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今日のショートショート〜掌短編集〜  作者: 高山小石


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01.晴れー彗星

 夜、仕事を終えた人々は疲れた顔で空を見上げる。


「あっ」

「来た!」


 歓声が広がった。

 ゆっくりと、美しく長い尾を引いた彗星《すいせい》が、夜空を横切っていった。


「あぁ綺麗だった」

「これでぐっすり眠れるよ」


 皆はればれとした表情になって寝床に向かった。


 彗星を見ると気が晴れる。

 だから彗星は「晴《ハ》れ(レ)ー(ー)彗星《すいせい》」と呼ばれ、人気だった。


 晴れー彗星は週に一度は流れていた。

 流れるたびに、皆かかさず彗星を見上げた。

 何度見ても見飽きることはなく、まるで初めて見るように、彗星の美しさに感動していた。


 なにしろ彗星を見れば疲れが取れるのだ。

 それに嫌なことも忘れられる。

 なんて素敵な天体ショーだろう。


 皆、晴れー彗星をありがたく思っていた。


  *


「今日の運航、無事完了しました」

「ご苦労」


「それにしても、本当に記憶が消えるんですね。毎晩、初めて見たような顔で見上げられるなんて不思議です」


「そうだな。彗星は貴重な労働者たちの憂いを晴らす装置なんだが、構造上、憂いだけを消すことはできない。普通の記憶も消えてしまうんだ。毎日、新鮮な気持ちになれるそうだよ」


「それは……幸せなんでしょうか?」


「どうだろうね。君はどうだい?」

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