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兄弟子である王子殿下は秘密を抱える妹弟子に恋をする  作者: 岡出 れい
反旗の狼煙

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34/50

34. オスカーの独白

「せ、聖剣カラドボルグ…」


ネヴァン公爵は立ち上がると吸い寄せられるようにカラドボルグの側に近付いてくる。


「それが本物であると証拠を見せましょうか」


ティアはネヴァン公爵が自らの横を通りすぎる瞬間。

視線だけをネヴァン公爵へ動かしながら感情を殺した冷ややかな声で確認する。


ティアの声で弾かれたように固まったネヴァン公爵は、そのままティアに向かい叩頭した。

確認するまでも無いのだろう。先程ローランが見つけたものは聖剣のレプリカだった。

素人目には分からないかも知れないが、歴戦の将であればこそ、これが偽物だと疑う余地はない。


「ご無礼をいたしました。ティターニア殿下」

「わたくしに従うのであれば、今回は不問に処しましょう」


先程までの態度はやはりワザとだったのだ。

ティアを一刻も早く追い出す為の手段。もう少し上手い方法があったのだと思うが、戦には向いているが駆け引きは苦手なのだろう。


「ローラン。わたくしに聖剣を」


ティアの意図を察したローランはカラドボルグに指示する。カラドボルグはフワリと宙を舞い、ティアの右手に収まった。


「カルロス・ネヴァン!!」


ティアの力強い声に顔をあげ跪いた。

ティアはネヴァン公爵の肩にカラドボルグの刀身を置く。


「神に選ばれし真の王ティターニア・ルグ・セウェルスと聖剣カラドボルグの名において、カルロス・ネヴァンを従順なる家臣として認めます」

「御心のままに。ティターニア聖(・)王(・)陛(・)下(・)」



竜騎士にとって竜槍グングニルが憧れであるように、聖騎士にとって聖剣カラドボルグは同じ意味を持つだろう。そう考え、ローランは自らが持つカラドボルグを使っての交渉を考えた。


とにかく無事交渉は終わった。中立派がティアにつけば、後少しでティアの目的は達成する。


(もうすぐで全部終わる)


消える事のない鈍い痛みを抱えながらローラン達は帰路についた。





ーーーーーーーーーー


「やったぞローラン!!」


オスカーはローランの肩をバンバン叩いて喜んだ。

正直頑張っていたのはティアでローランは聖剣を出しただけで、何もしていない。

ティアは疲れた様子で部屋に戻り休んでいる。


「なあ、俺はティアと話せてない」


ああそうか。と思い出したように笑う。そもそもエブリンを黙らせろというオスカーの指示が無ければこんな事にはなってない。そう恨み辛みを込めた眼で睨むと、オスカーは両手をあげて肩を竦めた。

オスカーにとって歳の離れた弟が出来たみたいで楽しいらしいが、玩具にされるこちらの身にもなって欲しいとローランは思う。


「あとの調整はこちらで行うから心配するな。来るべき日の為、殿下には万全の状態で居てもらう必要がある」


それと、オスカーは続けた。


「父上に余計な詮索をされる前に殿下には王宮へお戻りいただく必要がある。ローランを護衛騎士として捻じ込むから殿下を護ってくれ」

「言われなくてもそうする」





ローランが去った部屋でオスカーはひとり溜息をついた。

2年前、ティアに話を持ち掛けたオスカーは自分が王配になる事で公爵派の不満を削ぎ、その上で膿を出し切ろうと考えていた。

14歳だったティアはオスカーの目的を理解し、最大限の努力をしてくれた。その最たるものが賢者シリルへの弟子入り。王を断罪するのは王でなければならないと、兄王を弑するための手段を手に入れた。

オスカーにすれば国王を弑する方法はいくらでもある為、ティアの思い出のひとつとして残れば良い。その程度の考えだった。

ティアが無詠唱魔法を会得する事も、ローランと出会う事も、オスカーにとっては想定外。


オスカーは執務机に積み重なった資料を眺める。

父上の断罪に向けた膿を抽出する為、不正の証拠となる資料だ。オスカーはその一枚を取って文字を追った。再びそれを戻すと、椅子に深く腰を掛ける。


(敬愛はしているが…)


オスカーにとってティアは仕えるべき王である。

その人柄は忠誠を誓うに相応しい人物だと思う。

だが恋ではない。オスカーがティアに感じる愛情を言葉にするなら家族愛に近い。

貴族は…ましてや王族の婚姻に自由は無い。だから気にする必要は無いのだと分かっていても、ティアの初めての恋を後押ししてやりたい気持ちがある。それはローランと出会い、ローランの人柄を知った事も大きい。


(多分、俺はローランを気に入ったんだろう…。)


ローランは眩しいくらいに真っ直ぐだ。だから年長者としてつい応援しなくなってしまう。


(…公爵派を押さえながら、クルドヴルムの王族を王配に迎える)


当初の目的に対して先は見えてきたが、これはまた難題だと、オスカーは天を仰いだ。


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