ゼロ イチ その1
人は本当の自分を知らずにはいられない。
知りたくても知るすべがない。
だけど、よく自分に言い聞かせて。
自分の知らない本当の自分が分かるはず。
この世界ではそれがあなたの力になるから。
ヒノミ「あーした天気になーれ!」
少女が放った長靴はクルクルと回転して、水溜まりに落ちた。
水滴が灰色の空を綺麗に写していた水面から、嬉しそうに跳ねた。
フタコ「ヒノミ。やっても意味ないことしてないで、集中して。」
ヒノミ「こういうのは、やることに意味があるんだよ。」
雨が止んだばかり。苔を生やした廃墟ビルの中で、2人の少女が姉妹のように話した。
茶宮「よーし、よーし、よし。あずきちゃんは世界一かわいいねぇ。」
茶宮は家に帰ると、愛犬のあずきちゃんと5分間たわむれた。
あずき「へっへっへっへっへっ。」
茶宮「はーい。ご飯だよ。」
水色をベースに小豆の絵を描いた餌入れに大盛の犬用ご飯をいれた。
茶宮(さて、今日は何を歌おうかな。)
茶宮はカラオケが大好きで、家は完全防音だ。
「プルルル。プルルル。プルルル。」
茶宮「携帯?」
「プルルル。プルルル。プルルル。」
茶宮「どこー?」
「プルルル。」
茶宮「あ!はい。京都府 隊長 茶宮です。」
戸田「隊長ですか!副隊長 戸田です。やばいです!敵が強いです。ヘルプです!」
戸田は早口で勢いよく茶宮に助けを求めた。
茶宮「え!?もしもし!もう一回言って!」
戸田「何でいつもそんなにうるさいんですか!敵です!助けてください!」
茶宮「あ!はい!はい!分かった。すぐ行くよ!」
ブツ!
戸田「え!何ですか!?もしもしもしもし!嘘でしょ!もう!バカ!」
茶宮「誰がバカだって?」
戸田「え!?(い、いつの間に)そんな事言いましたっけ?」
茶宮「あれぇ?ヤバいんじゃなかったっけぇ?何もないなら帰ろうかなぁー?」
戸田と茶宮が話している周りでは敵が暴れまわっていて新人達は逃げ回っている。
一応戸田の能力。「守るもの」で怪我人は出ていないが集中力が切れるのも時間の問題だ。
戸田「(このバカはまた調子に乗りやがって!)まっ待って下さい。すみませんでした。私の力ではもう限界です。助けてください!」
茶宮「よし!じゃあこの数を1つ1つ相手するのも面倒だから一気にいくか。」
ニュース「続いて、今日と明日の天気です。今夜は雲1つなく、星が綺麗に見えるでしょう。しかし、一部の所ではゲリラ豪雨になる恐れがあります。傘を持って外出しましょう。明日の天気は…」
ポツ…
戸田「雨?」
ポツ…ポツポツ…ポツポツポツ
バタバタバタバタバタバタ
ザーーーーーー
茶宮「え!?また雨。降ったり止んだりどうなってんだよ。もういいや。ゼロ。」
ガチャ
夫「ただいま!」
トントントントントン
妻「あらあなた、おかえりなさい。」
夫「いやー。ちょうど降ってきてさぁ。危うくうたれる所だったよ。」
ザーーーーー
妻「あら?雨。ほんと、危なかったわね。」
夫「はは。」
子ども「ママーあそこだけ雨が途中で終わってるよ。何で?」
戸田(やっぱりこの人が最強だ。この範囲一体に屋根を作ってしまうなんて。)