芸術になる技。
目線をヘールラに合わせる。弓を斬るとバレない様に。
「なんですか? また斬ろうと試みるのですか? 結果は―――」
「―――アクセル・ステップ」
一瞬で距離を詰め、弓を斬った、そう思った。
だが、グランドの刃が入らなかった。
「そう簡単に斬れると思っていたの?」
「……ッ」
弓とグランドの刃が擦れて火花が散る。嫌な音を立てながら押していく。
「斬れるわ」
「甘い考えで私に勝てるとでも……?」
「ええ、実際に押しているのは私だからよッ!」
押し斬る。だが、掠っただけで大きな傷も弓にない。
なかなか進まない戦いだ。
「『二重詠唱』アクセル・ステップ圧縮———断鋼瞬光一閃」
音はあった。だが、気づいたころにはヘールラの弓は跡形もなくバラバラになっていた。その欠片すら美しいほどの斬れ方だった。
「へ……?」
《断鋼瞬光一閃》この技は人を斬る技ではない。綺麗に物を斬る技だ。この技で芸術品ができる事もある。その斬った断面は滑らかで、斬られた跡がないほどだ。
それにスピード特化の効果《アクセル・ステップ圧縮》を組み合わせた、それだけでもう技としては全くの別物であった。
ヘールラの手がゆっくりおろされる。先ほどまで弓を握っていた手は、力なくぶら下がっている。
「女神、私を怒らせた事……後悔させてあげる」
ヘールラは、一歩、また一歩下がっていく。そのたび私は一歩ずつ詰めていく。じわじわと苦しめていく。フィオナの身体は、ヘールラの焦りによって汗がにじみ出ている。
「さ、再生成……」
弓を再生成する。だが、弓を再生成したせいで魔力がもう残り僅かになってしまった。矢の生成などは魔力消費が少ないが、いずれ限界が来る。
ヘールラは逃げることを決めた。
「……また会いましょう」
ヘールラの魂はフィオナの身体から抜け、元居た場所へと逃げ帰っていく。フィオナの身体は力が抜けて地面に倒れた。
「フィオナっ!!」
私はすぐ駆け寄った。フィオナが目を覚ますことを祈って。それと同時にすぐ目を覚まさないだろうと予想は付いていた。
身体も精神も負担がかかり過ぎているはず。そう簡単には目覚めないのはわかっている。ただただ目を覚ますことを祈ることしか出ないんだわ。
それは前世も現世も同じだ。いくら強くたって得意不得意あるもの。人間ってのはそういうものだもの。そんなの、とっくの昔にわかっていた事なのに、こういう場面になるとつい祈り、願ってしまう。
「―――ッ。家に帰るわよ。フィオナ」
私はフィオナを持ち上げて、家に連れて行った。
山は壊滅的だった。戦いの跡は自然を傷つける元だというのに、ね。仕方ないですませることはできない。責任を持って自然が戻るようにするしかないわ。
ギルティナは下山途中、王都の景色を見た。
「何も、変わっていないわよね」
少しの心配を残しながら下山をしていくギルティナだった。
今回は複雑ですかね?
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