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第1話 おはよう。もう朝だよ。起きて。

 ぱん姫。空までとどく聖なる木ツリー。君の勇気が君の世界を救うんだよ。君の希望が君の愛が君の世界を救うんだよ。


 おはよう。もう朝だよ。起きて。


 王家の言い伝え


 開いた扉は必ず閉じなければいけない。扉を開いた人が、自分の手で閉じなければいけないのだ。


 空まで届く聖なる木ツリー。


「えっと、こっちでいいのかな?」

 うーんと言ったような顔をして、くるくると丸めて巻いていた不思議な大きな木の絵が描いてある古い地図を広げて見ながらぱん姫は言った。

 ぱん姫はとっても、とっても大きな大きな『空までとどく木』の幹に巻きついた植物のつるのようものの上に立ちながら、近くにある同じようなつるを持って、体のバランスをとりながら、もうあんまりよく見えない緑色の深い森の広がっている大地の上に(ぱん姫の周りは青色の空だった。白い雲と同じくらいのところにいた)落っこちないように気をつけながら、大きな木を上に上にのぼっている途中だった。

 ぱん姫がいるところは『聖なる木ツリー』と呼ばれている空までとどいている、とっても大きな古い伝説の木で、『ある目的のために』、その一番上を目指して、ぱん姫は聖なる木ツリーを一人でこっそりとお城を抜け出して、(置き手紙は残してきたけど)のぼっているのだった。

 空の高いところに吹いている澄んだ清らかで冷たい風が、ぱん姫の桃色のりぼんでまとめてポニーテールの髪にしている、長くて美しい亜麻色の髪と羽織っている桃色のマントを揺らしている。

 ぱん姫はとても美しいお姫さまとして、国の中だけではなく広い大陸でも、とても有名なお姫さまだった。

 年は十四才。

 いつも優しい顔で笑っていて、清楚で、可憐で、お淑やかで、お城の中で、華やかな花のようなお姫さまのドレスを着ているぱん姫は、本当にまるでお人形のように美して、彫刻のように綺麗だった。

 言葉使いも振る舞いも、お手本のようにしっかりとしていた。

 でも、今、不思議な大きな木の絵が描いてある古い地図とにらめっこをしているぱん姫はいつものように美しくて綺麗だったけど、雰囲気はいつもとは全然違っていた。

 着ている服も違っている。

 華やかな花のようなお姫さまのドレスを着ているわけではなくて、『冒険者の服』を着ていた。

 綺麗な足を大胆に出している、桃色の冒険者の短いスカートの服だった。

 スカートの下には白い半ズボンを履いている。

 金の髪飾りや金の腕輪をつけていて、小さな耳には真珠の耳飾りをつけて、首のところには美しい大きな涙の粒のような水色の宝石の首飾りをつけていた。手には白い長手袋をしていて、足元は白い長靴をはいていた。

「よし」

 と言って、不思議な大きな木の絵が描いてある古い地図をくるくると丸めてしまって、再び大きな大きな聖なる木ツリーをのぼりはじめたぱん姫の大きな琥珀色の瞳はじっと『上』だけを見ている。

 ぱん姫はとても軽い動きで、ひょいひょいといろんな(つかまれそうな)ところをつかみながら、先に先に、上に上に、進んでいく。

 その動きはとても見事で、いつもお城の中でじっとしているお姫さまとは思えないような動きだった。

 ぱん姫は日ごろからこっそりと体を動かす練習をしていた。(こっそりとお城を抜け出すことも、今日がはじめてではなかった)

 ぱん姫は腰のところに水や食べものの入った袋と、荷物袋をつけていて、そこには短剣もあった。とても美しい短剣で、ぱん姫が生まれたときに与えられた(ぱん姫の名前が彫られている)由緒ある王家の短剣だった。それは武器としてではなくて、冒険の便利な道具として、(あるいはお守りとして)持っているものだったけど、もちろん武器としても使うことはできた。(できれば使いたくはなかったけど)

「あ」

 ぱん姫は驚いた顔をして言った。

 手をつかみそこねてしまったのだ。

 まずい。と思ったときにはもう遅かった。ぱん姫は聖なる木ツリーの大きな幹を滑るみたいにして、大地に向かって、落ちはじめた。

 落ちる。どうしよう。

 ぱん姫はどこかにつかまれないかと、手を伸ばした。

 すると、不思議なことが起こった。そんな『ぱん姫の手を誰かの手がしっかりと捕まえてくれた』のだ。

 自分を助けてくれたその手を見て、ぱん姫はまた驚いてしまった。『だってそこにはさっきまで誰もいなかったし、それに、その手は明らかに人の手ではなかったから』だった。

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