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女スト! ~女神は七福神決定戦で本気だす~ 【地方大会編】 ※再投稿  作者: 正座回転ドリフト王子


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第5話 チャイナドレスな女神

第5話 チャイナドレスな女神


 七福神決定戦の地方大会(予選)当日。


 肥やしの香り漂う田舎町の畑が決定戦会場である。

 赤・青・白。

 色とりどりのトラクターが、殺風景な土に花を添える。


 町の人口よりもはるかに多い見物客が、客席を埋め尽くす。


 のどかな田園風景に似つかわしくない、巨大なスクリーンが(そび)え立つ。


 縦30メートル、横50メートルの画面には、出場する女神のプロフィール映像が流れている。


 自分の“推し女神”が紹介されたのだろう。

 信者らしき観客から歓喜の声が上がった。


 畑を取り囲むように、タコ焼きなどの屋台が立ちならび、お祭り気分が味わえる。


 七福神グッズを販売する屋台が複数ある。

 ひと際目立っているのが、弁財天の店だ。


 現役の弁財天みずから店頭にたち、熱心に呼び込みをかけている。


 耕司が店の前で立ち止まる。

 何を売っているのかと思えば、福神漬けだった。


 弁天抱き枕なる品も扱っているようだが、特別なグッズらしい。

 福神漬けを100キロ購入すれば、抱き枕を1万円で購入できるとのこと。

 抱き合わせ販売ということだ。抱き枕だけに。


「漬物100キロなんて、誰が買うんだよ……」


 耕司の予想に反して、福神という名の漬物は、飛ぶように売れていた。


 漬物を売る弁財天の店の隣では、カレーライスを販売している。


 なるほど。

 うまいことやるな……。


 “七福神に入ることができれば、自身のグッズ販売でウハウハです!”

 ふと、耕司は受付嬢の言葉を思い出していた。


 歩幅3センチで、ちまちまと付いてくる千代里を振り返ると、耕司は小声でつぶやく。

 千代里もいつかそうなると良いな……。


 人だかりが、耕司の視界に入ってくる。


「なんか、強そうだな……」


 賑わいをみせている会場の傍らに、千代里の対戦相手の姿があった。

 髪をだんご状に結わえた女神『小龍(シャオロン)』だ。


 中国から参戦したらしい。

 ミニスカートタイプの白いチャイナドレスの背中には、陰陽(インヤン)の刺繍が施されている。


 知名度があるのだろう。

 客席から彼女の名を呼ぶ声が飛び交っている。

 だが、彼女の耳には届いていない様子だ。


 試合開始時刻が近づくと、スクリーンに『15分前』の文字が映し出される。


 シャオロンの瞳に小さな梵字(ぼんじ)が表出すると、160センチほどの身長が1メートル前後に縮む。


 女神は戦闘モードに入ると体に変化が起こる。

 身体能力が爆発的に向上するため、防具なしでも充分に戦える。


 シャオロンに対し、千代里に変わった様子はない。

 梵字の『ぼ』すら現れていない。


 千代里は、ほぼ無表情。

 千代里が落ち着いているのか、“ハシビロコウ・モード”なのか、耕司には判別がつかない。


 神々の力をよく知らない耕司にでも理解できた。

 いまにも消えてしまいそうな、弱弱しい千代里には勝ち目がないと。


 棄権という文字が耕司の脳裏をよぎる。

 だがしかし、闘志を湛えた真っ直ぐな千代里の瞳をみると、逃げるという選択肢は耕司から消え去った。


 覚悟を決めた耕司は、屋根に千代里を乗せたトラクターでスタート位置へと向かう。

 ざわめきと喝采の混じった歓声のなかに、エンジン音が飲み込まれた。



 試合開始まで1分を切ったころ。


 スクリーンに『七福神決定戦 地方大会 弁財天部門 1回戦』の文字が映し出される。


 続けて、主催者の場内アナウンスが響いた。


「勝者には、2人乗りの宝船が贈られま~す!」


 7人乗れないのかよ! と、会場のそこかしこからヤジが飛ぶ。


 微妙な放送で、耕司は少し落ち着いた様子だ。


 カウントダウンが始まったことを確認すると、切っていたトラクターのエンジンを始動させる。


 スクリーンに『試合開始』の文字が浮かぶと同時、シャオロンが先に動く。


 すこし遅れて耕司のトラクターが走り出した。


 互いのトラクターの速度は20キロに到達。


 両者がすれ違う寸前、シャオロンの槍が千代里に迫ってくる。

 千代里は自身の槍を放り投げると、シャオロンの繰り出した槍の穂先にしがみついた。


 え? コアラ?

 相手の槍にくっついた千代里の姿を、耕司は思わず2度見する。


 千代里とシャオロンを乗せたトラクターは、そのまま走り去ってしまった__。


 いやいやいや。どうなるのこれ?

 トラクターから落ちてないからセーフだよね?


 高速で繰り出された槍の先っちょに抱きつけるなんてすごい。

 もしかして、千代里って動体視力がすごいんじゃ……。

 ってことは、千代里は駄女神じゃないよね?


 耕司は自分に言い聞かせながら、トラクターを反対側まで真っ直ぐに走らせる。

 だが、動揺は隠せなかった。

 心なしか、トラクターの軌道は少し曲がっていた……。



 どよめきと笑いが渦巻くなか、巨大スクリーンに『審議中』の赤く大きな文字が明滅する。


 前代未聞の事態に、主催者は審議を余儀なくされた。


 何が起きたのか分かっていない様子の千代里が、歩幅3センチで戻ってくる。


 千代里が失格になりませんように……。


 耕司はトラクターの中で、必死に祈るのだった__。


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