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刻字解合  作者: つちたぬ
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四話 禁忌

黒髭の仙人は言った。

「よいか弟子よ。ワシらの術には、絶対に用いてはならんものがあるのじゃ。

その最たるものとして、松明の分解がある。

松明は、松、日、月に分かれるが、術を用いた途端、ワシらはおろか

この国ごと燃え尽きてしまうじゃろう。

ワシの見立てでは、日、すなわち太陽は山よりもはるかに大きい。

そんなものが間近に出現すると考えると、恐ろしくて身震いするわい。

日はもちろん、月に分解できるものも危険じゃ。

例えば、肩は、戸と月に分けられるが、絶対やってはならん。

月もおそらく、太陽と同じ大きさだと考えられるのじゃ。

術で月を出現させてしまうと、国単位で押し潰されてしまうじゃろう。

それらより危険は多少危険は少ないが、

例えば岩は山と石に分解できるが、この山がくせ者でな。

広大な範囲の地形を変形させてしまうので、まずこの術も禁止じゃ。

そして最後になるが、神を召喚する禁術もある。

精神は米、青、神に分解されるが、もし神を召喚してしまうと

この世が滅茶苦茶になってしまう危険が大きい。

よって絶対禁止じゃ。

最もお主の力量じゃ、これらの術が失敗し、何も起こらん気もするが、

禁止するに越したことはないのじゃ。」


「ワシらが術を使う際は、かならず周囲への影響を考えねばならん。

周囲に多大な影響をもたらす術は絶対に使ってはならん。

長くなったが、これで今日の話は終いじゃ。

もう日も沈んだ。はよう寝ることじゃ。」


「はい、師匠。本日もありがとうございました。」

仙人のただ一人の弟子は言った。

太郎の師匠が己の寝床に入ってしまうと、

太郎は物思いに耽った。

太郎はまだ若かった。歳は二十台半ばである。

あふれる好奇心を抑えることが出来なかった。

まだ見ぬ神。もしそれが存在したら

どれだけ素晴らしい世界となるだろう?

太郎はそっと丸太小屋の外に出ると、小声で唱えた。

「崩れよ精神、そして、米、青、神となれ。」

唱えた途端、太郎はその場にくずおれた。

太郎の精神が分解されたのだ。

そしてその場には青い米が一粒と、

小指ほどの大きさの人型をした者がいた。


そのものは言った。

「ここに倒れているのは、私の体か?」

太郎の精神は、神に受け継がれたのである。

「すると、私が神となったのか。」

神となった太郎は、まず自身の新しい体を大きくしたかった。

小指ほどの大きさだった体が、すくすくと人並みの大きさまで育った。

いきなり丸太小屋の戸がバタンと開き、大声が聞こえた。

「米、青、神よ、合わさり精神となれ!」


太郎が目を開けると、険しい顔をした師匠が目の前に立っていた。

「この大馬鹿者が!あれほど禁止といったのに!」

師匠はおかんむりだった。

「ですが師匠、神の精神は私のものでした。

未熟者の私が術を用いたのは間違いでしたが、師匠が用いれば、」

「神の精神が必ずしもワシのものになるとは限らん。

それに、もしワシが神になったとしても、欲に溺れて

世界を滅ぼしてしまうかもしれんのじゃ!」


「お前は今日で破門、と言いたいところじゃが、

お前に術の才を授けた手前、好き勝手にされては困る。

ワシがお前の師匠として、監視を続けねばな。」

太郎はこの寛大な処置に感激した。

「師匠、あれだけの事をやらかしたこの私を許して下さるのですか?」

「やむを得んじゃろ。

ただ、次に禁術を犯したときは、お主の命は無いものと思え。」

「はい、師匠。」

弟子が寝床に入るのを見届けた後、仙人は呟いた。

「眠るふりをして、こっそりあやつの後をつけておいて良かったわい。」


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