拾参
―邪馬台国―
イヨが邪馬台国の女王となってから既に一年が過ぎた。
戦争によって国力を消費した邪馬台、狗奴の両国はあれ以来ぶつかっていない。
この一年、イヨは邪馬台連合を再びまとめることに尽力した。
結果、わずか一年でイヨはバラバラになっていた邪馬台連合を纏め上げることに成功した。
鳳雛は立派な鳳凰となり、倭国の空に飛び立った。
いまやイヨの名はヒミコ同様、倭国中に知れ渡っている。
しかし、イヨには気になることがあった。
「ナシメが未だに伊都国から帰らない。」
援助を求めて伊都国に行った時、ナシメは「邪馬台国の王に報告をする」と言った。
イヨが女王になって一年、ナシメは未だに帰国しない。
イヨが伊都国へ連合の再盟約に行った際、ナシメは姿を見せなかった。
聞けば、すでに伊都国を発ったというではないか。
「いったいナシメは何処で何をしているのだろうか。」
今ではイヨの悩みの種の一つである。
「イヨ様。そう心配されることもありますまい。今の邪馬台国はヒミコ様の時にひけをとりません。ナシメもじきに帰って来るでしょう。」
ホミキが言う。
「・・・そうですね。」
イヨの悩みはそれだけではない。
倭国は以前戦乱の中にある。
邪馬台国派と狗奴国派は依然にらみ合いを続けている。
投馬国のような中立を保つ国も少なくない。
「倭国に平安を。」イヨの夢である。
しかし、それには遠く及ばない。
「カヒト様はどうしているでしょうか?」
イヨは、遠く狗奴国の空を見上げた。
―狗奴国―
狗奴国でのカヒトの地位は依然変わらない。
いや、余計に悪いと言ったところか。
伏した龍は、未だにその顔を見せる事はない。
「イヨ様は大きくなられた。」
カヒトは一人呟く。
あの晩に会った一人の娘の名は、今や倭国内で知らない者はいない。
それに比べて、自分はどうか。
カヒトは自分の不甲斐なさを痛烈に感じていた。
殿を見事のやってのけたカヒトであったが、そのことに対する評価はなかった。
狗奴国中が邪馬台国を潰すチャンスを逃したという、事実上の敗戦に沈んでいた。
※昔、書いていたのはここまで。
※続くかどうかは不明。




