はじめてのクエスト!? まず周りを見てでしょ 顛末
16日後、石塚の町に無事に帰港しました。行きには1日の工程だった移動も船員MAXのため速度ペナルティーが解消され半日に縮小された。
石塚の町に入ると 見知った顔があった。渡しの五助さんである。軽く挨拶をし石塚屋へと急ぐ。
「ごめんください。ただいま戻りました。」と店内に声をかける。
旦那様は接客中のため軽く会釈を返すのみ。番頭さんが対応してくれる。
「お帰りなさい、フェルさん。旅はいかがでございましたか?」
「はい、順風でした。早速、お求めの物をご用意いたしました。お納めください。番頭さん。」
「フェルさん、すぐ確認しますね。では倉庫の方にどうぞ。」と番頭さんは許可をしてくれました。
「では運び入れます。」塩500樽を運び込む・・・80人がかりで6往復ちょっと・・・倉庫だけでなく庭にまで塩樽が溢れています。
最後の塩樽が運び入れられるのを確認していると石塚屋の旦那様が別の商談を終え、庭にやってきました。
「ふぇるさん、これは膨大な数ですね。依頼時には船の大きさから30~40樽ほど依頼したつもりでした。ハハハ。」
「いや、つい本気を出してしまいました。旦那様の御ためならば。」(本気だとクリッパー級の艦隊で戻りますが・・・)
「お支払いはすべて明銭で宜しいでしょうか?」
「できますれば水稲でお願いします。最後に木の実もあれば100樽ほどお願いします。」
「水稲ですと 2000樽になります。量的な問題で調達に2日かかります。木の実100樽の方は直ぐにもご用意しましょう。」
・・・ クエスト 塩の納品 を達成しました ・・・
・・・ 石塚町で調味料が暴落しました ・・・
これって塩屋フェル左衛門とか言われないよね。
木の実100樽を受け取りました。
「旦那様、そういえば少し大所帯になったため水運を手伝える者を探しています。どなたか船(船団)を扱えるものはいないでしょうか?」
「湊町ならば多くいると思いますが石塚の者ですか。船関係でなく他の職の者でもようございましょうか?」
「はい、よろしくお願いします。あとは自分で見て回りもしましょう。」
「では 後ほど。フェルさん」
「はい、夕刻には戻ると思います。リョウさんも後ほど。」
いつの間か近くに控えているリョウにも声をかける。
石塚屋さんはいくつか番頭さんに指示を出し店を出ていく。
石塚の町マップを確認すると酒場があるようだ。MMOで副官や提督を探す場所の定番は酒場でした。まずそこいってみようか。
酒場に入ると そうですよね。13歳の容姿だと早いですよね。じろりと見られてしまった。
「こんにちは。航海者のフェルといいます。海運に携わる者です。今度、規模を増やすにあたり冒険や交易に興味がある仲間を探しています。」と率直に言った。
「私は酒場の主人の助三といいます。宜しくお願いします。ただ ここは酒場だぞ。昼に来られても・・・」
「そうか。まず お近づきの印にこれなどどうでしょう。」と、鹿島の神酒を1樽差し出した。
「これは酒じゃないか。これは一体? フェルさん。」
「鹿島神宮にある造り酒屋で扱っているのと同じものですよ。」
「鹿島様のか? こりゃたまげた。で、情報を欲しいと。ふむ。どんな奴を探しているんだ?」
「ぶっちゃけ 海運の場合 商家との高いレベルでの交渉、海賊の荒くれとの追いかけっこ、操船に慣れていること、造船に詳しければ尚良しでしょう。なかなか難しいでしょう?」
「すべてを満たす奴はいないな。あ、フェルさんだけだろう。ハハハ。まぁ2、3候補があるよ。逆にそれしか ないってことだけどな。」
かいつまんで得た人物情報をまとめてみる:
候補1:
名 前:トキ
年 齢:15歳 ♀
身 長:143cm
体 重:・・kg
L V:冒険0/交易1/戦闘0
交易職:仕立師
言語 :日本語
候補2:
名 前:カネミチ
年 齢:35歳 ♂
身 長:163cm
体 重:60kg
L V:冒険0/交易1/戦闘0
交易職:武器商人
言語 :日本語
候補3:
名 前:五助
年 齢:25歳 ♂
身 長:158cm
体 重:57kg
L V:冒険1/交易0/戦闘0
冒険職:ハンター(漁師)
言語 :日本語
「おトキは針子をしているが元々は漁師の出自なので船に詳しいかもしれない。好奇心多い娘だから町から飛び出すだけの度胸がある奴だ。 カネミチはこの町の鋳物師だ。流れてきた風来坊と言えばいいか? 荒事にも商売にも向いてる職だしな。海関連は直接確認してみてくれ。 次は渡しの五助だ。河においては奴ほど熟知しているものはいねーかも。奴は漁師の家の出だしな。五助はお前さんとの知り合いなんだろ?あとは直接で頼むわ。 まぁ こんなものだ。」
詳しく連絡場所を聞いた、あたってみよう。
「ご主人ありがとうございました。」
「フェルさん、こちらこそ、祭りの酒をありがとう。」
まず五助に合いに渡し場に行く、フェル。
「こんにちは、五助さん。実は折り入って頼みがあって。」
「こんにちは、フェルさん。何ですか一体?」
「見ての通り、大所帯になってきて」と船団を示す。「一人ですべて賄うのも限界にきて一緒に水運業を共にしてくれる仲間を探しているんだ。五助さん助けてほしいのだけど、どうだろうか?」
「あっしでいいんですか?」
「是非に、準備ができたら明朝にでも石塚屋の離れまで尋ねに来てほしい。渡しはどうするのかな?」
「あ、弟か妹に任せますから 大丈夫でしょう。漁より私の方が生活は安定しますからね。」
次に おトキさんの所に伺った。町の工房で働いていた。
「こんにちは。おトキさんっていますか?」工房の方々に声をかける。
「はい、私ですが何の御用でしょう?」
「私は航海者のフェルと言います。少しお話をしたいのですが 今大丈夫でしょうか? 夕方以降ならば石塚屋の離れにおります。お伺いお願いしたいけど。」
「今は作業中がありますので日暮れ前にお伺いします。」
「お待ちしています。」
最後に 鋳物師の方を・・・ すみません、マッチョのお兄さんだった。おトキさんとの話を先にまとめるか。石塚屋さんの件もあるし、切り上げ、石塚屋さんに戻った。
そして ここは石塚屋さんの店内でございます。
「ただいま、番頭さん」いま旦那様はご不在のようで番頭さんに挨拶をしている。
「お帰りなさいまし、フェルさん。」
「番頭さん、こちらの商いに、蚕、生糸、絹生地、麻、綿花、麻生地、麻織物、羊毛、羽毛、うさぎの毛とか。」
「繊維、織物関係ですね。綿は聞かないかも知れません。麻は低額で取り扱いがあります。生糸、絹は高額となり少量ならあります。越後の青苧とか入荷可能ですが高額ですし在庫はないです。」
「更にお聞きしますが、家畜としてニワトリ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、シカ、野うさぎはどうでしょうか?」
「ニワトリ、ウシ、ウマ、ブタは良く存じています。ウサギ、イノシシ、シカならば山にいますね。勿論、狸、熊、カワウソなども食肉として狩りで得てます。でもヤギ、ヒツジは存じ上げません。」
「ウシ、ニワトリは入荷可能でしょうか? 飼育する土地もある程度ほしいですが買い上げできるのかしら? これは旦那様とご相談しますね。」
「そうして下さると助かります。日数を頂ければ入荷可能ですし紹介状を書きますので購入しに出向かわれてもいいかもしれませんね。ついでに買い付けも頼んじゃうかもしれませんが ハハハ。」
「こりゃ、かないませんね。番頭さん。あと渡しの五助さんを雇い入れますので明朝に離れに訪問予定です、針子のおトキさんが夕方位にきますのでお通し下さいね。仲間に引き入れるか打診中です。」
「分かりました。」
そして 夕刻 離れにて。
「フェルさん、良いですか?」と旦那様がやってきました。
「はい、お入りください。」と身繕いした上で、お返事します。
「何から話せば。まず製塩方法を教えて下さりありがとうございます。かなり効率的な方法みたいですね。また予想外でしたが石岡や鹿島の町でも塩をお売りになられたそうで、石塚屋のものが塩を売り歩いてると耳に届きましたよ。ハハハ。」
「それはお断りなしで済みません。ただ鹿島では石塚屋の名前は出していないですね。鹿島神社の杜氏とちょっとありましたのでそちらに・・・汗」
「その件も気になります。どのように鹿島の神酒を入手されたのでしょう?」
「水稲10ほど ご用意ください。お見せしましょう。」
「おリョウ、番頭に用意する旨つたえておくれ。」離れで控えているおリョウに声をかける旦那様。
「はい、旦那様」
狭い離れの入口に10樽の水稲が用意されている。若衆が下がったあと ここにいるのは旦那様、番頭さん、おリョウさんの三人だけとなる。
「では 秘伝を見せて差し上げます。他言無用でお願いします。」と言い切り、称号を工芸マイスターに切替、工芸レシピ 酒造秘伝・秘境編を使い 鹿島の神酒を作る。大成功しました。2樽の鹿島の神酒が出来上がりました。
「ほう~」と旦那様。
「「・・・」」と目が点となる、番頭さんとおリョウさん。
だよね、神様、MMOの生産ってあるいみチートだよね。
「今回たまたま調子よく、2樽できました。通常は1樽ですからね。ではお納めください。」
「なるほど、これならば大量の塩をあんな短時間に作れるわけですね。ただ仰っていた方法でも製塩できそうな目途はたっています。海水の煮炊きは木炭や炭の関係で価格があいませんね。フェルさん。」と旦那様。
「番頭さん、おリョウ。これは他言無用に。石塚屋のために頼む。」石塚屋が言った。
「「他言いたしません」」と二人が唱和する。
「鹿島の杜氏との約束ですべての秘伝は公開いたしかねます。たとえ旦那様であっても。」
「わかりました。」旦那様が招致してくれた。
「フェルさん、わたしは店に戻りますね」と番頭さんが下がる。
「あとは?」
「はい、いくつかご相談がありました。交易の関係上、烏山~石塚~鹿島~石岡の航路を確保したく思います。下野国~常陸国~下総国と隣国経ての交易が宜しかと。鉱物の助川も混ぜたくはあります。あとは遠方に石炭なる鉱物が埋蔵されてます。それを少しね。遠方に出るには開拓地を得て湊の整備がしたいです。石塚の御殿様が支援されている大洗磯前神社の河口の北側か神社の南側がいいですね。御許可を賜りたい。」確か日本って九州や北海道に炭田があった気がする。それ以外は外国かも。
「壮大なご相談ですね。その件は岡部様、小瀬様を通して御殿様と交渉となりましょうな。所で助川や常陸太田にはいかれましたか?水運ルートにそちらが入っておりませんが?」
「大洗磯前神社の北は御殿様と敵対する勢力なのでは?なので避けています。塩も競合しますしね。」
「で、交易品の話ですが。実は下総も常陸もほぼ同じです。まして水運なのでお魚や魚肉は共通です。よって新しい交易品を模索しています。鹿島の神酒とかですね。で、番頭さんに繊維、織物や家畜の話を切り出してました。」
「番頭より聞いてますよ。ウシ、ニワトリの件はお任せください。それを飼育する場所が開拓地であると。ふむふむ。相分かりました。」
「最後に仲間の件ですね。五助さんは明朝より手伝ってくださいます。針子のおトキさんはそろそろ来ますので打診します。で、旦那様の方にお願いしてた件ですがどうでしたか?」
「フェルさん、その件ですがお城の方より監視役を含め、一人配下に加えてください。理由はお分かりかと思いますが。」
分かりたくないが逆の立場だと凄く分かってしまう気もする・・・
「了解しました。ただし海には海の掟があります。従うべきは従って頂きますけども。」
「では明朝にその者に訪れるよう連絡いたします。」と旦那様が言った。
「明日の水稲を受け取り、加工し次第、出立しましょう。ちなみに神酒と黒酢と何れが宜しいでしょうか?神酒は100樽ちょっとあります。」
「神酒はすべて引き受けさせてください。明日の分は黒酢でお願いしたい。」
「分かりました。私の方は以上です。」
「では、失礼いたします。調整して参ります。おリョウ、ちょっと来なさい。」
そして去る二人。
暫くすると、おリョウがおトキさんを連れて戻ってきた。
「フェル様、おトキさんをお連れしました。宜しいでしょうか?」
「ありがとうございます。お入りください。」
「こんばんは、フェルさん。」おトキが言った。
「こんばんは、おリョウさん。先ほどはお仕事中に失礼しました。航海者のフェルです。この度はおリョウさんに水運のお仕事を手伝って頂けないかご相談をと思いましてご足労頂いています。」
「はあ、針子に御用とは?」
「水運とは船を率います、商機をつかまねばなりません、臨機応変の対応が必要となります。おトキさんのことを調べさせて頂きましたが漁師の家にお生まれになられていること、針子という職を通して商いに関わっていること、気質的に前向きであること つまりおトキさんほど素養がある方がいませんね。どうしょう?」
「そんなに買って頂けるのでしたら挑戦してみましょうか。すぐに工房に話をしてきます。これは石塚屋さんもご存知でしょうしね。」
「勿論、お話は通していますよ。ですよね?おリョウさん」
「え、はい。旦那様も番頭さんもご存知のお話ですね。」
「フェルさん、明日の夕刻までに支度させてください。宜しいでしょうか?」
「えーと 夜は出航ないので明後日の朝にご用意をお願いします。明日は近くで 出航準備の予定ですね。石塚屋さんとの取引が残っています。」
そしておトキさんは離れから出ていくのである。 かくして仲間が増えつつあります。