第89話 『ルガの森』
歩き出してから数十分が経過した。
竜の里に着くのはまだか。
そういえば、竜の里の近くの森って『ルガの森』だよな。
ルガの森は迷いの森とも呼ばれる森だ。
真っ直ぐ進んでも抜け出せることができないとも言われている。
同じところをグルグル回ってる感覚にも襲われるそうだ。
「おまえら、この森は迷いの森だからバラバラにならないように気をつけろよ………」
俺はみんなに注意するよう言いながら振り向くと、そこには誰もいなかった。
遅かったか………。
あいつらがどこにいるかは知らんが、多分死んでないだろう。
そう簡単に死ぬような奴等じゃないはずだ。
とりあえず速くここから抜け出さないとな。
でも、ただ真っ直ぐ進むだけじゃ多分無理だろうな。
俺は自分の目の前に闇の渦を出し、その闇を通り抜けた。
通り抜けた先は、まだ森の中だった。
「なんでだ!ワープは効かないというのか!」
ならどうすればいいというのだ。
真っ直ぐ進むのとワープは無駄だということはわかった。
なら、何度も曲がりながら進めばいいのか……?
どうしようか考えていると、いきなり木の陰から一人の女の子が出てきた。
「誰だ!」
攻撃の構えをとり、警戒する。
「ひっ!あ、あの」
……どうやら敵意は抱いていないようだな。
俺は構えるのを止め、
「おまえ、誰だ?なんでここにいる?」
「あ、あの……えっと……」
女はオドオドしながら小声で何かを言っている。
「聞こえない!もっと大きな声で言え!」
「ち、千春……です」
「え?」
俺は耳を傾けながらもう一度聞いた。
「鶴 千春です」
『ツル・チハル』か。
珍しい名前だな。
「俺はラング・ガンデイルだ」
この女、どこの国の人なんだろう。
それにこいつの恰好………巫女か。
「あんた、チハルとか言ったか。あんたはなんでこんなところにいる?」
「それは……その……」
なんだ、こいつ。
俺が怖いのか?
「言いたくないなら無理にまで聞かないよ。それより、訊きたいことがあるんだ」
「訊きたいこと……ですか?」
「あぁ、実は俺、竜の里に行きたいんだけど、道に迷ってしまってな」
その言葉を聞いた瞬間、チハルの様子が変わった。
「竜の里…ですか…!実は私もそこに行くつもりなんです!」
「あんたも俺と目的地は同じか。ならその場所なら案内できるか?」
「はい、できますよ」
「助かる。じゃあ、頼んだ」
「はい……こっちです」
俺の性格がわかっているのか、少し俺を警戒しながら進むチハル。
そのチハルに続いて、俺も歩き出した。




