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洛星始末記01  作者: 紺菜
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プロローグ




xxx xxx




 ありていに言うと、俺は困っていた。


「氏素性を細かく述べた上で来歴、目的を残らず白状なさい」


 と、俺の前に立っている異国情緒溢れる恰好をしたぱっつんぱっつんのお姉さんがのたまった。

 どれくらいぱっつんかというと、二つのたわわがぼんっと飛び出て腰がきゅっと絞られ、でもってお尻がも一つぼんっである。ゆったりとした外套を羽織ってはいるんだが、その下は身体の線がくっきりと浮き出るドレス。オリエンタルチャイナって奴ですよ。

 おかげで目の前で座って見上げる俺からはボディラインがまるわかりだ。深く入ったスリットから覗く生太ももとか大変に食べ頃なのだと思うのです。


「沈黙を続けるというのなら仕方ありません。その際は貴方の悲鳴でこれを破ります」


 お姉さんは割とのんびりとした口調で美味しそうな太もも(比喩表現)を持ち上げると、あ見えそ「疾ッ――」ボッと俺の頬を掠めて砲丸が飛んで行った。

 間違えた。お姉さんの蹴りが空を切った。

 これ見よがしにゆっくりと脚を降ろして、程よい感じの岩で鮮やかな刺繍の入った靴のかかとをかつんと鳴らす。

 この脚は凶器である。俺は学習した。


「と言っても、私もなにも好んで暴力で訴えようというつもりはありません」


 と、物騒な笑みを浮かべていたお姉さんは表情をとろりとやわらかくとろかすと、俺の胸元にしなだれかかってくる。


「貴方がもし素直に言うことを聞くのなら……この地上で営まれるありとあらゆる法悦を感じながらに訊ねる、という道もあるのですよ?」


 俺の胸元に差し出された手の平が触れるか触れないかという位置で止まり、流麗な動きで円を描く。密着した身体からはみっちりと詰まった肉の圧力と、何より二つの乳圧で身体が押し出されてしまいそうだ。


「痛いのと気持ちいいの、どちらがお好みですか?」


 マゾの気はないので気持ちいいのでお願いします。

 だが待て、これは見え透いた罠だ。美味しそうな太ももは俺の命を軽く蹴っ飛ばす凶器だとさっき学習したばかりだ。欲しがりません勝つまでは違った手に入りません現実は。

 そう現実はキビシイのである。

 いくらお姉さんにしなだれかかれようとも、柔らかい二つの欲張りメロンを押しけられようと、生暖かい吐息を首筋で感じたり、探り当てられた胸の突起を指先でくりくりされてもそれやめてそれやめて。

 俺はがっちりと黒い縄で縛りあげられているのだ。

 腕は後ろ手に、胡坐をかく姿勢でがっちりぎっちり亀甲縛りはもう結構。いや亀甲縛りは言ってみただけだから縛り方なんて知らんけど。

 とにかく満足に身じろぎも出来ないくらい身柄を確保されてしまっている。

 それをぜーんぶわかった上でおねいさんは言っておいでな訳ですよ。


「貴方の答えが聞・き・た・い・な♪」


 耳元で囁くと、うっとりと目を細めて俺の顎先をこちょこちょしてくる。

 ちなみに俺は答えない。訂正。答えられない。

 だって猿轡までがっつりと噛まされてるんですもの。


 教訓。見た目が良いからと言って中身まで綺麗とは限らない。

 割とよくある話な気がするな!


 目の保養という意味では大変よろしいが、んーおっぱい! そろそろ別の視点を持つべきだ。

 まずは俺の状態。拘束されてボンレスハムもかくやという惨めな姿。以上。

 周囲。割と山奥? 木々が生い茂ったりする訳ではなく、尖った石が突き出ているいわゆる峻厳な岩山といった感じ。俺の周囲数メートルだけ、山肌がごりっと削り取られて岩の下の土肌が剥き出しになっており、いわゆるクレーターの中心に俺が設置されている。

 俺の記憶。ここにいたという時点から以前はぷっつりと途切れていて何も思い出せない。

 気がついたら縛られててお姉さんからこうして尋問を受けている、と。


 驚いた。物理的にも精神的にも手も足も出ないぞう。


「……なんと強情なのでしょう。私はとても悲しいです」


 俺が一人インナー世界に埋没してどう足掻いてもゼツボーしてると、お姉さんは袖で口元を隠してよよよ、と悲しむ素振り。動作が大げさで嘘くさいしなによりこちらを見る目が笑っている。明らかに楽しんでいる風なのは結構なのだが、いや結構ではないのだがこの際良しとして。

 このお姉さんはどこまで本気なんだろう。

 殺る気と書いてマジな方向性で。


 状況的には土壇場にある。目の前には見知らぬ相手、自由を奪われた俺。人気どころか生き物すら見当たらない場所。穴。

 死体遺棄とか事件性とか、口封じは枷を噛まされてるからすでにされてるとして、あとは土をかぶせたらそれでミッションコンプリートな状況だ。

 俺の命がヤバいアラームは鳴りっぱなしなのだが、今一つ現実感が湧かない。それはスコップを持った血も涙もないむくつけき男たちというオプションが欠けていたから。

 後、目の前にいるお姉さんの格好。こういう状況に似つかわしくないと俺は知っていたから。


 チャイナなのは語尾にニーズマフィアと付け加えるだけでそれほど違和感はない。オプションのスコップが青龍刀になるだけだし似たようなもんだ。

 だがこの格好――道士だ。

 一目見ただけで出てきた単語。俺もなんやようわからんのだけども彼女の格好は道士と呼ばれるものだと理解し、認識している。

 まあその道士が何かって聞かれたら、なんか魔法使い系の亜種とかそんな感じ、というえらいほわっとしたものしか浮かんでこないんだが。

 あ、なんか思い出したぞ。道士っていったらあれだ。キョンシーが出てきてタイゴンゴンとかサモハンとか、なんかそんな感じだ。


 そういう訳で俺の命がヤバい元凶であるくせに、コスプレじみたその恰好のおかげで俺は危機感も悲壮感もなく、こうしてとりとめのない思考活動に勤しんでいるのだ。

 恰好はともかく見目も身体つきもいいお姉さんがいる訳だから、どうせなら思考活動よりもシコシ「下品」びんたされた。


 えっ、今心読まれた?


「道士ですから心の一つも読む術は使えます」


 うっそだぁー。


「本当です」


 会話が成立しました。やったぜ俺! これで数少ない出来る事が一つ増えた!

 殺さないでくださいお願いします。


「……」


 そこで黙るんですか。確定ですか。保留ですよね? 留置所拘留ならまだギリで目はある。


「貴方の思考は雑多です」


 俺を眺めていたお姉さんはポリポリと頭を掻きつつ、疲れたようなため息を吐き出した。それと合わせてがっつりと俺の身体を縛り上げていた縄が若干緩む。主に俺の口周りの猿轡になっていたとこが。

 やったぜこれでお口は自由だ! さっきまでと比べて状況はまるっきり変わってない気がするが、ここは素直に喜んでおこう。


「今触りもしないで解けましたけど、これって縄型全自動拘束用ドローンだったりするんスか」


 とりあえず自由になった口でフレンドリーかつキャッチ―な話題を振ってみる。実際にそんなものがあったら科学の発達すげぇ、ドローンって言葉便利! ってなる。けど俺が困るからそういうのの開発はやめて。

 ん? 困るのか?

 まあ実際に縛られてる俺は現在進行形で困ってるから深くは考えないでおこう。新しい技術は試行錯誤して悪用しようとするのが人間だしな!

 俺の言葉にお姉さんは面食らったような感じに目をぱちくりとさせる。これは同国人だと思ってた相手からいきなり全く別の国の言葉で話しかけられた時の反応だ。

 全体として意思は通じても理解出来ない言葉が混じっていると、そういう感じらしい。なるほどなるほど。

 たかが猿轡を解いただけと甘く見たな道士のおねいさん! この舌を躍らせて情報を引き出せるだけ引き出してやるぜ!

 ま、口以外は相変わらず不自由なままだから、全力で口を挟んでいかないと命の危機に変わりがないだけとも言うな。


「……私は、心を読む術までは解いていませんが?」


「道士のお姉さん最高です! ハオ ! ハオ !」


 道士のお姉さん最高です! ハオ ! ハオ


「無理に言動と一致させずともよいです」


「へい」


 全く、少しは油断くらいして欲しいものです。でないと付け入る隙がないじゃないですか。


「貴方の疑問に答えましょう。この縄は黒縛縄。仙術の粋を集めて作られた宝貝の一つです」


 意外にがっちりガードの硬い道士のお姉さんが、半ばふてくされていた俺を指さして言った。俺じゃなくて俺を縛り上げている黒い縄を指していたんだろうけど。


 ぱお、ぺい?


 今度は俺が目をぱちくり。お脳のアーカイブに一致する単語はない。小首をかしげている俺に、お姉さんはにやりと勝ち誇った笑みを浮かべる。 


「どうしました? 私の言葉に理解できない言葉でも混じっていましたか?」


 まるっきり俺への意趣返しだ。おねいさん性格悪い。けどそんなところも素敵!


「おためごかしは結構」


「へい」


 ぴしゃりと打たれてきゃんと鳴く。そんな自分がちょっと可愛い。我が身はもっと可愛い。


「では口を自由にしてあげたので、その舌を存分に躍らせてもらいましょう。さもなくば身の安全は保証しかねます」


「ワンワン! 僕はおねいさんの忠実な犬ですワン!」


「貴方はここにいる以前、どこから来ましたか?」


「覚えてないワン」


 無言で持ち上げられる片脚。


「ほんとですワン! ほんとですワン!」


 その辺りの釈明は頭の中を読まれているのでご納得いただけるかと思います。


「……いいでしょう。では貴方はここにいる以前、何をしていましたか?」


「記憶にありませんワン」


 蹴られる岩。砕ける岩。


「嘘じゃないですワン! 嘘じゃないですワン!」


 お姉さんはいやいやする俺をじっと睨みつけながら、ゆっくりと凶器の矛先を地面に戻した。


「…………自分の名前くらいは言えるでしょう」


「忘れてるんだなー、これが」


 そうなのだ。

 俺は自分がどこから来たのかどころか自分の名前すら覚えていなかった。

 そんな事は一番初めに尋問された時に知っていた。思い出そうとして何も出てこなかった。


 長い沈黙の後、お姉さんは警戒は解かずに口を開く。


「自分が何者かも思い出せないというのに、ずいぶんと余裕がありますね」


「そいつはどーも」


 記憶喪失っていうのはそれはそれで大きな問題なんだろうが、だからと言って差し迫った問題でもない。

 というか気がついたら岩山にいて縛られて尋問されてる方がよっぽどの大問題だ。

 今後の生活よりもまずは目先の命。生きていなくちゃ生活も送れないってなもんですよ。


「それは正論ですね」


「でしょ? なので助けて下さい今後の生活で悩ませて下さい」


 それはそれででっかい悩みの種を抱え込む事になるのだが、そんなものは初めから決まってる。生きるって事は死ぬまで悩み続けるって事なんだから。

 あ、今の聞いてた? 俺いい事言ったよ?


「調子に乗らないでください」


「へい」


 とまあ我が身を振り返ったところで始めっから切れる札なんて一枚もないんだから、こっちとしては生殺与奪を握ったおねいさんに命乞いを続けるしか術がないんである。

 という訳で真摯に目で訴えてみる。ただただ生きたいという願いを込めて。


 そんな俺を出荷待ちの豚に可哀想だけどお肉になるのが運命なのよね、という目で睨み返していたお姉さんは、長くて重いため息を一つ吐き出した。


「命惜しさの嘘、というわけではないようですね」


「こういう時って事実かどうかを疑うよりも、自分に言い聞かせてるって意味合いが強いッスよね。心を読んでるから嘘かどうかはわかってるんだし」


「口の減らない男ですね」


「減らず口って言いますよね」


「場合によっては減ると思いますが?」


「……」


「よろしい」


 まあこうして減らず口が利けるのも、なんとなく物騒な結末を回避出来たような気がするからではある。お姉さんは相変わらず俺への警戒は解いてはいないものの、態度はだいぶ柔らかくなっている。少なくとも殺る気満々に俺の頭を熟したトマトみたくぱぁんする雰囲気でもなかった。

 ないですよね? ないと言ってください。


「……」


 生きるのってキビシイ。


 とりあえず無害だとお判り頂けたのならこの状況について説明をして欲しい。俺を拘束したのはどうやらこのお姉さんで間違いなさそうだが、こんな岩山のクレーターに一人いた俺の状況ってのも中々に理解不能だ。

 理解出来ない事の大半に理由と原因がある。俺とお姉さんの両方に当てがないなら、ここにはいないどこかの誰かの。

 という俺の思考を読み取ったのか、お姉さんはもう一度深いため息を吐き出した。


「仕方ありませんね」


 と呟いて黒い縄をつかむとそのまま縛られていた俺をひょいと持ち上げた。

 女の細腕とは思えないすげぇ腕力。腕は外套の袖にすっぽり隠れてるから見えないけど。ひょっとしてその奥には俺の腰よりも太いゴリラでマッチョでムキムキな腕が隠れていたりするのかしらん?

 釣り下げられた俺にも見えるようにお姉さんが腕まくり。白くて細くて綺麗な腕が一本。指は白魚のようでたいへんお美しゅうございますね!


「お世辞を言う時のコツを教えてあげましょう。相手の気分が良くなることだけを言うのです。でないと」


「でないと?」


「不当に扱われる理由になります」


「それって今から不当に扱うっていう宣げええええええっ」


 別に会話の途中で急な吐き気に襲われてお吐瀉した訳ではない。単純に驚いただけだ。

 縛り上げられたままの俺をひょいと肩に担いだお姉さんは、有無を言わずそのまま飛んだ。一応言っておくがジャンプの方。

 七メートルくらいは軽く飛んだんじゃないかと思う。一〇メートルと言えばキリがいいがちょっと吹かし過ぎのような気がするし、三~五メートルくらいだといまいちインパクトに欠ける。だから七メートル。

 上昇中にこれくらい考えてられるんだから大体そんなもんだ。


「ええええええええええぇっ」


 そして下降が始まる。耳元でびょうびょうと風が鳴り、下腹部辺りがきゅっと締まる緊張感。落下っていうにはどうにも好きになれない。この高さから地面に叩きつけられたら死ぬから当然である。

 俺が出来る唯一の事は、自由になった口からただ悲鳴を迸らせるだけ「舌を噛みますよ」また縄で猿轡を噛まされ今出来る事がなくなった。


 お姉さんは全く危なげなく着地。慣性の法則。食い込む縄。


 玉がぁ!


 お姉さんジャンプ。高校物理学。食い込む縄。


 ハイレグゥ!


 上下に激しく揺られる俺は、言葉にならない悲鳴を上げながら満点の星々の浮かぶ夜空が綺麗だなと現実逃避をするのであった。







 という訳でそっと土をかぶせられるだけで完全犯罪が成立してしまいそうな岩山から、壁と屋根のある建物へと移動した間違えた運ばれてきた。

 黒い縄からも解放されて身体の自由を取り戻した俺がまずした事は。


「……お股痛ぁい」


 股間を抱えて転がる事だった。

 ここに来るまで散々食い込み緩み食い込み緩みが続いた結果、なんかちょっとそっちの方向に目覚めてしまいそうな気がした嘘二度と御免です。

 転がりながらも辺りの様子を窺ってみたりする。何せこちとら岩を蹴り砕いたり二階の窓からこんにちわできる脚力があったりはしない、簡単に死ぬ系一般人だ。注意を怠った奴から死ぬのである。

 なので努力は惜しまず配置と間取りに目を配る。


 見た感じ山小屋。なにもねぇ! 以上。

 お姉さんはてっきり人里辺りに降りていくのかと思いきや、それなりに木々が生い茂り始めたところにあったこの小屋に入っていった。新たに庭に植える植木よろしく縛り上げられていた俺には、拒否権どころか人権も危うい感じなのでそのまま中で転がされるのみ。

 当のお姉さんはと言うと唯一の家具らしき燭台に火を灯している。やたらと炭がこびりついた窯はくべるものが見当たらないので家具カテゴリから除外。


「炭焼き小屋のようですね。今の時期は使われていないようですが」


 俺にもちゃんと説明してくれるおねいさん優しい! とは思わない。だってここも殺人現場としては優秀なロケーションですよね?

 窯にくべられる自分の姿を想像して、焼死とか人生におけるワーストの幾つぐらいになるんだろうと考えてみる。まあ事件の当事者、しかも被害者になる方はどう考えたってワーストにしかなり得ないんだが。

 人気のない山小屋で美女と二人きりとかそれはそれでとても良いシチュエーションではあるが、相手は物理で岩を砕く人である。危険指数が高すぎて先に命の危機を感じて心臓がバクバク言って止まらない。

 この胸の高まりはもしや恋?


「いいえそれはただの生存本能です」


「だと思いました」


 と言うか今も絶賛サトラレ中であります。相手の心を読むって反則じゃない? ずるくない?


「何を思っているのですか。この術を習得するために私はつらい修行を重ねたのです。苦労をした分便利に使うのは当然では?」


「ごもっとも」


 お姉さんの言い分は納得出来るので納得する。した。


「物分かりがいいのはよろしいです。弟子はそうあらねばありません」


 とお姉さんはのたまった。


「弟子ってなんスか」


「貴方のことです」


 うーんにべもない。籍を入れる前に弟子入りすることになるとは思わんかったわ。

 中々突拍子のない事をのたまいだしたお姉さんに、さすがの俺も股間を押さえてごろごろするのをやめて身体を起こした。

 燭台の日がゆらゆらと揺らめく山小屋の中、差し向かいで向き合う。それなりに神妙な空気にはなった。


「私が道士だという事は理解していますね?」


「へい」


「貴方自身の置かれている状況は理解できていますか?」


「唯一無二の名無しの権兵衛です」


「グォンぺィ? 名前があるのではないですか」


「ただの比喩表現なんで。そういう秘境みたいな名前に聞き覚えはないんで」


「まあいいでしょう。貴方は名前も故郷も知らずどこからやってきたかもわからない」


「へい。困った事に」


「なので私の弟子にします」


 結論までの重要な過程が雑ぅ!


「ですが貴方にとって都合は良いのではないですか? 身の証を立てるものをなに一つとしてもたない貴方に、私の庇護を与えようというのですから」


「で。そいつはお幾らになるんでしょうか?」


「対価は無償の献身と奉仕です」


 なんか手っ取り早く奴隷にされかかってる気分。


「唐突に浮かんだんスけど、昔のどっかで偉い人がこんなことを言ってた気がする。奴隷が欲しいなら、金で買うか命の恩人になるかだって」


「ではどちらも違いますね。私は貴方を山で拾ったんですから」


 川でどんぶらこと流れてきたり、竹をバッサリ切られた訳でもないのに拾われたのか。拾われたのか? 捕獲されたとかそういう類じゃないのアレ?


「貴方に良い言葉を送りましょう。落し物は早い者勝ち、拾った者の総取り」


「習得率の八割は落とした相手に返すもんだと「返すのは上から? 下から?」残さずまるっとお願いします!」


 二割持ってかれたらどっちからでも猟奇的な彼氏になっちゃうよ!


「目先の命が助かれば、あとは生活に関する悩み。その大きな問題が解決できる方法だと思いませんか?」


 俺も決して悪い話だからごねてるんじゃない。実際問題命を助けられ(見逃され?)てからあとは自由ですとぽいと投げ出されるよりも、面倒を見てくれる誰かがいた方が今後の生活のハードルがぐんと下がるのは確かだ。

 だが脳裏に刻まれた記憶が待てと囁く。安易な契約に乗ってはいけないと。

 未経験者歓迎……丁寧に指導……アットホームな職場……ブラック……うっ、頭が。


「ものすごい陰気を漂わせていますよ。記憶を失っているのではないのですか?」


「や、そうなんですがね。部分部分には反応するみたいで」 


 記憶の大部分は失っているものの、断片的には色々覚えているらしい。だがそれはばらばらに壊れたパズルの欠片みたいなもので、それ自体は大した意味もなければ特に役立つという訳でもない。

 それらを片っ端から言葉にして並べ立てているのは、別にただの条件反射という訳じゃない。半分くらいは。もう半分は言葉にする事で失った記憶が戻るんじゃないかという淡い期待を寄せているのだが、ふとしたきっかけで記憶が戻るという甘い展開は今のところ気配もなかった。

 問題は問題として見定め、改善の為に今出来る手を打つ。この高い意識!


「正直に申しまして、ただの奇行にしか見えませんよ。邑や人里でもその言動を繰り返せば狂人か妖怪に憑かれたものとしてみなされ排斥、悪ければ殺されてしまいます」


 意識が他界ところ行っちゃう!


「どうですか、弟子入りは。道士の弟子ならそういった言動も多少は目を瞑って貰えます。厳しい修行に少々心が俗世を飛び越えてしまったといった感じで」


 当ても頼りも溺れる先の藁どころか蜘蛛の糸すらプチンと切れた俺にとってみれば、正直背に腹は変えられない訳でして。心を生贄に差し出して明日の食い扶持を稼ぐのはある意味労働の真理ではないかと思うのです。ただ与えられるだけで楽しい職場は見つからない、飛び込んだ後に自分で楽しみを見つけるものなんじゃないかと。

 例えこれから上司となる相手が、用意万端待ち構えて獲物を狙い定めた蛇のようにほくそ笑んでいる、このお姉さんであっても。

 騙されてるぞ! そこから先に待っているのは地獄だぞ! そう叫んで俺を引き止めているのは、ひょっとしたら俺の良心と呼ぶべきものなのかもしれない。


 首をひねってうんうん頭を悩ませる俺に、お姉さんは自らの襟元に指を引っかけてくいと崩すと、実に色っぽくほうとため息を漏らした。


「山とはいえまだ蒸しますね。早く人里で汗の一つも流したいところです」


「お背中を流すのも弟子の役目。ついていきますお師匠様」


 実際にうっすらと汗ばんだ桃色の肌とか、豊満な谷間とか、うなじにかかった黒髪とかが俺を誘惑してやまないのです。

 引き止めていた声にダッシャとココナッツクラッシュを喰らわせて、お姉さんの足元でありもしない尻尾をぶんぶん振り倒す俺。悲しいけど、これって男の本能なのよね。


「よろしい。では早速決めるべきことを決めてしまいましょう」


「ああん」


 お姉さんははだけた襟元をきゅっと戻し、全身から漂っていた色気があっさり引っ込める。色香にあっさりと騙されてしまう俺。そんな自分がちょっと可愛い。


「決めるべき事ってなんスか?」


 躾けと称した飼い主の気まぐれでお預けをくらうのは大部分の犬族の宿命として諦め、ちょっと未練がましくたわわを横目に自分の指をちゅぱちゅぱなんぞしつつ、お姉さんに訊ねた。

 これから俺の師匠となるお姉さんは、今までそこはかとなく漂っていた胡散臭い雰囲気を欠片も残さず吹き飛ばし、燦々と輝く太陽のような満面の笑みを浮かべた。


「貴方の名前です。師たるものが弟子の名前は知っていて当然。失くしてしまったのなら新たに名づけるのが道理。名は体を示し自を固める重要な標です。私の言葉で貴方を確たる形に括り直しましょう」


「……はあ、名前スか」


 いや参った。芬々たる色香を漂わせている姿も大概参っていたが、こうまで正面からにっこりやられてしまうと。軽いだけが売りの俺の口から唯一のセールスポイントまでかっさらわれてしまう。


「じゃ、あれですよ。ナウなヤングにもバカウケなイカした名前を一つよろしくお願いしますよ」


「ええ。良い名を贈ろうと思います」


 こいつはちょっとばかり卑怯じゃありませんかと、若干拗ね気味に唇を尖らせてそっぽを向く俺。が、おねいさんはにこにこ笑ってこれをあっさりスルー。くっ、俺の必殺とりあえず思いつく単語を並べ立てて相手を煙に巻く術が、早くも見切られつつあるではないか。俺の唯一の技なのに。切ない。


 お姉さん改めお師匠様は袖を口元に寄せてゆったりと思案のポーズ。俺はというと吸いつきたくて仕方ないふっくらとした唇が開くまで「思考を止めなさい」弟子入り早々師は死ねと仰せだ。


「考えごとの最中です。死ねとは言いませんが煩悩を抑えて部屋の隅で佇んでいなさい」


 何気に難易度の高い事を仰る。俺から煩悩を取ったら生きていく意味がなくなります。だが視界に収まらない感じに隅っこによるのはやぶさかではない。どこまで茶々を入れて許されるかの線引きがまだ出来ていないし。煩悩に関しては自覚があるが欲望を満たせるなら何でもいいという訳ではなく俺にも好みというものがある。

 一言で言い表すなら合法セクハラ。両者の合意あってこそである。


 と言う事でやる事のない俺は部屋の隅っこにうずくまり、ほげーと精神をアストラル界へ投射していたが、物音でサルベージされた。

 どんどんと誰かが山小屋の扉を叩いている。


「お師匠お師匠。誰か来たみたいッス」


「貴方が出てください」


「イエスマム。対応にあたりまして窺っておきたいのですが、この山小屋ってお師匠の所有物なんですか?」


「……」


 お師匠黙殺。その間もどんどんと扉を叩く音は鳴りやまない。


「お師匠様お師匠様。ひょっとして今の俺たちって他人の土地&所有物件に無断で入り込んでる不法占拠者という奴ではあるまいスか?」


「ほほほ。せっかちな弟子ですね。誰も使っていない炭焼き小屋など所有しているとは言い難いのです。あえて言うならば大地に建っている以上、これは山の一部です」


「それはどこに建っているかであって誰の物かではないと思います。あえて言わずとも建てた人の持ち物なのではないかと思います」


「……」


 お師匠黙殺。扉を叩く音は鳴りやまないどころか段々激しくなっている。


「扉を上げたら二分で逮捕とかになりません?」


「大丈夫です。弟子は師を見捨てません」


 それって逆じゃねっスか。


 食い下がってみたもののお師匠は考える人のポーズ(上半身)を維持したまま、微動だに動こうとはしない。言外にさっさと出ろと言わんばかりの雰囲気がにじませていらっしゃる。


「うるさいので早く出てください」


「イエスマァム」


 言外どころか普通に言われました。めいいっぱいの不満は口調で示しつつも、しぶしぶと腰を上げる俺。なんといっても岩を蹴り砕いて大の男を担いで七メートルくらいジャンプ出来るお方だ。はっきり言って一般人クレマー相手の方がまだ易しい。武力で訴えられたらこっちの立場はミジンコかゾウリムシかと言ったもんだ。

 別に酒池肉林でうっはうはなんて生活を想像していた訳ではないが、今後の生活に早くも暗雲が垂れ込め始めているような気がしなくもない弟子なのでした。はいはい今出ますから文句だけで済ませて下さいね。文句を聞かされるだけなら別に死なないし。


「今取り込み中なので後程お伺いしてもらえます?」


 出来れば俺たちがここから出て行ってから。などと思いつつ扉を開けると、返事の前に押し倒された。

 やだっ、大胆っ!


「ああああああ゛あ゛」


 ――おっさんに。ホモッ、やだっ!


「ちょっ、やめっ、熱烈なベーゼ、やめてっ」


 おっさんは呻き声を上げながら押し倒した俺にぐいぐいと迫ってくる。俺の(がちんっ)唇を(がちんっ)奪おうと(がちんっ)これ食い千切ろうとしてませんかね!?

 うつろな目をしたおっさんの鼻の穴に指を突っ込んで押し戻そうとするも、マウントポジションを取られていては首から上だけでよけ続けるのも限界がある。噛みつきはバーリトゥドルールでも禁止事項でしょ!?

 なのでこちらも揉み合いながら禁止技にされている金的を膝で一撃。性別的に死ぬがいい。


「ああああああ゛あ゛」


 効いてないじゃないですかやだー!


「助けてお師匠様助け」


 て。と言葉を繋ぐ前に俺の声が突風にさらわれていった。

 突風が起きたのは目にもとまらぬ速さで師匠が駆け寄ったからで、俺の上にのしかかっていたおっさんの姿はどこにもなかった。ちょうど俺の真上にすらりと伸びる脚が見えたから、おっさんを蹴り飛ばしたのだと理解しスリットから覗くその奥が見えたっ!


「これは」


「むぎゅっ」


 顔を踏まれますた。


「厄介なことになりましたね」


「俺を踏んづけたまま状況判断するのやめて頂けます?」


 これはこれである種のプレイと思えば興奮しないでもないですが、外履きだと土ぼこりが目に入ってきついです。俺の訴えはすんなりと受け入れてもらえたので身体を起こす。実際のところそんな呑気な事より厄介な事の方に意識が向いていた。

 俺を襲ってきたおっさんはこの人に助走をつけて蹴られた訳で、安易にこの言葉を使うのは僕ぁどうかと思うんですけど岩を蹴り砕く力で蹴られたら人間は死ぬよね。

 一応先に手を出してきたのは向こうにはなるけども、そもそもあのおっさんがこの小屋の所有者だったら居直り強盗殺人なのはこちらの訳で、さーて厄介事ってのは証拠隠滅の方法なのかしらん。

 弟子の初仕事が死体を山に埋めるだなんて、一体どこに弟子入りしたんだって話ですよ。


「よく見なさい」


 と、師匠がゆったりとした袖を垂らす。細い指先を目で追っていってその先は、開け放たれたままの扉の向こう側。


「げ」


 そこではさっき蹴り飛ばされたおっさんが立ち上がって右往左往していた。

 多分おっさん当人だと思う。突然襲われたから顔はよく覚えていないが、状況判断的に。おっさんはちょっと目を離した隙に一目見たら一生忘れられないような個性的な姿になっていた。

 首がなくなっている。ちょん切られたとかそういう意味でなく、頭が陥没してめり込んでいた。


 orzという格好で、→orzこう蹴られた訳だから、rzこうなった。亀みてぇ。 


 が、人間は残念ながら亀のように首が伸び縮みしたりしないので、よい子のみんなはマネしないでね死ぬから。

 だけど例外的に死なない者もいるのだと実例を見せつけられている。さすがに前が見えないらしくてあたふたうろうろしてるが、おっさんは元気に動き回っている。これは問題だ。誤表示になりかねない。そんなものを全国放送した暁には、文句をつけたくて仕方ない暇人たちからお電話が殺到してしまう。

 子供なんてシャツに頭隠してジャミラーとかやってゲラゲラ笑ってるだけなのにね。ジャミラってなんだ。


 さすがに言葉を失い下手な宴会芸じみた光景をぽかんと眺めていると、おっさんの周囲にぞろぞろと人が集まってくる。

 今度の人たちは中々個性的な方々で、血に汚れた着物を着てたりとか、首が半分取れかかったりとか、頭に鉈を装備してたりしてた。


「ゾンビだー!」


「いえ、僵尸です」


 俺の悲鳴を短く訂正するお師匠。パニックものの定番を見せつけられても平然としている辺り、これは勝ったな。ひとまずの平静を得た俺は、聞き捨てならない言葉の響きに反応する。


「きょうしってキョンシー? じゃああれじゃないんですか。キョンシーってこう、手を前に出してピョンピョン飛んでるものじゃないんですか」


「死んでから時間が経ったものはそうです。あれは死んで間もない僵尸のようです」


 俺から見るとあれはゾンビなんだが、キョンシーであるらしい。キョンシーが普通に歩いている姿に、何故か納得出来ない何かを感じるのです。

 が、主義主張よりもまずは我が身の可愛さ。ここは詳しい人に知っておくべき事を訊ねる。


「ちなみに噛まれたりすると、その人間もキョンシーになったりするんですかね?」


「しませんよ。あれは死体に道術をかけて生み出す妖怪です。本来は遠く離れた地に出稼ぎで来て命を落とした者を、故郷へ返すために使われる術です。術をかけた道士が先導し、自ら歩かせるのですよ」


「ははあなるほど。キョンシーそれ自体はそれほど危険って訳でもないんスね。で、術をかけた道士っていうのはどこに?」


「見かけませんので制御されていないようです」


「制御されてないと?」


「人を襲って首をねじ切り生き血を飲んだりします」


「滅茶苦茶危険じゃないですかやだー!」


 わらわらと集まってきたゾンビもとい死にたてキョンシーたちは、俺たちのいる山小屋に向かって殺到してくる。俺は慌てて扉を閉めたりしない。だってここでそういう行動は死亡フラグだ。一安心したところを扉を突き破られてそのまま引きずり出されて餌食に、とかなったりするんだぜ!

 俺の斜め前に立っていた師匠が振り返り、にっこりと微笑んだ。


「自らの分を弁える、と言うのは美点ですよ」


 一瞬お師匠の微笑む姿がぶれた。

 かと思ったら室内に侵入しようとしていた先頭のキョンシーが周囲の二、三体巻き込んで吹っ飛んだ。


「僵尸はろくに目が見えず、人の吐く呼気に反応して襲ってくるのですが、知恵のない妖怪です」


 また一瞬ぶれる師匠。出入り口付近から外へと吹っ飛ぶキョンシー。


「このように入り口が一つしかなければそこを目掛けて殺到してきます。建物を壊せばいいという思考が働かないのです。群れで襲われてもさほど怖くはありません」


 師匠が落ち着いているのはそういう理由だ。

 多分、俺には目にも止まらない速さで踏み込んでキョンシーを蹴り飛ばし、同じ速さで元の位置に戻っている。だから一瞬だけぶれたように見える。

 蹴られたキョンシーは水平に飛んで行って、そこらに生えていた木の幹に激突。いくら死体だからと言ってもさすがに木の方が人体よりもずっと硬い訳だから、全身の骨がバッキバキに砕ける。まともに立ち上がる事も出来ずに呻いている辺り、動く死体だからと言って動力は不思議な力という訳ではなく、人体構造を利用しているようだ。

 俺が眺めている間にキョンシーは次々と退治されていく。ただ、まあ、なんというか……


「道士なら、こう派手な術でパーッとさまよえる魂を解放したりとかしないスか?」


「招鬼術って苦手なんですよね。死者を扱ったり辛気臭いですし。動けなければいずれ朽ちて土に還りますから一緒です」


 俺のお師匠様はめっちゃ物理に偏ってました。


「蹴り飛ばす際のコツですが、気勢を乗せてそのまま叩きつけるのではなく一度緩めて身体に当てるのです。蹴るというよりも押すのですね。そうすれば」


「そうすれば?」


「弾けて返り血を浴びることもなく、衣服を汚す心配がありません」


 ね? 簡単でしょ? みたいな軽い口調でレクチャーなんぞを受けている内に、現れたキョンシーたちは瞬く間に地面に積み重なって呻き声を上げるだけの前衛的オブジェに。まだ頭が引っ込んだおっさんが右往左往していたが「あいやっ」師匠が妙に可愛い掛け声でとどめを刺していた。


 すげぇ。

 腰を抜かした格好で一部始終を見ていた俺は、割りと普通に驚嘆したまま動けずにいた。


「これで仕上げです」


 お師匠様はそう言って山小屋内の唯一だった燭台をつかむと、ぽいと積み重なったキョンシーたちに投げつけた。

 燭台の受け皿に合った油がこぼれ、火がゆっくりと山のように重なってうごめくキョンシーたちを包みだす。自然サイクルよりもずっと早く土に戻るだろう。


「というか、山で火ってヤバくないスか。燃え広がって山火事になったりとか」


「燃え広がるも八卦、雨が降るも八卦。タオ です」


 それでいいの? いいのか? まあいいって事にしとこう。リサイクルは善い事だしな。

 ついでに程よくこの山小屋も焼け落ちたりしてくれたら、俺たちがいたって物的証拠も灰になってくれるし。


「結構。それではこの場を離れるとしましょう。妖怪の陰気は別の妖怪を呼びます。行きますよ悟星」


「へい」


 ん?


「今、俺の事なんて呼んだんスか?」


「悟星と。それが貴方の名前です」


 余りにもさらっと呼ばれたもんだから俺の方もうっかり聞き流してしまうところだった。にこにこと笑いながらさらさらっと空中を指でなぞるお師匠を眺めて、今度は俺が考える人のポーズ。

 ごせい。悟星か。それが俺の名前――


「カール五世ー」


「それになんの意味が?」


「いえ全く」


 両手を振り上げてお化けだぞーの構えをとってみたりはしたが、別に閃く事も新しい名前に反応するような出来事も起きなかった。ま、現実なんてそんなもんだよね。


「阿呆な事をやっていないで行きますよ」


「へい」


 いやまて、命名イベントが起きてすっかり忘れていたが、まだ重要なイベントの発生を見過ごしている。


「ところで師匠のお名前をまだ聞いてねっス」


「貴方の師の名は央桃です」


 さらさらっと空中にしたためられる文字を目で追った。


「健気に尽くすのですよ、悟星」


「あい」


 くすくすと笑う師匠の後に続き、赤々と燃え広がり始めたその場から離れるのであった。炎に舐められ木々が爆ぜる音が、風雲急を告げているような気がした。

 主に俺の。




ここまでプロローグ

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