来ると思わない。


 しかし……俺の手でそれはなさなければならない。

 別に俺はサザラント王国を滅ぼす、っていう大層な目標は掲げていない。

 ただ俺はサザラント王、腹黒王女、騎士団長に復讐出来ればいいだけだ。


「そのためにも、生活基盤を築かないとな……」


 そのために、高ランククエストをバンバンこなして、資金を稼がなければならない。

 その後、グーベルグに一軒家でも建てて、キレイな奥さんをもらって、たまにモンスターを狩って生きていく……。


 ん?


「これじゃあ、スローライフじゃねえか!」

「マコトさん、なにを叫んでいるんですか?」


 スローライフなんてつまらないこと、俺は大反対だ。

 なんてたって、俺のもう一つの目標は『異世界を好き放題で生きていく』なんだからな。

 そんなごくごく平凡な生活を送らなくてもいいだろう。


「魔法結社……高ランククエスト……サザラント王国……」


 そこで俺にいい考えが閃いた。


「マコト……さん?」


 エコーが顔を覗き込んでくる。


 ——さっさと一人だけでもいいから、復讐しなくちゃな。


 それでこそ、俺の望んでいた異世界ライフなのだ。


「よし、エコー。とにかく《ネドトロス》のリーダーに接触しよう」

「ですね! もしかしたら、戦わなくても話し合えば悪さを止めてくれるかもしれません」


 いや、それだけはないと思うが。


「でもどうやって探し出すつもりですか?」


 聞き込みの結果。

《ネドトロス》はこの近くに基地を構えている、という噂はあるらしい。

 そこの基地、ってのが支部なのか本部なのかは分からない。

 でも取りえず、そこに行ってみるか。


「エコー……ちょっと、手伝ってもらおうと思ってるんだがいいか?」

「も、もちろんですよ! だって、私はマコトさんの仲間なんですからねー」


 胸を張るエコー。

 俺は周りに聞こえないようにコソコソと、


「今夜に——」


 その計画の全貌を伝えた後。

 やっぱり反対してきたエコーではあったが、なんとか説得して(無理矢理)納得してもらった。


  ■


 月がぽっかりと夜空に浮かんでいる。

 異世界に来てから、ちゃんと月を眺めたことがなかった。

 でも——今。っていうか暇なので眺めているわけだが、こっちの月は元の世界と一緒なんだな、とガラにもなく感傷(感傷)に浸っていた。


「さて……吉と出るか、凶と出るかだな」


 俺は建物の影に隠れて、街中を歩いているエコーの姿を見ていた。



 ——ただし、バニーガールの衣装を着てだ。



「ううー、本当にこんなことをして魔法結社の人が寄ってくるんでしょうか……」


 瞳に涙を浮かべながら、エコーが歩いている。

 それにしても、よく引き締まった体だ。身が詰まっている、というのかついつい冷静沈着な俺でもむしゃぶりつきたくなるような。

 エコーは両手をクロスさせるように前に持ってきているが、その大きな胸は隠しきれていない。


「頑張れ……エコー!」


 ……そう。

 わばエコーは餌であった。

 罠を張って、餌にかかる獲物を待つ。


 うん、完璧な作戦だ!


 最初、エコーに出会った時。

《ネドトロス》のヤツ等はエコーに襲いかかっていた。それに、女を襲うことも多々あるらしい。

 もし《ネドトロス》の連中が街中にいたら、バニーガール姿のエコーに寄ってくるはずだ。


「ほらほら、エコー! 教えた通りにちゃんと言いながら歩け!」


 建物の影に隠れながら、エコーに指示を与える。


「ううー……ここですよー! ここに美味しい女の子がいますよー!」


 エコーが口元に手を当て、声を張る。

 夜、ということもあり外を出歩いている人は少ない。


 だが——数少ない通行人全てが、エコーを横目に見ながら通り過ぎていった。

 バニーガールの衣装を着て、変なことを宣いながら歩いている女に?

 明らかに関わったら、危険なムードを醸し出しているのに?

 それなのに、擦れ違う人々がエコーに自然と視線を奪われてしまう。



 ——魅惑の超能力。



 そう。

 今、エコーにかけている超能力がそれだ。


「まあ洗脳の超能力の応用なんだがな」


 ぼそっと一人呟く。

 魅惑の超能力はその名の通り、体から異性を惹きつけるフェロモンを放つ能力である。


 元々、エコーは美少女でスタイルもいい。

 それに魅惑の超能力が重なればどうなる?


「みなさーん! わ、私は美味しい……ひゃっ! 見ないでください! 恥ずかしいです!」


 ……結果はご覧の通りだ。

 俺は昼間、《ネドトロス》の連中が性欲の化物だ、と読んだ。

 なのでこうやって餌を歩かせておけば、自然と寄ってくると考えたのだ。


「……まあバニーガール姿のエコーの姿を見たいだけ、っていうのもあるんだがな」


 ちなみに、バニーガールの服は店主を洗脳して『貸して』もらった。


「は、恥ずかしいですっ! マコトさん! もう作戦は中止にしましょうよー!」


 エコーがうずくまる。


「うーん、自分で考えておいてなんだが、本当にこのバカっぽい作戦は成功するんだろうか?」


《ネドトロス》を舐めすぎな気もする。

 それに、なんら害もない(?)を通行人の目を惹きつけているだけだしな。


 この作戦は失敗か……?

 まあいい、目の保養となったしな。次の作戦を考えるか……。



「へっへへ。おい、そこのお嬢ちゃん。そんな姿で出歩いていたら、狼に食べられちゃうぜ」



 バカがかかった!

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