5.犠牲
誤字脱字、拙い文章などなどすいません。
「そうだよ、わたしは人間を殺した。…これからも殺すよ、魔王を殺すために」
(それがわたしの結論だ、魔王を殺すために人を殺す)
「そうですか、せめてもの償いとして我々は手を出さないつもりでしたが…あなたをここで殺します」
そう言って王様が前方に手を差し出すと、青く輝く魔法陣が現れる。
「あなた達は嘘ばっかりだ…魔法が使えるなんて言ってなかったじゃないか!」
わたしは剣を振りかぶり王様に突撃する。
が、王様にたどり着く半歩手前で魔法陣の輝きが赤へと変わる。
魔法陣の真ん中にナニカが現れた。
(あれは、やばい!)
わたしは急いで後退する。
「王様ー急に呼び出さないでくださいよ。こっちはこれから実験だっていうのに」
魔法陣から現れたナニカが王様に話しかける、それの放つ強烈なプレッシャーとは違う軽い口調だった。
「すまんな、Lv2のあいては生身のわしじゃきついのでな」
それのシルエットは甲冑をより人の体に近づけたものと言えば伝わるだろうか、全身が黒く、角ばった所が多く存在している、そしてその手はガントレットのように鋭い指先を持っていた。
その頭部がこちらを睨む。
「だから殺しちまったほうがいいって言ったんだぜぇ俺は。たく、損な役回り押し付けやがって」
わたしは剣を構えるが、直感でわかってしまう。
(勝てない…勝てる気がしない!)
「ごめんな嬢ちゃん、俺はこの国の人たちを守らねーといけねーんだわ」
その瞬間黒の塊が消え、恐ろしい速度でわたしに向かってくる。
一瞬で距離を詰め、右腕を振りかぶり、わたしの心臓を目掛けて刺すように腕を突き出す。
が、その攻撃がわたしに届くことは無かった。
ゴっと衝撃音と火花をまき散らし、防がれる。
「なにっ!?」
その攻撃を受け止めた小さな勇者は無邪気に言う。
「お姉さん助けに来たよ」
「君…どうして」
「お姉さんがピンチだから助けてって巫女さんに頼まれたんだー。まぁ同じ勇者だし助けるのは当全なんだけどね」
変わらず笑顔で続ける少年。
巫女さんが彼を呼んでくれたらしい。
「無視して話してんじゃねぇぞ!!!」
甲冑の男が右足で蹴りを放つ。
ゴっと強烈な音と共に男の子が宙に打ちあがられる。
「君っ!」
男の子は宙で身体を捻り地面に叩きつけられるのを何とか防ぐが倒れこんでしまう。
「ごめんっお姉さん、こいつ僕じゃ勝てないみたい」
攻撃された腹部を抑えながら絞り出すように言う。
「王様、今ので死んでないってこたぁあの坊主Lv10はいってんぜ」
「うむ…わしのせいだ…わかっておる。この責任は全てが終われば必ず取る!」
「そうだな、そんときゃ楽に死ねる薬でも作ってやんよ」
「あぁ、ありがとう」
「あんたは逃げな巻き込まれるかもしれないぜ」
王様は頷き自身の足元に魔法陣を出現させ、消える。
男の子がギリギリの様子で立ち上がりわたしにだけ聞こえるように言う。
「お姉さん…僕が時間を稼ぐからその隙に逃げ…」
その時無機質な声が脳に直接響いた。
「スキル【戦闘代理人格】活動限界。次回使用まで12時間です」
わたしの精霊の声ではない、おそらく男の子の精霊の声だろう。
「………………………………………」
男の子がその場に倒れる。
「君?」
そして気づいた、無口だった男の子が戦闘で明るく振舞っていた理由。ゴブリンの心臓を一撃で貫き、地面に叩き付けられるのを回避する身のこなし、そんなをこ技術をこんなに小さな男の子が持ってるはずがなかったのだ。
(男の子でも敵わなかった…わたしじゃ全く歯が立たない…どうすれば!)
「それじゃぁ、とどめと行こうか!これから実験する予定だった冥途の土産に新機能を見せてやる」
わたしは剣を構えるが足が動かない。
(男の子でも勝てないのにわたしが、勝てるわけない…)
甲冑の男が手のひらを開き腕を前に突き出す。
「名付けて魔法増強装置だ!この機能はその名の通り使用者が発動する魔法の威力を何倍にも引き上げることができるのだ!」
自慢する子供の様に甲冑の男が言う。
甲冑の男の手のひらに魔法陣が出現する。
そして巨大な火の玉が魔法陣から出現する。
「お、おぉ!すげぇ!こぶしサイズの玉を出す魔法でこれだぞ!?あぁ俺はなんて天才なんだ!」
左手を顔の部分に当てて高笑いする甲冑の男。
(もう…だめだ…)
「じゃあな、恨むなら王様とくそじじぃを恨めよ」
甲冑の男の手のひらから火の玉が放たれ一直線に向かってくる。
「お姉、さん!!」
突如、わたしの前に人影がわたしを庇うように入ってくる。
ずっと背後で震えていた少女だ。
「ダメ!逃げてぇぇぇ!」
(このままじゃ三人とも死ぬ!)
わたしは少女を突き飛ばした。
LV1の少女よりLV2のわたしのほうが軌道を変えるくらいはできるかもしれな、わたしのほうが生き残れる確率が高いかもしれない。
行動してからそんな言い訳を考える。
(…おかしいな、魔王を倒すための命なんだけどな……いやっわたしのスキルならっ!)
「【熱耐性】!」
ドンっと火の玉がわたしに直撃する。
「お姉、さん!!!」
煙が上がりあたり一面何も見えない。
「わりぃな、あんたにも死んでもらうぜ」
少女は力なくその場に泣き崩れてしまう。
甲冑の男が近づき拳を振り上げる。
「まって!」
声がしたのは煙に包まれた場所からだった。
「まだわたしは生きてるぞ!」
「お姉、さん!」
「な、直撃だったはずだ!どうやって助かった!?」
少女は歓喜、甲冑の男は驚きの声をそれぞれ上げる。
「わたしがLv2になったときに獲得したスキルのおかげでねなんとか助かったんだよ」
(まぁ完全に忘れてたんだけどね)
「スキル…か。だがさっきの攻撃を防ぐスキルとなると大体の見当はつく。おおかた火が効かないとかそんなスキルだろ。ならばこの手で確実に殺すまで!」
「いいや、あんたはわたしには勝てない!」
「何?」
わたしは剣の切っ先を下に、正確には倒れている男の子に向ける。
「まさか!?させるかっ!?」
わたしに向かって走り出そうとする甲冑の男、だがその一瞬。
ヒュンと矢が空を切る音が甲冑の男の背後からする。
甲冑の男は背後に向き直り矢を掴む。
「行かせ、ない!」
Lv1の少女の攻撃、たとえ直撃したとしてもダメージなんてないだろう。そんなことは頭ではわかっているはずなのに自然に身体が防御行動をとってしまう。それが人の本能だからだ。
そしてその一瞬が勝負を分けた。
「ごめんなさい…こうするしかないの…ごめんなさい…」
先ほどの火の玉を直撃ではないにしろ至近距離で受けたらしくその小さな身体には無数の火傷があった。
だが息はあるようで口が少しだが動いている。
わたしは彼の心臓に剣を突き刺した。
その刹那脳に男の子の声がした。
よく知る声でありながら全く知らない彼の声。
それが彼のスキルなのか幻聴なのかは、わからないが。
「…いい…許す…だから魔王はお前が殺せ…………………………………もっと喋りたかったな…」
少しだけ、ほんの少しだけ救われた。
わたしは涙をこぼしながらそれでも凛々しく剣を構える。
「…絶対に、お前を倒す!」
続きます。




