猟で子供を生け捕った。
はじめまして。こちらでは初の作品で初めてオリジナルを書かせていただきます。
暖かい目で何卒よろしくお願いします。
サク、サクと落葉を踏みしめる音が辺りを支配する。どうも、この辺りには獣の類はいないようだ。このままでは無駄足のまま夜が明けてしまう。
今晩はよく晴れており、そして空気が澄んでいるのか、頭上を覆う鬱蒼とした葉の屋根から滴った濃厚な月光が眼に沁みる。
「…明日も干し肉で我慢するしかないか…」
最近は農家達が野菜が採れないと言って、その値段を引き上げてしまっているため、食うものがなく、困っている。保存食は何時か忘れてしまったほど前に作った干し肉のみ。しかも保存状態が悪いのか、かなり不味い。
「なんで獣の足音1つ聞こえないんだよ。痕跡すら無いし」
子供のように小さく愚痴を吐く。それに気付き、自分の抜けない幼さに若干気が遅れる。
重い猟銃を掛け直し、引き上げようと踵を返すと、微かに暗い茂みの中で何かが揺れた。
「しめた。兎か何かかな?」
兎なら手軽に捌くことも出来るし味も良い。当たりを引いたと内心ほくそ笑みながら猟銃を構える。
「む…」
しかし中々狙いが定まらない。身体が見えなくては撃とうにも撃てない。
…埒が明かない。小さく舌打ちをして一思いに1発見舞ってやろうと、小さく揺れた葉の間に狙いを定め、引き金を引いた。
しかし、命中しなかったのだろうか、なんの変化もない。
「はぁ、この調子だとしばらくは干し肉生活になりそうだな」
落胆し、肩を落としていると、何かかなりの質量が倒れるような音があらぬ方向から聞こえた。
「何だ…?」
背後に倒れ込んだモノは、肩まで髪が流れる子供だった。
絶え絶えな呼吸が肩を大きく動かしている。その隙間風のような呼吸の音が事態を顕著に表している。
ドッと冷や汗が吹き出る。思わず落とした猟銃の銃口から冷気のような白煙が立ち上り、鼻につく臭いが強くなる。
「おいおい!?石にでも跳弾したか?!」
そんなはずはない。鉛玉が跳弾する時は必ずと言っていいほど音を生じる。大体真後ろに弾が跳弾したらこっちがたまったもんじゃない。
「ぐっ…けほっ」
髪の状態と痩せた肌の様子から、どうやら栄養失調によるもののようだ。
血もどこにも流れていない。自分の弾が原因ではないと分かると安堵の溜息が溢れ出そうになった。
しかしここで見捨てたらそれは同じことだ。
「とにかく手当てだな。とりあえず家に運ぶから掴まれ…っ」
その子供の、皮と骨しかないと言われても信じてしまいそうな足で月の光が反射して鈍く輝くナニカが眼を刺激し、思わず瞼を伏せる。
「お前さん、何付けて……なるほど」
よく見れば、ぼろ雑巾のような布から出た子供の足に、そして首にと冷たく光る鎖が巻きついている。
雇用主から逃げ出した奴隷だとすぐに分かった。
「…たす…けて」
夜の静寂に消え入りそうな小さな声。弱々しく上げた顔は存外可愛らしい少女だった。
それで力尽きたのか、そのまま意識を失った。
「おや?奴隷をパクるとどんな罪だったかな?」
一切合切興味無い。
綿のように軽い少女を肩に担ぎ、少女ほど重い猟銃を拾い上げる。
そろそろ夜が明ける。急いで帰らねば。
お読みいただき、ありがとうございます。




