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4.勇者の仕組み

誤字脱字あるかもしれません。至らないところばかりですがよろしくお願いします。

「おぉ、これはこれは勇者様どうかされましたか?」


「いやーゴブリンだとあんまり経験値はいらないみたいでねー。ほかにいい狩場ってどこかないか聞きに来たんだ」


(さぁここからだ、ここからどう返す。返答によっては…)


「おぉ、そうでしたか。でしたら少し遠いですがここから馬車で半日くらいのところに古い城があるのですが、魔物のたまり場になってるそうですのでそちらはどうでしょうか?」


(…巫女さんの言った通り。わたしは…)


「…どうしてその城が魔物のたまり場になってるか知っていますか」


「え、それは…」


「いいや、あなたは知っているんだろう。そこには魔王軍の幹部がいると聞いた」


「それは…」


「わたし達をそいつに殺させるつもりだったな」


わたしは腰に挿した剣に手を掛ける。


「お、お姉、さん!なにを!」


「こいつはわたし達を殺そうとしてる!そんなことはさせない!殺されたら魔王を殺せないじゃないかぁぁぁぁぁ!!」


わたしは剣抜き、玉座に座る王の元へ駆け出した。


LV2になったことでその身体能力は人間のそれを超えていた。


そう、Lv1から上昇しないこの世界の住人には不可避の一撃…そのはずだった。


だが、実際には剣は空を斬る。


「なっ躱した!?」


「Lv1から成長できない私達がどうやってこの魔物の溢れる世界を生き残ってきたと思いますか?」


背後から王の声が聞こえ、わたしは振り向くと。


宙に浮く王の姿があった。


王は質問の答えを言う。


「魔法、ですよ」


そう、王は身体能力で躱したのではなく魔法を使で転移して躱したのだ。


「あなたがどやってあの城の事を知ったのかは知りませんが…その身体能力、あなた()()()()()()()()()


そうだ、わたしは人を殺した。




昨夜のことだ、巫女に勇者のことを教えられたのは。


「勇者の仕組み?何のことですか」


「勇者様は今日ゴブリンを狩っていたんですよね」


「えぇ、そうですけど」


「レベルはあがりましたか?」


「あがりませんでしたけど…」


「でしょうね…ゴブリンを何万匹倒してもレベルアップは出来ませんンよ」


わたしは徐々に空気が張り詰めていくのを感じる。


「それは、どういう…」


「まぁ実際に体験したほうがはやいですよ、ついてきてください。勇者様をレベルアップさせてあげますよ」


そう言うと巫女はわたしを連れて城の地下に来た。


暗くてほとんど見えないが、薄気味悪いものを感じる。


「ここは?」


「牢獄…ですよ。わるーい犯罪者がここに閉じ込められているんです」


巫女が蝋燭に火を灯すとあたり一面にひろがる牢屋がその姿を現した。


元からそこにあったはずなのに視認することでその存在感が確かなものへと変わっていった。


「どうしてわたしをここに?」


「…ゴブリンを何匹倒しても瓶に水は溜まらなかったんですよね。それじゃあナニを倒せばレベルアップ出来ると思いますか」


「それは…やっぱりもっと強い魔物とかじゃないですか」


「いいえ、それは違うんですよ。勇者がレベルアップするには()()()()()()()()()()()()()


巫女はあくまでも軽い調子で言う、それが言葉に現実味を持たせない。


「嘘、ですよね…勇者は神様がこの世界を救うために送り込んでくるって言ってましたよね。ならそんな仕組みなわけないじゃないですか」


わたしはその言葉が信じられず、声を荒げる。


「確かに私が嘘を言ってるかもしれませんね。ですが、殺してみればわかるじゃないですか。それに本当にレベルアップできるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()


(そうだわたしは魔王を殺すために強くならないと、魔王を殺すためなら、なにをやっても……許してくれる)


わたしの頭の中でそんな思考が巡る。


巫女が近くの檻を開くと、中で一人の男が眠っていた。


さっきのわたしの声でも起きなかったようなので熟睡しているらしい。


「…ごめんなさい」


わたしは腰の剣を抜き……男の心臓を貫いた。


「レベルアップしました」


その瞬間脳に直接無機質な声が響いた。


カードを手にした時と同じ、精霊の声だ。


そしてその言葉は巫女の言葉を真実だと確信させた。


精霊の言葉が続く。


「スキル【熱耐性】を獲得しました」


精霊が獲得したスキルを教えてくれる。


人を殺して得た力だ。


「巫女さん…どうして王様はこのことを教えてくれなかったのかな」


わたしは巫女に問いかける。


「わかりませんが勇者様達をレベルアップさせないで強い魔物と戦わせて殺そうとしてるんじゃないですかね」


「そんなこと…させない」


私の中に怒りがこみ上げてくる。


それは王に対してのものなのかそれとも、もっと別のものなのか、わたしにはわからない。


「まだそうと決まったわけじゃないですからね。何か事情があるのかもしれませんし。そうですねーここから馬車で半日くらいのところに古い城があるんですけど、そこに行けと言われたら確実に殺しに来てますね。そこ、魔王軍の幹部がいるので」


巫女はやはり軽い調子で言う。


だが、彼女の言葉は信じるに足りるものだろう。


レベルアップした事実を踏まえてわたしはそう考えた。


「ありがとう巫女さん、明日王様と話してみるよ。今日はもう寝ますね、おやすみなさい」


わたしは巫女さんを置いてひとりで部屋に戻った。


部屋に着くまでに様々な思考が脳内を飛び回る。


魔王の事、勇者の事、王様の事、巫女の事。


なにより、人間を殺したことを。


なぜあんなに簡単に命を奪えたのか。


それがわたし自身が全く理解出来ていなかった。


部屋に着くとそのままベッドに倒れこむ。


(人間を、殺した)


魔王を殺すためには人間を殺さないといけない。


人間は殺したくない。


魔王は殺したい。


(魔王を殺すためだ仕方ない…仕方ない……殺したくないのに。殺すしかない。ごめんなさい…ごめんなさい…)

ありがとうございました。感想などくださるとうれしいです。

続きます。

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