運命の始まり 邂逅する白
「無陸・・・・・・」
それは可愛らしい声
一人、牢屋で嘆く少女の声だ
その牢屋は簡素なコンクリートの打ちっぱなしのような
石でできた牢屋だ
その場所には少女しかいなかった
というより居れなかった
特別に作られた孤独の場所
少女が贄である証拠がその場所にいるための方法
贄にされるのはいつかもわからない
状況的には冤罪で捕まり
長い時間、幽閉されている
そんな感じだ
少女は何も悪いことはしていない
単に特殊な体質だから
それだけで罪人以上の苦しみを負う
間違ったこの状況は感覚からしたら永遠に近い
しかしその状況で希望を失わないのは無陸という騎士がいるからだ
無陸自身は無価値だと認識している口ぶりだが
誰かにとってはヒーローか必要とされる人材
少なくとも周子からしたらヒーローだ
無陸の名前を呼ぶだけで力が湧く
心の支えで周子の初恋の人だ
そんな孤独の一方で作戦を展開していたのは無陸だ
「行くぞっ!」
【おおーっ!】
一つの声に幾千の声が呼応する
無陸は聖王刃を取り戻しにある村に侵攻していた
そこは聖王刃を管理し守る一族が住む
刃鍛冶の村
その村は聖王刃を渡すことで村人の避難は終えていた
村の長の判断が正しいのかは今、証明される
無陸は素手こそあんなだが一応にも剣道は段を持つほど
剣には慣れている
しかも剣道と言っても人を鍛えるものではなく
人を殺めるもの
なぜ、普通の高校生がそんな危険な代物を知っているかは
後にわかる
無陸達の国
グランハーレでは移動手段は馬ではない
特殊な技術を使った徒歩だ
〈颯の靴〉(ウィンディ)という靴で移動する
戦闘さえも優位に進めるその靴は使用者の技能によっても能力が変動する
カリンスやクリウスは空中で二段ほど飛ぶことが出来る
カリンスやクリウスは足に力を込めやすいためだ
カトリは下半身に込めやすいため
剣の攻撃力すなわち力の伝達が凄まじい
剣は足が基本と言うが
それは踏み込みの強さがものをいう
使い方によっては必殺技レベルまでの力まで出る
無陸は足限定のはずの力が全身を伝っているからか
全てのアクションやモーションが段違いだ
まさしく人を超えている
聖王刃の力を得ればどんな化け物でも倒せる
そんな手練れ達が奪還を目指す
相手の国は一国ではなく
利益重視の国、単なる崇拝の国、戦闘国家といった
連盟で軍を作っている
なぜ従うかは知らないが
敵国は多かった
しかし今回はそれにしては少ない
ざっと三千と言ったところだ
陽動であれども少なすぎた
無陸達、グランハーレは守護の軍の方が多い
精鋭部隊である本軍は五十程度だ
つまり攻めに来ているのは五十程度
過去の戦線もこのぐらいだ
個々が強いのはカトリの訓練の賜物だ
そして無陸の戦術
今回は主力で正面を破り雑魚を脇へ流し
兵に実践を積ませることも含んでいる
最初に突入したのはカリンスとクリウスのコンビだ
カリンスの銃は貫通と打撃に重きを置いた二つの銃で戦う
盾を持つ手を貫通弾で貫いたあとに
打撃の弾丸で吹っ飛ばす
威力も高くそして玉切れが無い
それは弾丸をストックするというより
携帯格納庫(インフィニティ―)と呼ばれる
特殊な格納庫と銃の連携させているためだ
それに加えてクリウスは盾の使い手で
どこぞのアメリカンヒーローより使い方が異様だ
盾の厚さを変化させたり範囲を大きくすることは当たり前で
捕縛までできる変形盾
しかも盾は一つではなく無数に召喚できる
カリンスはいつも通り盾の前衛の手元を貫通弾で打ち抜き
クリウスが盾で吹き飛ばす
スナイプする打撃弾で前衛を叩き潰す
ゆるんだ前衛を突き進み攻撃専門の槍やら銃やらの兵を
ばったばったと倒す
そしてあらかたの雑魚を倒すと
敵将らしきものが現れる
「鈍っていないな!無陸っ!」
「いつも思うんだけど人格変わってないかな?」
カリンスとクリウスが陽動の正面部隊で敵の気を引き
敵が手薄になったところ突っ切って行っていた二人
久々に会えてうれしいのかと思ったが
そういえばと思い出す
過去の戦線でも戦いになるとテンションが上がることを思い出す
「そういえばそんなんだっけ」
「なにかいったか!」
「いやっ!なんでも!」
こちらもばったばったと倒していた頃
敵将に遭う
「はっはっは!まさか貴様も来ていたとはな!無陸!」
豪快に笑いながらどっしりと待ち構えていたでかい男は戦友を呼ぶように
無陸の名を呼ぶ
「だれ?」
無陸の記憶に男はいなかった
「忘れたか!無陸!わしを倒したことを!」
しかしカトリは知っていた
「無陸!そいつは手強いぞっ!聖王刃でようやく倒したやつだ!」
「へえ~」
「本当だっ!」
確かにオーラというか殺気の感覚がする
それに持っている得物はとてつもない大きさの剣のような槍の様な武器だ
「確かに強そうだけど・・・・・・倒せない相手じゃないよ?」
過信している口ぶりだがそれを言うだけの実力があった無陸
飛んで間合いを敵兵を倒しながら詰める
「はっはっはっ!そうでなければな!」
男は薙ぎ払う構えを取り迫る剣に備え
お構いなしに突っ込んでくる剣先を薙ぎ払ったつもりだった
無陸は相手の薙ぎ払いを下にしゃがんで避け
逆に足を薙ぎ払い後ろに倒す
斬るというより打撃を与えた
無陸は能力が優れている
しかし、それは人間以外限定
何故かといえばこの世界に初めて来たのは小学一年の時だ
周子が初めて攫われ医師にトラウマを植え付けたその時
この世界で目が覚める前に不思議な存在と契約した
その記憶は曖昧だが
力を得るその代わりにある戒律を受け入れるというコースを選んだからだ
その技術に必要な何かを持っていたためそのコースだったらしい
そして必要なものとは人を殺める剣
それは前世の記憶で持っていたからと覚えている
そんな剣で大男を一発で牽制した
打ち所が悪かったらしく気を失っていた
それは剣先でなくちょうど頭の位置に石があったから
カリンスとクリウスは敵将に手こずっていた
貫通の弾丸は避けられ盾も吹き飛ばされる
そんな状況
くねくねと動く気味の悪い敵将は
人ではなかった
「これは無陸の兄さんしか倒せないかも・・・・・・」
「無陸お兄ちゃんには迷惑かけられないし・・・・・・」
そんな時に無陸の言葉が過った
「勝てない時は自分の得意分野に持ち込むんだ」
≪得意分野っ!≫
カリンスは弾丸での翻弄が得意で
クリウスは力押しが得意だ
【これだっ!】
二人は声をシンクロさせ立ち向かう
まずカリンスがクリウスの盾攻撃を当てさせるために
ダミーの弾をクリウスに当てぬように
場所を限らせるために打ち込む
「なんだ~外れだよ~ぷぷぷっ」
敵将はカリンス達の作戦に気が付いておらず
しかも慢心していた
「今だ!クリウス!」
「わかってるよ!シールドカノンっ!」
大きくした盾で相手を押し飛ばし
過去の歴戦の記憶で核らしきものを小さくそして厚くした盾で貫く
「なっなんだと・・・・・・僕が・・・・・・」
この勝利はクリウスの過去の戦歴によるものだ
この世界では普通にスライムのような体に核を持つ生き物はいる
もしかしてと思い戦術に取り入れ勝利する
一種の天才コンビに味方の兵は士気を高ぶらせる
一気に押し進むと
「おうっ!カリンスとクリウス!」
カトリや無陸の正面部隊に合流する
「なんか簡単だな・・・・・・」
無陸が呟くと
目の前に聖王刃らしきものを持つ
白い鎧の騎士が立っていた
「よく来たな・・・・・・さすがは英雄か」
刹那で現れた騎士は一気に間合いを詰めてきた
「ぐはっ!」
みねうちでカトリが吹き飛ぶ
「カトリっ!」
白騎士の剣が次はとカリンスに目線を向けた
その咄嗟に無陸は飛び込む
「させねえっ!」
「残念だ・・・・・・弱すぎるっ!」
飛び込んできた無陸にみねうちをかます
しかし寸前で避けた
「あぶねっ!」
「避けたか・・・・・・」
一歩下がり剣を向きなおす
「バカ・・・・・・な・・・・・・」
カトリが息絶えそうにお腹を押さえながら
驚く
「それは派生剣・・・・・聖王の補助のものにしか使えぬ剣・・・・・・」
【副刃、レイドクリエーションっ!】




