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10、幹部クラス登場に平社員は為す術もない。

首を回して、前後左右に動かす。

両手で後頭部から全体に指先で触れて痛みがないかを確かめる。

よしよし、ちゃんと魔法が効いたようだ。


「えっ、嘘ぉ、今の回復魔法?君使えるの?

お嬢さんどこの家の子ぉ?

ま、まさか父上の庶子とかじゃないよね~!」


なんの話しをしている。


「さすがにそれはないだろう。王族特有の魔法ではあるが、直系のみに現れるものでもない。

君、名をレイモンド・メーガネと言ったか...?」


「メーガネって何処の家だっけぇ~?

...レイモンド?お嬢さん、男みたいな名前してるね」


おーっとおっとぉー?

あえてのさっくりスルーしてたのに?

この、何が楽しいのかずっとニコニコ笑ってうるっさい野郎が、さっきからお嬢さんお嬢さんって言ってたのは?

まさかの、まーさーかーのーレイモンドさんことこの俺の事ですかー?



「男」


「ん?」


「男だ」


「誰が?」


「レイモンド・メーガネ、性別男。16才。


...俺!!俺のこと!!


お前の目ん玉はガラス玉で出来てんの!?

さっきから、こっちは怪我して頭いてぇんだっつーのに一方的にぎゃあぎゃあ騒ぎやがって、怪我人の前で騒ぐとかどういう神経してんだ!

怪我人病人の前では騒ぐなって教わってないなら今俺が教えてやる!さーわーぐーな!バーカ!

挙句の果てにこのナイスガイレイさんにむかって、お嬢さん!...お嬢さんっ!!

そりゃこの天使フェイスのせいでー!幼児の頃は、あら~可愛い女の子ですね~、将来美人さんですよ~って散々言われてたけど、ここ数年は聞かなかったから久々に言われてなんか...ショックデカいっ!!」


ついさっきまで痛む頭を預けていた枕に、今度は顔から突っ込む。

もう、女の子扱いされないぐらいに男らしく成長したと思ったのに。田舎じゃ男だって周知徹底されただけだったのかもしれない。

新天地でいきなりこれ。悲しい。泣きそう。実はちょっと泣いてる。


「ブフッ」


吹き出す音が聞こえたほうをギロりと睨むと、うるさい野郎の方ではなく、失礼な野郎のほう(もう面倒くさいからこの分け方でいいや、名前聞いてないし)が片手で口元を抑えていた。


よし。貴様も敵だ。いや、最初から敵だったわ。


「し、失礼ブフッ、...失礼した。レイモンド殿。私は...」


話しの途中で、入口がバーンとめっちゃ勢いよく開いた。と言うか、蹴り飛ばしてなかったか今の。

つうかまったく会話のやり取りが出来ないな王都。都会こっわ。


「王子ーーーっ!!まーた精霊暴走させて怪我人出しただとー!死人でも出たら誰がもみ消すと思ってんだゴラァァァァッ!!」


うわっ、めっちゃくちゃゲスな事叫んでまたうるさいの増えた!え、もみ消すの?俺もし死んでももみ消されてた感じ?マジかよ王都マジ闇深過ぎなんだけど!こっわー!!


...ん?

「王子?」


「ああ」


「え?誰が?」

さっきもこんなやり取りしたような気がするな。


「私だ。」

暴言吐いた失礼なほうが言う。


「俺もー」


「は?」


「だからー、俺も王子ぃー」

うるさい野郎も言う。


「怪我をしたと言うのは君か。

大事ないか?」


「はぁ。はい」


「私はこの国の宰相、アルフレッド・ラーエモン。この度はニコニール王子が失礼した。」


宰相。マジこの国の偉い人キタ。専務クラスキタ。

王子とか、代表取締役社長の息子だろ?確実に未来の幹部クラスっていうか、今でも確実に幹部だわ。

取引先の方々だったら、平社員の俺が表を上げちゃ駄目な人達だわこれ。


「すいません...、あの、王子とは...?」


ああ、まだそこからだったか。

と呟いて宰相殿は、なんとなくわかってはいたけど、わかりたくなかったなーって部分をぶった切った。


「こちらが、ヴォーゲン第二王子殿下、そして、このっ!人の話しをちっとも聞かないのがっ!ニコニール第三王子殿下。わがコンタックト王国の双子の殿下で在らせられる。」


ヴォーゲン王子は黙って頷き、ニコニール王子は宰相殿に耳を引っ張られて涙目になりながらヒラヒラとこちらに手を振ってみせた。


双子で性格真逆とかゲームキャラかよ、あ、よく見たら顔は似てた。表情違いすぎて双子だと思わなかった。とか、暴言吐いたほうがヴォーゲンで、やたら笑ってるほうがニコニールかよ。安易過ぎるだろ、とか色々あるが、今、俺がすべき事は...一つである。


「申し訳ございませんでした......」


柔らかく包み込んでくれる枕から、一転、硬く冷たい床へと頭を預けるのである。


いわゆる、土下座である。



王子だとー!な、なんだってー!(茶番)


やっと名前が出せました。

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