表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻字解合  作者: つちたぬ
3/8

三話 弟子

仙人は、住まいとしている丸太小屋で杖をつき、椅子にもたれていた。

ウツラウツラしていると、唐突にノックの音が響いた。

「猛獣どもが跋扈する、危険な山奥までご苦労じゃのう。」

仙人はため息をつき、戸口に向かった。

「失礼します!仙人様のご自宅でしょうか?」

戸口越しに大声が響く。


仙人は戸をゆっくりと開けると、一言放つ。

「いかにも。」

戸の前には、がっしりした体格の、若い男が立っていた。

男は仙人に目を止めると、地べたに正座し、言った。

「仙人様、お初にお目にかかります。私は太郎という者でございます。

実は、仙人様に弟子入りしたく、この場までやって参りました。」


「ほほう、弟子入りとな?」

仙人は思わず口にした。

「お主、太郎と申したな。

この危険な地までわざわざそのためにやって来るとは

大した根性じゃ。

宜しい。弟子にしてやっても良いが、

ワシの術はあいにく、この広大な世界でもワシしか扱えん代物じゃ。

お主、それでもワシの弟子になりたいか?」

「もちろんです。仙人様。私を弟子としてなんなりと

こき使って下さい!」

太郎は即答した。

「ふむ、良かろう。ところでお主、何か宝は持っておらんか?」

「宝、ですか?我が家に家宝の宝玉が一つだけ有りますが。」

「それで良い。そいつと引き換えに、

お主にもワシの術を授けられるかもしれん」

「では仙人様。今から家宝を持って参りますので、

それまでお待ちいただけないでしょうか?」

「いや、ワシもお主の家まで行くとしよう。」

太郎は感激した。

「仙人様自ら出向いてくださるとは、

なんとありがたきことでしょう!」

「太郎や、大げさな反応は抜きじゃ。

それとついでに、ワシの名は漢玄じゃ。」

「はい、漢玄様!」


二人は険しい山を下っていき、太郎の家まで向かった。

一行の行く手に藁葺き屋根の家が見えた。

「漢玄様、あの家です。

今、宝を持って参りますので少々お待ち下さい。」

「うむ。」

太郎は自宅に入り、しばらくして、赤い宝玉を手にしながら出てきた。

「漢玄様、これになります。」

太郎は宝玉を仙人に渡した。

「太郎や、ワシのことは師匠、と呼び捨てにせい。

漢玄様などと何度も呼ばれたら、耳がこそばゆくてたまらんわい。」

「はい、師匠。」

仙人は宝玉をじっくりと見た。

「こいつは確かに本物じゃ。今からワシの術をお主に見せるとしよう。

それと、これはお主が持っておれ。

ワシの術はより近い物同士が作用するのでな。」

仙人は弟子に宝玉を返した。

「それではいくぞい。」

「はい、お願いします。」


「崩れよ財宝、そして貝、才、宝となれ!」

仙人は唱えた。

太郎の持つ宝玉が一瞬光り、宝玉の隣に小さな貝が出現した。

「問題はここからじゃ。お主に才が宿っているか、試してみよう。」

「太郎よ、ワシの杖で地面に線を引き、それからごにょごにょ。」

仙人は弟子に耳打ちした。

「はい師匠、やってみます!」

太郎は仙人から杖を借り、地面に線を引いた。

そして

「崩れよ線、そして糸、泉となれ!」

と唱えた。

地面に引かれた線はゆっくりと消え去り、

その地面が湿りだした。

その上にはちっぽけな糸くずが置いてあった。

「糸と泉よ、合わさり線となれ!」

仙人は唱えた。

地面は見る間に乾き、糸くずも消えた。

そして地面に短い線が自動的に引かれた。


「大成功じゃ。じゃが、

術としてはまだまだ精進が必要じゃな。」

仙人はカラカラと笑った。

「本当に私がやったなんて、まだ信じられない。」

太郎の杖を持った手が震えていた。

「ほれ、さっさとその宝を隠して、ワシの家に戻るぞ。

これからは修行の日々となろうぞ。」

「はい!」

太郎は杖を師匠に返して、宝玉を隠しにいった。

「あの、この貝はどうしましょう?」

戻ってきた太郎は一番に言った。

「ただの副産物じゃ。お主の好きにせい。」

「はぁ。ではこれも宝とさせていただきます。」

太郎は貝を隠しに再び家に入った。

「なかなか楽しいことになりそうだわい。」

長髪と髭にまみれた仙人は呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ