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134. 救援パーティーの激励

「な、何がどうなってるの! 何でブルードラゴニアが!」

「おい、手を休めるな! 敵はブルードラゴニアだけじゃないんだぞ!」


 ノーベイの街は混乱の最中(さなか)にあった。周囲はすでに魔物に囲まれているらしい。防壁があるので直ちに脅威とはならないが、継続的な攻撃を受けていればその防壁も損傷する。そのため、少しでも攻撃の勢いを弱めようと、遠隔攻撃手段を持つ探索者が防壁の上から襲いかかる魔物を迎撃していた。普段から魔物の相手をしている猛者たちだ。拠点の優位を生かせば、大量の魔物でも対処は十分に可能だろう。


 だが、それも相手がノーベイ周辺の通常の魔物ならの話。襲撃者には探索者たちを混乱に陥れる存在がいた。それこそが、ブルードラゴニアだ。漏れ聞こえてくる話をまとめると、現在、八体のブルードラゴニアがノーベイに向かってきているらしい。


 氷樹の森の討伐隊の会合に紛れ込んだときにザッペンから聞いた話だが、このブルードラゴニアというボス格はノーベイの住人にとって恐怖の象徴のような存在だ。そのきっかけとなったのが30年前の事件だという。一体のブルードラゴニアによって、ノーベイは壊滅的な被害を受けたらしい。


 ボス格魔物は同じレベル帯の雑魚とは比較にならないほどの強敵だ。だが、それにしてもブルードラゴニアは強すぎた。当時、多くの探索者たちがブルードラゴニアに挑み、その命を散らしたという。挑戦者の中には、ノーベイ周辺の別のボス格を単独パーティーで倒したという猛者もいたらしいが、ブルードラゴニア相手では戦いにならなかったそうだ。


「衛兵隊に連絡は!」

「もうやってるはず! だけど、期待しても意味ないよ」

「そうか。そうだよな……」


 ちらほらと聞こえてくる衛兵隊への期待と失望の声。30年前のブルードラゴニア騒動も始末をつけたのはノーベイに駐留する衛兵隊だったらしい。


 あまりの強さにブルードラゴニアに挑む者はいなくなり、誰もが氷樹の森を避けるようになった。間引く者がいなくなったせいか、氷樹の森で魔物の大量発生が起き、一部の魔物がノーベイまで押し寄せてきたらしい。ブルードラゴニアを引き連れて。


 結局、そのブルードラゴニアは街の衛兵隊に倒されたわけだが、街への被害は大きかった。何故なら、衛兵隊が動いたのは、ノーベイが半壊し、多くの探索者・多くの住人の命が失われたあとだったからだ。


 当然、衛兵隊への非難が噴出した。だが、それに対して衛兵隊が言い放ったのは「我々は住民を守る命令を受けていない」だったそうだ。


 基本的に衛兵隊は御使いの命令に忠実……というか、規定通りにしか動かない存在だ。前回同様、今回も探索者や住人に死者が出る程度では静観したままである可能性が高い。


 そのとき、力強い叱咤の声が響いた。


「狼狽えるな! 衛兵隊が動かずとも、我々がいる! そのために駆けつけたのだからな!」


 その声だけで動揺していた探索者たちがずいぶんと落ち着いた。たいしたカリスマである。声の主はイフォだ。おそらく、『シルバーブリザード』のリーダーであろう。偶然にも、すぐそばにいたらしい。


「ブルードラゴニアは我々で対処する。だが、複数相手では『シルバーブリザード』でも厳しい。腕に自信がある者は我々に続いてくれ!」


 堂々とした呼びかけに希望を見いだしたのか、幾つかのパーティーがそれに応えた。


「我々のことも忘れないでもらおう!」


 続いて現れたのは五人のペンシルヴァ。例の『氷雪戦隊ペンペンダー』という奴らだ。


「いついかなるときでも、冷静沈着。私こそが静謐の青こと、ルーペン!」

「闇に潜み魔を狩るハンター、漆黒の影シラック……見参」

「我が知恵、我が魔道からは何者も逃れられませんの。叡智の紫、パルヴァですわ!」

「え、ええと、お日様がニコニコで今日もいい天気だペン! 黄色のイェーパだペン」

「す、素敵な白のシルイトですぅ……。あ、シルイトだペン」


 名乗り口上とともに謎のポーズを決めるペンシルヴァ五人。前の三人はともかく、あと二人は明らかに口上が雑だし、気恥ずかしさが伝わってくる。あと、今は夜中なので全くお日様はニコニコじゃない。臨機応変に対応できないなら、もっと汎用性のある口上にしとけよ。


「「「「「我ら五人揃って、氷雪戦隊ペンペンダー」」」」」


 よほど練習を重ねたのか、五人揃ってのポーズはきっちりと決まった。特撮なら背後にカラフルな煙が噴き出す演出が入っていたことだろう。


 この状況で何をやってるんだとツッコミを入れたいところだが、彼らの名乗り口上にも意味はあったらしい。探索者たちの士気がまた一段と上がった。コイツらもアルブリアの救援パーティーだ。俺は直接見ていないが実力はあるのだろうし、有名パーティーでもある。自分の知名度を利用して士気を上げたのだとしたら、なかなかの策士だ。単純に自分たちの存在をアピールしたかっただけの気もするが。


「夜目の利かないペンシルヴァ諸君は我々とともに都市防衛を担おう。まずは篝火を焚いて明かりの確保だ。必ず都市を守るぞ!」

「「「おー!」」」


 リーダーっぽい立ち位置のルーペンが呼びかけると、ペンシルヴァを中心に声があがる。


 なるほど。夜でも不自由しないイフォとユテンがブルードラゴニア討伐のために打って出て、残るペンシルヴァが都市を守る。そういう役割分担か。


 そうなると、俺たちも都市防衛だな。伝説になるほどのボス格っていうのには少し興味があったが……まあ、ここは大人しく様子見しておくか。



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