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心夢見て宇宙《そら》を翔《ゆ》く  作者: 赤羽道夫
第6話 海賊たちの讃歌
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Act 2

 LSHロボットのオーナーになるには、口頭で宣言すればよい、というわけにはいかない。LSHロボットの取り扱いには資格が必要で、さらに登録しなければならず、国際的な登録機関に申請を受理されなければならない。LSHロボットは、人間の代行ができるため、個人の分身としての行動の責任がかかってくるからである。その手続きはさほど煩雑ではないが、一応は身分証明の提示を求められるし、なりすましを防止するようセキュリティも当然ながら講じられていた。

 だからシェ・ワンタオがここで宣言したところで、LSHロボットたちにそれを受け入れることはできない。

「なに勝手なことをほざいてやがる」

 呆れたゲイスンがすかさず嘲ったが、もちろんシェ・ワンタオもそれは承知しているだろう。しかし、これまでの海賊稼業で染みついた恫喝的なやり方を押し通すのを急に変えられるわけもない。そんな強引なやり方でも野良ロボット相手なら通用するだろう、いや、もっと簡単だろうとの思いがその口調からにじみ出ていた。

「すでに貴船の航行システムはわしらが掌握している。おまえらの電子脳をハッキングすることなんかは造作もない。観念してわしらに下れ」

 自信たっぷりに言い切った。言い切る以上は見通しがあってのことだろうが……。

「ああ言っているが、どうだ、アルン?」

 ゲイスンは後ろを振り返り、指令席を見やった。

 シェ・ワンタオと会話しながらも、アルンは同時にシステムの復旧作業も進めていた。気取られないように、指一本動かすことなくオペレーションする。直接システムに接続すると逆にアルン自身の電子脳が乗っ取られる危険性が無視できないため、遠隔操作で。

「もうすぐ制御を取り戻せそうだ」

 音声ではしゃべらず、アルンは答えた。

「そいつはけっこう」

 ゲイスンも非音声のダイレクト通信。

「だが物理的にガイドアームに捕らえられているのは、どうする?」

 システムについては目処が立ったが、もうひとつの問題をワシェンゴが聞いてきた。

「そういやそうだよな……。ワシェンゴにバイブレーションソードでぶった切ってもらおうかな」

 冗談のようにアルンは言ったが、半分は本気だった。

「逆らっても無駄だぞ」

 アルンの沈黙を躊躇しているものと捕えて、シェ・ワンタオはやや苛ついた口調。

 そこへ、

「あっ、センサーが重力波の揺らぎを探知しています」

 マーヤが割り込んだ。

 ゲイスンが反応し、センサーを確認する。

「こっちも確認した。こいつはどこかから空間跳躍してくるな。しかしこんな近距離で?」

 跳躍ゲートを使用しない宇宙船内機関単独での空間跳躍では、どの座標に跳躍してくるか確率でしか計算できない。質量のある座標付近は避けるのが鉄則だ。下手をすると同座標に出現し、分子あるいは原子レベルでの融合が起きて強烈なエネルギーの固まりとなって宇宙に散ってしまう。

「出現しました。船外カメラをそちらに向けます」

 マーヤが操作すると、メインディスプレイが分割され、突如現れた質量体がズームアップされた。通常なら宇宙空間にまぎれて見えなくなるが、コンピューター処理され視覚的にとらえやすい画像となっている。

「銀河警察じゃないな……」

 映っている船影はゲイスンの記憶にある銀河警察の標準規格船とちがっていた。全長は三百メートルほどの戦闘船だった。

銀河警察あいつらがそんな仕事熱心なわけないだろ」

 アルンはばっさり斬り捨てるように否定した。こんな現場にわざわざ足を運ぶほど潤沢な予算が銀河警察にあるはずもない。それに、警察官もじゅうぶんな給料をもらえないから賄賂が横行する。シェ・ワンタオが海賊を続けられるのも銀河警察へ賄賂をわたしているからだろう。カネで動かない人間はいない。それがこの世の原則だ。もしもやって来たのが職務に忠実な警察官であったなら、アルンたちは捕らえられてしまい、回収屋に引きわたされ、ここで夢は潰える。が、その確率はゼロに近そうであった。

 では、現れた宇宙船は何者なのか?

「おそらく、これも海賊船だろうな」

 アルンはそう推測した。

「やつらの仲間か?」

 これからの起こるかもしれない戦闘を予感して、ワシェンゴの語気が強くなる。大勢の海賊相手に大立ち回り。避けようがないというなら、望むところだ。

「いや、仲間じゃないな。仲間なら、あんなあわててやしないさ」

 アルンが視線を向けるメインディスプレイでは通信がまだ遮断されておらず、相手の船の操舵室の様子が丸見えだった。シェ・ワンタオが画面の外に向かって、激しい口調でなにやら命令している。あの狼狽うろたえようはただ事ではない。

「たぶん、こいつらと縄張り争いをしているべつの海賊だ」

「べつの海賊だと……」

 ゲイスンはディスプレイに映る戦闘船を、どんな性能なのか探るかのようにジッと見つめた。

「ということは、わたしたち、どうなるの?」

 不安そうな目でアルンに意見を求めるマーヤ。

「さぁな。どうなるかな……」

 アルンはマーヤに微笑む。

「だが、なにが起きようと切り抜けてみせるさ。どうなるか、じゃなく、どうするか、だよ」


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