父の知4
「ぬぬぬ……」
二つの魔力を同時に飛ばすからより高い集中力を必要とする。
黒い魔力の塊はクシャアンに飛ばしたものよりも大きくて不安な形をしている。
軌道もフラフラとしながら飛んでいってイッチーとニッチーにどうにか届いた。
イッチーとニッチーの魂も黒い魔力を取り込むけれど、吸収量の限界を迎えても黒い魔力はだいぶ余っている。
魂の格としてイッチーとニッチーはクシャアンよりも下になるらしく、黒い魔力の吸収量の上限もクシャアンより低いのだ。
そのために限界まで魔力を吸収した状態だとクシャアンの方がより強化されていることになる。
「そのままお父さんとイッチーさん、ニッチーさんで戦って」
魔力を繋いだままで最大強化の状態を維持する。
クリャウの命に応じてクシャアンたちは木剣を手に取って構える。
クシャアンに対してイッチーとニッチーが切りかかる。
一般的に鈍くて非力な魔物であるスケルトンだが、クリャウによって強化されたクシャアンたちは人にも劣らないぐらいに能力が引き上げられている。
人と変わらぬ能力があるのならスケルトン以外とバカにできない魔物となる。
アンデッドは痛みを感じず死を恐れない。
ダメージを受けることを人は恐れるけれどもそんなこと関係なしに攻撃できるのだ。
攻撃力だって違う。
常に全力で腕を振り回せば普通の人なら簡単に限界が来てしまう。
腕が痛くなったり筋肉を痛めたりとどうしても加減しなければいけないところをスケルトンは多少無理な動きだろうと全力でやってみせるのである。
人間とスケルトンが完全に同じ能力を持っているとしたらスケルトンの方が強いといっていいのだ。
ただし防御力の面では骨だけのスケルトンの方が弱い。
「戦ってると魂が激しく揺れ動くね」
「ふむ生きている人も戦いにおいては色々な感情を抱く。高揚感、恐れ、あるいは楽しむ人もいるだろう。戦いによって魂も刺激を受けるのだろうね」
ミューナは相変わらず魂の動きを見ている。
戦い始めると魂が大きく揺れ動いていて平常時とは明らかに違っていた。
戦いが魂の奥底に残っている人としての本能を刺激しているのだ。
「むむ……」
動いていると動いていない時に比べて魔力を送り続ける難易度が上がる。
ただ魔力を適当に放出していた頃と違って、魔力の消費を抑えつつ繋がりを維持するのはクリャウとしても大変で汗をかき始めている。
スケルトンとして強いのは誰か。
それは魂の格と魂に刻まれた経験による。
誰が教えたわけでもないのにクシャアンたちは各々の戦い方で戦う。
それは魂が覚えている戦い方が出てきているのだ。
スケルトンの能力そのものは魂の格が高いほどに高くなり、さらに強化も魂の格が高いほどに上限が高くなる。
ただ戦い方という要素はまた別で魂に刻まれている戦い方によっては格上の魂と戦える可能性もあるといえた。
クシャアン、イッチー、ニッチーの場合はクシャアンの魂の格が一番高い。
イッチーとニッチーでは魂の格がほぼ同じである。
そして実際に戦うとクシャアンが圧倒的に強い。
魂の格だけでなく魂に刻まれている戦い方としてもクシャアンが優れているのだ。
「あっ、ニッチーさーん!」
クシャアンの攻撃を防ぎきれずにニッチーの頭が殴り飛ばされて飛んでいく。
やはりクシャアンは強い。
しかし心配することもない。
ニッチーは頭が無くても平然と動いてご祈祷場の隅に転がった頭部を拾いにいく。
スケルトンはある程度の損傷ならダメージを受けても大丈夫なようだ。
どこまで破壊されたらダメなのか分からないので試すつもりはないけれど、頭が飛んでいった程度では平気である。
「今日はこれぐらいだね」
ニッチーの頭が飛んでいってクリャウの集中も完全に乱れた。
ニッチーに繋がっていた魔力が切れてしまったのである。
「みんな終わり!」
クリャウの指示でクシャアンたちも剣を下ろす。
「ふぅ……」
「お疲れ様」
「ありがとう」
気づけばクリャウは汗だくになっていた。
クリャウはミューナからタオルを受け取って汗を拭く。
魔力のコントロールは魔力だけで無く体力を使う。
日頃から体力作りをしていてよかったなとクリャウもしみじみ思う。
「それじゃあ次はミューナの番だね」
ミューナの魂視者としての学びもまだまだある。
クリャウの鍛錬が終わった後はミューナの番だ。
今度はクリャウの方が休憩がてらミューナがどんなことをするのかと見学するのだった。
こちらの作品、コミカライズすることになりました!
Nolaさんとサード・ライン・ネクストさんの共同レーベルcomic E-CLIPSEさんでコミカライズされます!
細かな情報はまだ先になりますが、コミカライズ作業の方は進んでおります。
よければ読んでください!
そしてコミカライズもよろしくね!
ただ私の作品群にしてはダークな感じなのでそこは注意だ。




