後悔
「ほら、目が似てるじゃん!!」
「えっ…えっと…。」
「あっ、あと、鼻も!おんなじ!!」
「い、いや…」
「認める気になった!?」
「……。」
「ねえ!」
「……。」(こ、怖い…)
原田あさみ…何でこんな人と、僕は付き合ってしまったんだろう…。
中2の夏、話したこともない、あさみに告白された。僕は、目立たない方で、女子と話すのは必要最低限で…って言っても、男子とも、そこまで話すわけじゃなくて…とのかく、友達の少ない、日陰の存在だった。あさみは、思い込みが激しくて、成績が驚くほど悪くて、気分の浮き沈みが激しくて、クラスで浮いていた。親も変な人って聞いたことがある。身だしなみもだらしなかった。でも、好き!!!っていう言葉の強さや、純粋さに、僕は、つい、頷いてしまった…。
あさみは、驚くほど積極的で、付き合って数日で、僕の家に乗り込んできた。そして、べたべたキスをしてきて、「好き!好き!」と言ってくる。僕は、悪い気はしなかったが、女の子というより、犬を相手にしているようで、いや、犬に失礼なくらいかもしれない。とのかく人間を相手にしている気がしていなかった。
ある日、夕方に、あさみは突然訪ねてきて、「見てー!!」と言って、服を脱いできた。「な、何!!ちょっと?」と言っても、「えへへ。」と笑ってくる。それが気味悪い。でも、「見たい?」と笑う彼女を良いことに、僕は、迷惑そうな顔を作って、本気では止めなかった。正直に言うと、こんな人でも、女性がどんな身体をしているのか、僕は見たかったんだ。
あさみが、服を脱ぐと、僕は、目のやり場に困ってしまった。そして、今更、「服着ろよ。」と言った。すると、あさみは、「何で?」と心底、不思議そうに言った。「風邪引くだろう。」と言うと、「わーー!」と意味もなく叫んで、僕のベッドでぴょんぴょん跳ねた。僕は彼女の下半身が、耳の辺りまで、上がっては落ち、上がっては落ちるのを、感じ取っていた。
僕は、「やめろ。」と一度言ったが、全く聞かずに跳ねているので、「あさみ!」と怒鳴った。叫ぶのはやめたが、まだ跳ねている。僕は、裸のあさみを力尽くで、押さえつけた。あさみは、ベッドに膝を折って、座ると、僕の唇に、自分の唇を押し付けてきた。僕のファーストキスだった。
あさみは、ものすごく深くキスをしてくる。僕も、何だか負けん気が起こって、押し付けるようにキスをした。ちゃっかり舌まで入れてみた。すると、あさみは、驚いたようで、口を離して、「わぁ。」と言った。その顔がすごく間抜けで、何だか子供じみていた。裸の女の子とディープキスをしたのに、僕は、何だか現実味が湧かなかった。でも、十分にドキドキしたし、僕の頭は、興奮で波打っていた。
「あさみは、たーくん、大好き!」と言った。僕は、何とも返しがたかった。しかし、僕が言葉を継ぐ間もなく、あさみは、僕に抱き着いてくる。「ちょっと…。」とためらう僕を押し倒して、あさみは、「たーくん…。」と迫ってくる。僕の胸に、ほっぺを乗せて、僕のお腹辺りに、胸を乗せて、彼女は、熱い体を僕に押し付けてくる。僕は、柔らかいな、温かいな…と、だんだんと、単純化した興奮に飲まれていた。
「やめろよ!!」僕はまた、口ではそう言いつつ、あさみなら、何をされても分からないんじゃないか…と思っていた。僕は、本当にずるかった。あさみならいける、とそんな、下品な計算をしていた。途中、あさみは、「何してるの?」と聞いてきた。僕は、「触ってるだけ。」と嘘を言った。 僕は、だんだんと、自分の頭がおかしくなっているのを感じた。あさみは、僕に身を委ねている。僕は、男として、今、彼女の体をここまで反応させているんだ!僕は、気持ちよさそうにする、あさみに、すっかり満足して、先に進めるのもやめて、背を向けた。あさみは、「おしまい?」と聞いてきて、不思議そうな顔をした。僕は、何の言葉も返さず、これでいいんだ、という顔で寝た。
これで、終わったら、本当に、良かった。けれど、あさみとこんな事を繰り返すうちに、僕は、あさみを本当に抱いてしまった。
中2の秋、あさみが引っ越して、僕はあさみと別れた。別に悲しくもなかった。あさみもその頃には静かになって、前みたいにべたべたしなくなっていた。そうだよな。これが自然消滅か…と僕は、そんなふうに都合よく考えていた。
目の前のあさみは、僕に、「ねえ、たーくん、さみしかった?」と聞いてくる。
「は?」
「さみしかったんだ…。」
「僕は何も答えてないよ。あと…たーくんってやめて…。」
「ねえ、たーくん。」
「だから…!」
「この子、本当にたーくんの子供だから…。」
「そ、そんなこと…あり得るわけ…」
「ほら、だって、目が似てるじゃん!」
「似てないよ。」
「鼻もおんなじだよ。」
「そんなことない。」
「えーー!!」
僕は、あさみが連れて来た、3歳くらいの男の子を見ても、別に似てるとは思わなった。ただ、あさみが3年ぶりに急に、僕に電話をしてきて、「会いたいの!!」と言った、その時に明確に断れなかった自分を恨んだ。




